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第9回 「エネルギーと民意」柳下 正治 氏

  • 2012年3月15日
  • 緑のgoo編集部
J-POWER エコ×エネ・カフェ
ゲストトーク:「エネルギーと民意」
ゲストの柳下さんによる話題提供
ゲストの柳下さんによる話題提供

今回のゲストは上智大学大学院地球環境学研究科教授の柳下正治さんです。柳下さんは環境政策を専門に、循環型社会、持続可能な交通、気候変動問題などといった、参加型環境政策の形成に関するさまざまな研究に携わっています。今回は柳下さんから、エネルギー政策に私たちの意見を反映する方法について話題提供いただきます。

民意とは何か?

今回のテーマは「エネルギーと民意」です。辞書によると「民意」とは人民の意思、そして一般大衆の意思や人民の意志と定義されています。国民一般の意見とも言い換えられるかと思いますが、この民意が意味することについても、今後の対話を通じて考えていけたらと思います。

ちょっと固い話と思われるかもしれませんが・・」と説明をするゲストの柳下さん
ちょっと固い話と思われるかもしれませんが・・」と説明をするゲストの柳下さん
民意とはなにか?
民意とはなにか?

まず最初に、一次エネルギー供給の状況について目を向けてみましょう。エネルギーの供給量は経済状況に応じて変化しています。高度成長期に大幅に伸び、オイルショックを経て少し停滞。バブル期にまた急増し、リーマンショック以降は再び減少傾向にあります。その構成は現在も80%以上が化石エネルギーに依存していて、一方発電量だけに注目すれば、原子力は2009年の時点で電力発電の29%ほどを頼っているのが実状です。

一次エネルギー供給における構成比
一次エネルギー供給における構成比
一次エネルギー供給とエネルギー別発電電力量比較(2009年)
一次エネルギー供給とエネルギー別発電電力量比較(2009年)

「3.11」を経て変化したエネルギーの供給事情
柳下さんの説明が続く
柳下さんの説明が続く

ところが3.11の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故により、エネルギー政策は根本からの見直しを余儀なくされました。政府は、2011年6月に内閣官房国家戦略室にエネルギー・環境会議を設置しました。この会議では各省庁が連携して政策づくりを進めています。今年の春にはエネルギー・環境戦略の選択肢を示し、国民的議論を経て、夏に政府決定を予定しています。エネルギー・環境会議の議論の様子は傍聴できますし、資料もインターネット上に公開されています。つまり、誰でもこの議論の様子を知ることができる環境が整っています。具体的な論点としては、原子力発電の依存度低減の具体的な姿はどうあるべきか、当面の電力の安定供給をどうするか、他にもエネルギー安全保障、地球温暖化対策などが挙げられます。春に出された選択肢を、国民が理解し、そこに意思を示さなくてはならならないわけです。

「3.11」で状況は一変した
「3.11」で状況は一変した
重要論点に関する資料
重要論点に関する資料

どのように意見を届けるのか

これまでの日本社会では、いわゆる民意の形成というと、一般の国民というよりも「ステークホルダー」と呼ばれる、特定の意思を持った人々の集団が中心となり、独自のチャネルを使って政治や行政にロビー活動を行うようなことが主流だったと思います。けれども、そういった集団に属さない一般の国民の意見は、どのようにして伝えられるのでしょうか。日本は間接民主制なので、選挙を通じて意思表明をしていると言うことも出来るかもしれません。パブリックコメント(パブコメ)に意見を出すということも出来ます。

国の政策決定と社会との関わり
国の政策決定と社会との関わり

過去の事例では、2009年の春に、地球温暖化問題について日本としてどのような政策を持つべきなのか、民意が問われたことがありました。自民党時代の麻生政権の2020年中期目標決定の時です。CO2削減の目標値について6つの選択肢を示して、世論調査、パブリックコメント、タウンミーティングといった異なる方法で調査を行ったところ、手法によって全く異なる結果が出ました。麻生首相は一体どの結果を国民の意思とみなして政治決定したのでしょうか。このように、意見聴取の手法による結果の違いの意味についても、カフェを通して是非皆さんに議論して欲しいと思います。

事例:麻生政権中期目標決定過程の概略
事例:麻生政権中期目標決定過程の概略
この結果から「民意」はどこにあるといえるだろうか
この結果から「民意」はどこにあるといえるだろうか

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