
夏の家庭菜園の花形野菜、トウモロコシ。甘いスイートコーン以外にも、ポップコーンがつくれる品種もあります。ベテラン菜園家たちの栽培の工夫や楽しみ方を教えてもらいましょう!
熱を加えると弾ける爆裂種のトウモロコシ
ポップコーンは甘くてジューシーなスイートコーンとは異なる「爆裂種」という種類のトウモロコシです。
その名の通り、加熱するとポンポンと大きな音を立てながら破裂します。一般的なポップコーンは蝶が羽を広げたような形に破裂し、バタフライ型といわれ、丸く膨んで弾けるものはマッシュルーム型といわれます。
栽培方法はスイートコーンと大差ないのですが、ポップコーンは病気にも強く、甘くないので鳥や獣にも人気がなく、むしろ育てやすいです。
ひとつ気をつけなくてはいけないのはキセニア現象。スイートコーンとポップコーンの開花時期が重なり、交雑するとスイートコーンの粒がかたくなり、色が混ざり、甘味や食味が落ちる現象が起こります。
それを避けるために距離を離すか、時期をずらして育てる必要があります。
・獣害がほとんどなく、育てやすい
・完熟し、枯れてから収穫する
・スイートコーンとは距離と時期を離して育てる
毛呂さん栽培のポップコーン「まるポップ」(上)と小笹さん栽培の「グラスジェムコーン」(下)。グラスジェムコーンは正確にいえばフリントコーンといわれる皮が石のようにかたい品種で、トルティーヤの粉に加工される。
※詳細は後述参照。
教えてくれるベテラン菜園家さんとおすすめ品種
毛呂陽子さん
もろようこ●菜園歴27年。滋賀県蒲生郡にある約300m2の畑で有機・無農薬の野菜づくりを楽しんでいる。育苗箱を利用して土を盛り上げた高畝「上げ床畝」を考案し、野菜を栽培中。2年続けて「まるポップ」を栽培。
小笹順子さん
こささじゅんこ●菜園歴29年。茨城県水戸市にある約500m2の畑で年間50種以上の野菜を有機・無農薬で育てている。7年前に10粒もらい受けた「グラスジェムコーン」の栽培を毎年続けている。
「ポップコーン まるポップ」
丸く弾けて食べごたえバツグン!(毛呂さん)
ポップコーンは孫たちが小さい頃から育てています。夏休みに実をはずすのを手伝ってもらい、ポンポン弾ける音に大よろこびしながら、一緒にポップコーンづくりをしたのも楽しい思い出です。
ここ2年は、「まるポップ」(サカタのタネ)という丸い形に弾ける品種のポップコーンを育てています。大粒で食べごたえもあり、気に入っています。

(毛呂さん)
「丸く弾けて味が絡みやすいので、キャラメル風味など、フレーバーポップコーンを楽しむのもおすすめ。」
「フリントコーン グラスジェムコーン」
まるでカラフルな宝石飾ってもすてき!(小笹さん)
2017年にもらった10粒のタネをきっかけに、栽培を続け、タネをつないできました。「虹色トウモロコシ」ともいわれるように、1本のトウモロコシの中にピンク、緑、紫、黄、青、赤などさまざまな色が混在していて、カラフルできれいです。
観賞用としても人気がありますが、じつはポップコーンにしてもおいしいです。
やや小粒ですが、香ばしくてサクサク食感なので孫たちも大好きです。

(小笹さん)
育て方のポイント
スイートコーンとは時期をずらして育てる
スイートコーンとポップコーンを両方育てたい場合は、交雑させないために、200m以上距離を離して育てる必要があります。
広大な畑でないとなかなか難しいので、栽培時期をずらし、受粉の時期が重ならないようにする方が確実です。
早まきして保温しながら育てる毛呂さんと、スイートコーンが終わる頃を見計らい遅まきする小笹さんの育て方を紹介します。
栽培の目安
■タネまき:3月中旬

