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第9回 「エネルギーと民意」柳下 正治 氏

  • 2012年3月15日
  • 緑のgoo編集部
J-POWER エコ×エネ・カフェ

いくつかの選択肢を組み合わせたハイブリッド型がいいという意見もありました。

「国民投票と熟議のハイブリッドがいいと思います。国民投票を行なうということをPRして、一般の人たちの関心を高め、その上でそのテーマについて勉強するための場所を提供する。そして、みんなに理解を深めてもらった上で国民投票に参加してもらう。そのしくみがあれば、国民全体の意識や理解も高まるし、国民投票の結果も意義のあるものになると思います」

十数分間の対話の後、今度はメンバーを変えて同じテーマについて話し合います。最初のテーブルには一人だけが残り、新しいメンバーにこれまで話し合ったことを共有した上でさらに対話を深めてゆきます。

学生だけのテーブルや社会人の多いテーブルなど、それぞれのテーブルのメンバー構成によっても交わされる意見に多様性があるようです。第二ラウンドでは、以下のような対話が展開されていました。

模造紙はたくさんの意見で埋め尽くされていきます
模造紙はたくさんの意見で埋め尽くされていきます
模造紙はたくさんの意見で埋め尽くされていきます

熟議の意義を認めつつ、果たして日本に根付くだろうかという指摘もありました。

「熟議のような進め方は素晴らしいけれど、日本人は議論に慣れていないのでいきなりそのような制度を持ち込んでも難しいと思う」

「発言することにも慣れていないし、それを上手にファシリテートできる人も少ないかもしれない」

「慣れていないからこそ、熟議のようなことが体験できる場所を創ることが大切だと思います。政策に意見を伝える時だけではなく、日常的に、よく考えて話し合うような訓練をしていく必要があるのではないでしょうか」

現在の間接民主主義をよりよく活用することも必要だという意見もありました。

「国民投票や熟議のような場を開催することは大切だと思うけれど、実施するには予算もかかるし、現実的にはそう簡単に実施できることではないと思います。だとしたら、自分が選んだ政治家がしっかり自分たちの意見を政策に反映させてくれているかどうか、そこにしっかり注目し、働きかけるべきではないでしょうか」

「普段政治に関心がないと言われている人が多いのに、突然意識を高めてもらうのは難しいと思います。最初は好奇心のようなものでもいいから、(政治や政策について)とにかく関心を向けてもらうことが大切だと思います」

「関心のない人たちが、率直にわからないことをわからないと言える場所も必要なので、ランダムに(無作為抽出で)選ばれた人たちだけが集まって討論するような機会を設けることは、今の政治のしくみを補完する上でも重要だと思います」

民意を集めたあとの、政策の実施における課題を指摘する声もありました。

「縦割り行政が原因で機能していない政策も多いのが実態です。そういうことをわきまえた上で議論しないと、いい提案が出ても運用面が伴わないことになりかねません。国民の意見を政策に反映させるためには制度の改革も必要になるし、簡単なことではないと思います」

一方で、制度改革そのものが民度を上げることにつながるので、国民投票などの制度を積極的に導入するべきという意見もありました。
(「民度」:ここでは、市民社会の成熟度や民主主義における主権者としての自覚の度合いを表す言葉として用いられています)

「裁判員制度が導入された時にも、似たような議論がありました。市民参加という言葉にはいろいろな難しさもあると思うけれど、実施してみることが結果として国民の意識を高めることにつながることも多いと思います。エネルギー政策についても、国民の意思を反映すると言いきって、無作為抽出で参加者を決めて熟議するという方法が有効だと思います」

多くのテーブルから、民意を伝えるための制度を選ぶポイントとして、「現実性」「参加者のモチベーション」「運用プロセスの信頼性」「民度を高める必要性」などといったキーワードがあげられました。

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