今回のゲストは竹内純子さんです。竹内さんは東京電力に入社後、同社の人材公募制度に応募して尾瀬保護活動担当に就任。「東京電力自然学校」副校長を務めた後、地球温暖化国際交渉の担当を務め2011年に同社を退職。現在はNPO法人国際環境経済研究所主席研究員／一般社団法人フォレストック協会理事として活躍しています。ここからは竹内さんから、「世界の中の日本」というテーマで話題提供いただきます。
森：「竹内さんはついこの最近まで、東京電力に勤務して尾瀬の自然保護活動などに関わっていたそうですが、先ずそのあたりから自己紹介をいただけますか？」
竹内：「はい。私は現在、NPO法人国際環境経済研究所と一般社団法人フォレストック協会という組織に所属しています。一昨年末まで東京電力に勤務していました。1994年に東京電力に入社し、数年間は引っ越しの電話の受付などの電力会社の第一線現場の仕事を担当していましたが、1999年に東京電力が所有していた尾瀬の自然保護活動担当の社内公募があり、それに応募し、運良く機会をいただくことになりました。担当となってから十年強は、尾瀬の山の中を歩いて自然保護活動に取り組む日々でしたが、折角エネルギーの会社に就職したので、エネルギーと環境をダイレクトに考えたいと希望したところ、エネルギー政策における地球温暖化問題について、特に国連の気候変動枠組み条約の国際交渉や世界各国企業と連携しての環境対策を担当させてもらえるようになったんです。それから2年ほどたった後に3.11（東日本大震災）が起こり、社内の事情も変わる中で、私自身は環境とエネルギーを一生の仕事にしていきたいと考えていたこともあり、退職をして今の仕事に至っています」
森：「今も日本の森を守る仕事に、力を入れているのですよね？」
竹内：「環境を考える上で一番大事なことは、現場に行くこと、そしてそれを具体的な取り組みにつなげることだと思うんです。具体的な行動が一番大事だとみんな言っているにも関わらず、頭でっかちになってしまい、具体的な取り組みが進まないということもよくありますが、自分の足で歩き、とにかく手応えのあることをしていたい、と思い、日本の森林を守り地域再生につながる仕組みを提供する一般社団法人フォレストック協会の活動に関わっています」
森：「これはCO2（削減）のことでもあるのですよね？」
竹内：「日本は国土の約7割が森林ですが、そのうち人工林、つまり人が植林をした森は、人がメンテナンスしてあげないと森林としての機能が維持出来ないんですね。間伐などを行なって、手をかけ続ける必要があります。人工林の手入れを促進すれば、森の機能が豊かになって、生物多様性が豊かになりますし、吸収するCO2の量も増えます。そのCO2吸収量をクレジットとして企業に買っていただくことで、森林の整備費用を支援するという取り組みです」
森：「具体的なアクションですね。もうひとつの、研究所でのお仕事とは？」
竹内：「はい。3.11以降、人間は目の前にある危機しか見えないものだなということを感じることが多くなりました。エネルギーに対して言うと、バランスをとってみんなで考えていこうというより、尖った情報ばかりが世に出まわっているような気がするんですね。ですから、国際環境経済研究所では、主席研究員として、実態に即した、客観的でバランスの取れた情報提供を心がけて仕事に取り組んでいます。例えば、ドイツの電力事業は、日本では理想郷のように言われているけれど本当はどうなのかな、とか。一貫したテーマとしては、実際の現場に立って、エコロジーと経済の循環をつくる、そしてエコロジーとエネルギーのバランスをどう保つかということを大切に取り組んでいます」
森：「今回のテーマである、『エコ×エネ』『世界の中の日本』については？」
竹内：「エコ×エネの主旨は、エコロジーとエネルギーのバランスの取れた社会を目指すことですよね。自分自身がずっとエコロジーやエネルギーの問題に関わってきて、これほど難しい問題はないと思うんです。どれも、トレードオフの関係にあること、つまり、どうやってバランスをとっていくかということなんですよね」
森：「どこかで折り合いをつけて、いいバランスを取る必要があるのですね」
