竹内:「本当にエコとエネの両立に成功した理想郷なのだろうか、それを検証してみたいと思います」
森:「ドイツというと『再生可能エネルギー』とか『脱原発宣言』というイメージがありますね」
竹内:「確かに再生可能エネルギーの導入という意味では非常に進んでいると思います。太陽光は世界一ですし、風力も大量に導入しています。ただ、それで全て上手くいっているかというと、ちょっと誤解があるいうのが私の考え方です」
設備容量と発電量ということを、皆さんに知っていただきたいんです。太陽光や風力は自然任せですので稼働率が低いのです。日本での太陽光発電平均か同率は12%、ドイツでは10%くらいと言われています。設備がフルに働くときの能力を表したのが設備容量ですが、すごい補助金を投入した太陽光が実際に産みだした電力は全体の3%程度で、実際は火力がメインとなっています。また、再生可能エネルギーはいつどれくらいできるかわからず、発電しすぎて使い切れなない場合にはバランスがくずれて大停電になってしまう恐れもあり、非常に扱いにくいんです。ドイツ国内で送電線の整備が整っていないため、送電線でつながっている他国に計画外に流れ込み、ポーランドやチェコなどの隣国が自国の火力発電所の出力を緊急で調整しなければならなくなる、などの問題も起こっています。
ドイツの今後の発電計画でも火力がメインになっています。ドイツは、品質はあまりよくないですが、国内で石炭が採れるんです。ですから、再生可能エネルギーも活用しながら、火力で安定供給を図る計画を立てています。
再生可能エネルギーで生産された電力を高い値段で電力会社に買い取らせ、高い部分は消費者が負担するというのが『全量固定価格買取制度』です。この制度により、再生可能エネルギーの導入量は急増しましたが、国民の負担が非常に大きくなり、問題とされています。メルケル首相も、昨年9月に「エネルギー革命のコストを過小評価していた」と発言し、国民からの不満が高まっていることを認識し法律を見直すという方向に動き始めています。この制度はドイツでは2000年に導入されていますが、10年以上経ってかなり問題点が明らかになってきているんですが、日本は同じ制度を昨年7月に導入しました。よく『世界から学ぼう』といいますが、『世界のマネをしよう』になってしまっているのではないかと私は思います」
森:「意外にもドイツはダメダメなイメージですね。ポジティブなところはないですか?」
竹内:「他国の人間が成功か失敗かを評価するのはおこがましいことで、ドイツ人が満足していればいいのだろうと思います。ドイツ人は環境意識がとても高いと言われていて、今でも再生可能エネルギーを増やすことにも意識が高いです。ただ、これ以上負担が増えてもいいかと聞くと、それは困るという訳です。ですから、彼らがこれからどういうバランスを選んでいくのかはとても興味深いですね」