■まき方:幅90cmの畝に条間35cmで2条、株間22cmで1か所3粒点まき
育て方(毛呂さん)
【タネを早まきして保温して育てる(毛呂さん)】
01 土づくり
3月の彼岸前後に早まきするため、2月中旬までに畝の準備をします。日当たりのいい畝に元肥を入れて、黒マルチで覆って地温を温めておきます。元肥はスイートコーンと同じで、1m2あたり、完熟牛ふん堆肥2kg、米ぬか140g、草木灰60g、有機石灰100g入れています。さらに保温と保湿のため、畝にビニールトンネルを掛けておきます。
02 タネまき
早まきをする場合は3月中旬にタネまきをします。幅90cmの畝に条間35cm、株間22cmで2条、1か所に3粒ずつまきます。
少し葉が触れ合うくらいの狭い間隔でもよく育つので、株間を私が手を広げた幅(約22cm)にしています。
タネまき後、タネを埋めた場所のすぐ上、地上5cmくらいの高さに鳥よけの糸を1本張っておきます。

ひとつの穴に3粒ずつ、タネの尖ったところを下に向けて土に押し込み、覆土、鎮圧する。
03 メンテナンス
発芽して、本葉3~4cmに生長したら、間引いて1本立ちにします。
4月下旬になり、本葉5~6枚、草丈40cmに生長したら、追肥と土寄せを行うため、黒マルチとビニールトンネルをはずします。追肥は1株ずつ株の周りに1握りのボカシ肥料をまいて、株元に土寄せします。保湿と保温を兼ねてもみ殻を畝に敷くと草も生えにくくなります。
スイートコーンよりも茎が細く、草丈は高くなるので、5月に入り、大きく生長してきたら、倒伏防止のヒモを張ります。
雄穂が開き、雌穂がついたら、ホウキの柄で茎を揺らして人工授粉させます。早まきのおかげかアワノメイガなどの害虫被害はあまり心配いりません。
【+α】
ビニールトンネル内で葉焼けに注意
保温のために掛けていたビニールトンネルが穴あきでなかったため、トンネル内が高温になりすぎて、せっかく発芽したのに葉が黄色く変色。葉焼けを起こしてしまったようだ。日中、高温が続くようなときは、トンネルの出入り口を開けて、風通しをよくしておこう。

換気など、温度管理に気を配ったところ、葉焼けした株からもすぐに新たな葉が出て復活した。
04 収穫
摘果せずに育てるので1株から2果採れます。スイートコーンとは違い、葉や皮などが茶色く枯れてくるまで畑に置いておきます。
8月上旬、完熟してカチカチに乾燥した実から順次収穫していき、収穫後も風通しのいい場所でさらに乾燥させます。
参考

葉焼けから1週間ですっかり復活。

4月上旬、本葉3~4枚に生長したら丈夫そうな株を1本残し、ほかは地際をハサミで切って間引く。

4月下旬、本葉5~6枚に生長した頃、黒マルチをはずす。

黒マルチをはずしたら追肥と土寄せをし、もみ殻マルチをする。

倒伏防止のため、畝の周りをヒモで囲み、鳥獣害はあまりないが、念のため実がついたらネットを張る。

まるポップの雌穂は赤い色。

8月上旬、葉や茎も枯れた完熟のコーンを収穫。
育て方(小笹さん)
【遅まきしてスイートコーンと受粉時期をずらす(小笹さん)】
01 土づくり
タマネギの収穫が終わった畝を元肥なしでそのまま使います。生長を見ながら必要に応じて追肥します。
02 タネまき
交雑の心配がない畑では普通のトウモロコシと同じ時期に育てられます。スイートコーンと時期をずらして遅まきする場合は、6月下旬~7月下旬にまきます。スイートコーンと同じ畝で育てていますが、8月下旬のスイートコーンの収穫より1か月前にグラスジェムコーンをまけば受粉時期が重なりません。
幅50cmの畝に条間30cm、株間30cmで2条、1か所に2粒ずつまきます。株間15cmで1粒まきを試しましたが、茎が細く、イマイチでした。
03 メンテナンス
発芽後、間引きはしません。草丈30~40cmくらいのときに、株元にボカシ肥料をパラパラまき、土寄せします。
実がスイートコーンに比べてかたく、甘くないので鳥獣害はありません。秋なのでアワノメイガなどの虫害もあまり気になりませんでした。
草丈2m近くになるので、台風シーズンのとき強風で倒れないようにヒモで囲むなど対策しますが、それ以外はほぼ放任で育ちます。
04 収穫
ヒゲがカリカリに枯れて実がカチカチになるまで樹で完熟させたものを11月に入ってから収穫します。大きさにバラツキはありますが、1本から2果ずつ採れます。

