竹内:「どの電力会社も、エネルギーの3E(Economy:経済性、Energy Security : 安定供給・安全保障、Ecology:環境)を目指すといいますが、全てを得ようとするのは無理で、要はどうやって良いバランスを目指すか、ではないですか。しかもどんな状態が「良いバランス」なのかは時代により、国により違いますし、どんな社会になって行きたいのか、5年後10年後、数十年後を見ながら、社会全体で決めて行かなければならない。難しい問題だからこそ『エコ×エネ・カフェ』のような場所で、みんなで話すことが大切なんだなと思ったわけです。
自分自身の経験で言うと、十数年尾瀬の自然保護を担当していて、環境というテーマについてはいろいろ勉強していたつもりでしたが、初めて温暖化問題の国際交渉の場に参加した時に、すごい衝撃を受けたんです。自分の考えていた日本のエコロジーとエネルギーのバランスというのは、世界の状況と比較するといかに恵まれたことだったのだろうと思いました。もっと世界をみなきゃ、もっと経済のことも考えなきゃ、と。持続可能性と言う言葉の重みをずっしりと感じました」
森:「国連の会議は、世界の多くの国の人たちが参加する場所ですものね」
竹内:「電力会社は排出するCO2が多いので、国連で削減の枠組みができると、それが各国の政策に降りてきて、それが自分たちの事業やお客様に提供するサービスにも影響を与えますから、国際交渉の動向をいち早く把握する必要があります。それから、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)という、200社くらいが所属する世界的な団体がありまして、知見の交換なども行なわれるので、そういう場所にも参加していました」
森:「国際舞台で環境を考えるうえで重要な視点は何だとお考えですか? 」
竹内:「私は、人口の増加だと思っています。世界人口が70億に達成して、2100年には160億まで増えるかもしれないとも言われています。資源の奪い合いを防ぐには、どういうライフスタイル、社会になって行く必要があるのか。限りある地球という星の中で、がこの数の人間が共存しつづけるには・・・という観点が必要だと思います」
森:「日本だけをみると人口減少に入っていますが、世界で見ると増加ということなんですね」
竹内:「インドも中国も、とにかくたくさん人がいますよね。自国の人口を把握しきれているかどうかすら怪しい発展途上国はたくさんあります。これから人口が急増する見込みの中、例えばアメリカ人のライフスタイルを皆がまねたら地球が何個必要なのか、という面白い試算もされています。そして、これまで起こってきた戦争は、資源の奪い合いが原因にあるということは踏まえなければならないですよね。第二次世界大戦も、『石油に始まり石油に終わった』と天皇陛下が言ったという有名なエピソードがあります。資源の奪い合いは人類にとって非常に多くの不幸をもたらすと。これから人口が増える世界において、資源の奪い合いを防ぐには、どんな環境と経済、エコとエネのバランスが望ましいんだろう、私たちはどうしたらバランスがとれた心地よい社会だと感じることが出来るんだろう、というのが今日のテーマです」