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「汽水湖」 詳細解説

読み:
きすいこ
英名:
Brackish Water Lake

湖沼、内湾、内海のように、外海との水の交換が行われにくい水域を「閉鎖性水域」という。このうち、海水と淡水の中間の塩分をもつ「汽水」(きすい)をたたえる湖沼を、「汽水湖」と呼ぶ。環境省が2014年12月にまとめた「日本の汽水湖~汽水湖の水環境の現状と保全~」では、日本国内の56の汽水湖を取り上げている。その半数以上が北海道にあり、残りは日本海側と東日本の太平洋側にある。代表的な汽水湖として、サロマ湖、加茂湖、涸沼、浜名湖、宍道湖・中海などがある。

汽水湖では、海水の塩分による影響で、淡水湖よりも上下層の密度差が大きくなり、水塊が二層に分かれる「成層」が形成されやすい。塩分が低く軽い上層水と、塩分が高く重い下層水の間には水温の差もあいまって「塩分成層」ができやすく、上下層がはっきりと分かれる。河川流域の最も下流にある汽水湖には、有機物や栄養塩類などの物質が集まってくる。一方で、潮汐によって外海との物質交換も行われる。これらの特長により、生物生産性が高い半面、湖内の富栄養化が進みやすい。

汽水湖の環境は、生物にとって海とも湖沼などの淡水域ともちがう独自の生息空間であり、生物多様性の観点からも興味深い。生態系に大きな影響を与えているのが塩分で、塩分濃度とその変化に応じて生息する生物の種類が異なる。あまり広範囲を移動しない貝類や底生生物は、種類は少ないものの栄養分を多く摂取できるため生産性が高い。一方、魚や鳥など移動能力の高い生物は多くのえさをとることができ、種類も多い。このように、汽水湖の生物は生産性が高い傾向がみられる。

水質基準の達成状況をみると、湖沼だけでなく海域として類型指定されている水域も含めて、生物化学的酸素要求量(BOD)または化学的酸素要求量(COD)の達成率は低い。主な原因として、排出源が面的で特定しにくいノンポイントソースと呼ばれる汚染源からの汚濁物質の流入や、淡水湖よりも硫化水素が発生しやすいことなどがあげられる。また、底層の貧酸素化が進むと青潮が発生することがある。さらに、植物プランクトンの増加によりアオコ赤潮が発生するケースもみられる。

汽水湖の環境は、干拓や淡水化などの人為的な改変により、時代とともに大きく変化してきた。しかし、生産能力の高さにもかかわらず、近年、漁獲量が減少しつつあるなどの課題も抱えている。汽水湖の水環境を保全していくためには、塩分の変化や成層の形成、底層の貧酸素化などの特異な現象を考慮した対策が求められる。

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