9月中旬には草丈2m近くに生長。受粉は風まかせ。

11月に入ったらカチカチに乾いたものから順に収穫する。一つひとつ違う色の組み合わせが美しい。本格的な霜が降りる12月までに採る。
飾る&味わうための準備
しっかり乾燥させるときれいに弾ける!
完熟してカチカチにかたくなり、皮や茎が枯れた状態になってから収穫したコーンを、さらに乾燥させます。乾燥が不十分だと、ポップコーンをつくったときにきれいに弾けないからです。ザルに入れて、直射日光を避けて、軒下などの風通しがよく、雨が当たらない場所でしっかり乾かします。
宝石のように色とりどりで美しいグラスジェムコーンは、部屋に飾りながら乾燥させるのもいいでしょう。収穫する際に茎を長めに切っておけば、ドライフラワーのように吊るしたり、花束のように束ねたりできて、便利です。
飾りながらしっかり乾燥させたものは、翌年のタネにすることも、ポップコーンにして食べることもできます。
ポップコーン定番の味の塩やバター風味以外にも、映画館やテーマパークにあるようなキャラメル風味のポップコーンも簡単につくれます。味付けのアレンジを試して、楽しんでみましょう。
●収穫後、軒下などの涼しい場所でさらに乾かす。

●乾燥不足の状態でポップコーンをつくると、うまく弾けず、きれいに膨らまない。

●飾りに使うグラスジェムコーンは茎を長めに切って収穫するといい。

●赤トウガラシの枝やワタ、黒紫米などと束ねてスワッグをつくって友人にプレゼントする。
基本のポップコーンの作り方
01 芯から実をはずす
かたくて大変な作業だが、まず1~2列取ったあとで1列ずつ、親指を使って数粒まとめて横に倒すようにはずしていく。
02 フライパンに入れて油を回しかける
1人前の目安は25g。フライパンに実を入れて、油を大さじ1、回しかける。サラダ油でもオリーブ油でもいい。
03 フタをしてゆすりながら中火で加熱する
フタをして中火で加熱する。ポンポン弾け始めたら、フライパンを前後にゆする。
04 ポンポン音がしなくなったらできあがり
ポンポン弾ける音がしなくなったら、ポップコーンの完成。弾けなかった実はかたいので食べられない。
味付けを変えて楽しむポップコーンの作り方
(編集部でつくってみた!)基本のポップコーンに好みの調味料や香辛料、ソースなどを加えると、味のアレンジが楽しめます。味がなじみやすいよう、熱いうちに絡めます。おやつにおつまみに、いろんなアレンジを試してみましょう。

◆香ばしさがたまらない!バター&醤油風味
バター20gと醤油大さじ1/2を熱したフライパンでとかし、ポップコーン25gを入れて焦がさないように手早く絡める。
◆スパイシーなカレー風味
紙袋やビニール袋に入れたポップコーン25gに、カレー粉小さじ1、塩小さじ1/2を入れて、袋の口を閉じてシャカシャカ振ってまんべんなくまぶす。
◆黒コショウがピリリ!チーズ&ペッパー風味
オリーブオイル大さじ1/2を絡めたポップコーン25gに粉チーズ大さじ1、ブラックペッパーを適量と塩ひとつまみをまぶす。乾燥バジルを加えてもいい。
◆カリっと甘い!キャラメル風味
フライパンに砂糖40gを入れ、大さじ1/2の水を加えて中火にかけてカラメルをつくる。砂糖がとけて焦げ色がついてきたら(1)、ポップコーン25gを加えてカラメルを絡ませる。火から降ろし、オーブンシートを敷いたトレイの上に広げて冷ましたら完成(2)。
(1)茶色い三温糖やきび砂糖でつくるとカラメルの焦げ色が見えにくいので、白い砂糖やグラニュー糖を使うといい。

(2)冷えたらカラメルコーティングがカリっとした食感になっておいしい。

グラスジェムコーンのポップコーンは小粒でサクサク!
グラスジェムコーンで同じようにポップコーンをつくってみると食感の違いに驚いた。小粒だけどサクサクで香ばしい。
「うまく弾けなかった粒も食べられます。孫たちが取り合うくらいおいしいです」と小笹さん。
油を多めに使い、弾けてきたらふたを閉める前にバターをひとかけ入れるのが小笹流。
芯からはずした色とりどりのグラスジェムコーンは翌年のタネとしても使える。ポップコーンにすると色が白くなる。
家庭菜園についてもっと知りたい方におすすめ!
「野菜だより2023年3月春号」では、今回紹介した以外にもたくさんの家庭菜園の情報を、わかりやすく丁寧に紹介しております。