国民の意思を伝えるための方法の一つとして「熟議」という手法が注目されています。単なる多数決でものごとを決めるのではなく、先ずその問題について立場の違う人たちが集まり、誠実な対話を行なうことを通じて、異なる立場の人たちの間に合理的な一致点を探ろうという方法です。これは、1990年代から欧米で提案されてきた手法で、間接民主制を補強・補完する方法として注目されています。こうした背景には、個々の問題について議会では十分な政策議論が尽くされないという問題やパブコメやタウンミーティングなどの手法で本当に国民の声が届くのかという批判の高まりがありました。最近では、このような熟議型の会議手法は、日本でも全国各地で社会実験などが行われています。
「熟議」を実現する手法のひとつに討議型世論調査という方法があります。これは、単純な質問に答える世論調査ではなく、問題に対してじっくり考えたり、意見の異なる人たちと討議を経た後の意見を聞くものです。無作為抽出で選ばれた参加者には討議の約一ヶ月前に情報冊子が提供され、議論を深めるための勉強を行ないます。それを受けて、丸1日をかけて討議イベントが開催されるわけですが、討議直前と直後にアンケートを取り、討議の前後で意見がどう変わるのか調査を行います。日本でも実際、北海道でBSE問題に関する食の安全・安心について、討議型の世論調査が行なわれた実績があります。
一般の国民が政策に意思を反映させるには、一体どのような方法が最も効果的と言えるのでしょうか。今日はそのことについて、皆さんに話し合っていただけたらと思います。
柳下さんの話を受けて、テーブルごとに対話を深めるワールドカフェを開催します。今回のカフェでは、柳下さんの提示する質問に対して、テーブルのメンバー構成を二度変えながら対話を通じて、考えを深めていきます。