サイト内
ウェブ

第12回 「世界の中の日本~私たちのエコとエネの未来~」竹内 純子 氏

  • 2013年2月28日
  • 緑のgoo編集部
J-POWER エコ×エネ・カフェ
ブータン
第12回エコ×エネ・カフェ
第12回エコ×エネ・カフェ

森:「GDPと電気の使用量と。みんなが経済成長を求める中で、敢えて経済成長はいらない、それよりもGNH(国民総幸福)だと提唱した国がブータンですね」

竹内:「ブータンには4年前に訪れました。この仕事をしていると、『経済成長と幸せ』を考えざるをえない場面がよくあります。いろいろな人たちがGDPよりGNHの時代、ブータンに習えと言っているので、実際はどうなのだろうと思って行ってきました。ブータンの風景は、日本人の心に何か懐かしさのようなものを感じさせるところがあるのではないかと思います。「人工物が美しくない」ということから、世界で唯一、首都に信号がない国なんです。国王の命令で決まったそうなのですが、国としてそういう美意識を共有しているのでしょうね。旅行として訪れた印象としては、非常に良い国だなと思いました。ただ、それをもって幸せな国と言っていいのかというと疑問を感じます。平均寿命は66歳で、わずかですが北朝鮮よりも短く、人口の80%は農業従事者で職業選択の自由がほとんどないのだそうです。そういう状況なので、ガイドという高収入を得られる仕事の求人には、何百人という応募があるのだとガイドさんから聞きました。テレビも携帯も最近は解禁されましたが、その影響もあるのか、最近は離婚が増えているとも言っていました。よくブータンは『世界で一番幸福な国』と言われていますが、理想郷のイメージがついたのは2005年の国民調査の結果、97%の人が『私は幸福だ』と答えたからだと言われています。これが、2010年に一気に下がり41%になりました。「経済発展の影響で、幸福度が下がった」と衝撃的に取り上げられたのですが、実は調査方法の変更が大きく関係していたようです。2005年は、全国民調査であるかわりに「とても幸せ」「幸せ」「不幸せ」の3択だったのを、2010年には国民の1/100程度の人数に9分野33項目について丁寧に聞き取り調査をした結果なんですね。

世界で唯一、首都に信号がない国
世界で唯一、首都に信号がない国
一人あたりGDPは日本の20分の1
一人あたりGDPは日本の20分の1

2005年と2010年ではGNHの調査方法に大きな違い
2005年と2010年ではGNHの調査方法に大きな違い

森:「なるほど。そうだったんですね。竹内さんのように、実際に訪れて肌で感じることは大事だと思います。皆さん、概ね幸せそうでしたか?」

竹内:「旅行で訪れただけでは国民の幸福度なんてわかりませんが、良い笑顔にはたくさん出会いました。でも、他と比較する情報をあまり持っていないが故の幸福というのもあるかもしれませんので、本当にわかりませんよね」

森:「アルゼンチンは?」

竹内:「お気楽そう・・・かな(笑)」

森:「ではここから、藤木さんにも入っていただきましょう」

森:「GDPと幸福度の関連調査によると、日本の1人あたりGDPは高いですが、幸福度でみると少し下がっていますね。アルゼンチンの方ちょっと上で。ベトナムもGDPは低いけれど、幸福度は高く出ています」

藤木:「ロシアが案外低いですね。ドイツも日本と比べて幸福度はあまり高くなく、インドネシアは、以前テロなどもあって必ずしも安全でないイメージがありますが、幸福度は高くでています」

GDPと幸福度の関係調査
GDPと幸福度の関係調査
グラフを指し示し解説する竹内さん
グラフを指し示し解説する竹内さん

竹内:「この調査が万全であるとは決して思いませんが、考えるヒントとしてみてみたいですね。このグラフから傾向を読み解くと、確かにGDPと幸福度はゆるやかな相関関係にあると言えそうです。GDPの高いところに、あまり不幸はないというような読み方もできますよね。GDPをあげることで、不幸は減らすことができるんじゃないかなという気がします」

森:「世界は今、転換期で、あるべき姿を模索しているのかなと思いますが、それは単純なことじゃないな、という印象を僕は持っています」

竹内:「第二次世界大戦後、日本は飛躍的な経済復興・再生を遂げましたが、日本人の満足度がそれにも関わらず上がっていないと指摘されたそうです。それがこういった調査のきっかけになっているというのは、面白いなと思いました」

藤木:「以前エコ×エネ・カフェで江戸時代の話しをしていただいて(第4回:「江戸時代のエネルギー事情」)。それによると、江戸ではエネルギー消費はゼロカロリーに近くて、人力とか、牛や馬とかを活用していたそうです。今はその時代のエネルギー消費の10万倍とも言われているそうですが、『資源は限られている』という前提に立つと、このままずっとエネルギー消費の上に成り立つ経済や幸せを追求していけば良いかなあと言うと、それを考え直さなくてはならない、曲がり角にきているのかなという気持ちです」

森:「エネルギー消費量と豊かさの相関関係が崩れているかもしれないという発言もありましたね。それにしてもブータンでは1976年にGNHを提唱したのですね。日本や世界各国は高度経済成長を目指していた時期ですから、それを考えると、画期的ですね・・・」

竹内さん、森さん、藤木さんの3人による解説
竹内さん、森さん、藤木さんの3人による解説
第4回エコ×エネ・カフェで江戸時代の話しをしていただいた石川さん
第4回エコ×エネ・カフェで江戸時代の話しをしていただいた石川さん

さて、竹内さんからの話題提供を受けて、これからはワールドカフェによる対話の時間です。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

記事の無断転用は禁止です。必ず該当記事のURLをクリックできる状態でリンク掲載ください。