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2017年度は、日本自然保護協会へ寄付させていただきます。
日本自然保護協会(NACS-J)の活動や自然環境保護に関する情報をお届けします。

外来生物 ~社会を揺るがすアリとあらゆる問題~

  • 2017年8月7日
  • NACS-J

私達の生活にも密接にかかわっている外来種問題。
暮らしの中で出合う疑問について専門の方に伺いました。
外来種Q&A 4
▲回答者:五箇公一氏
 独立行政法人国立環境研究所 主席研究員

外来種問題Q&A

【Q:渡り鳥も外来種ですか?】
 A:渡り鳥は人間の手で移動したのではなく、自力で移動してきているので、海外から渡ってきても「外来種」とは見なしません。鳥のほかにも海を越える昆虫たちや、海の生きものも外来種にはなりません。

【Q:インフルエンザなどのウィルスも外来種ですか?】
 A:インフルエンザウィルスなどは、人を介することで移動しています。飛行機をはじめ、列車や自動車など、人間が体ひとつで移動できる範囲を超えて移動して、それに伴い拡大している点では、「人間によって移動している」と見なされます。ただし、ウィルス自体は「生物」のカテゴリーには入らないとされますので、科学的には「外来種」には当てはまりません。

【Q:野菜を買ったらイモムシがくっついてきたけど、どうしたらいいですか?】
 A:野菜にくっついてくるイモムシは多くの場合、モンシロチョウとかヨトウガのような農業害虫と思われます。そうした農業害虫は古くから人為的に移送されてきた昆虫たちですので、それを1匹、庭に逃がしたからと言って、深刻な外来種問題に結びつくとは思えません。でも万が一、希少種だったりしたら、大変なことかもしれませんね(笑)。できたら、そのイモムシの種類が何なのかをまず調べてみてください。そうやって、身近なところから「種を知る」ことが、生物多様性や外来種問題の理解への一歩につながっていくと思います。

【Q:どんなところから入ってくるのですか?】
 A:侵入経路はさまざまですが、いずれも私たちの活動と密接に関係しています。運ばれ方によって予防方法が異なるので、経路を明らかにすることは防除戦略を立てる上でとても重要です。

外来種Q&A 1

【Q:外来種が入ってくるとどんな悪影響がありますか?】
 A:外来種による影響は、運ばれる生物の種類と定着先の環境の組み合わせによってさまざまです。生態系への影響のほか、外来種の持ち込みによって、いわゆる害獣・害虫・雑草などと同じように農林水産業被害・人間への健康被害を新たに引き起こすこともあります。

外来種Q&A 2

【Q:温暖化で北上してきている昆虫などは外来種ですか?】
 A:この場合、昆虫などが周囲の環境変化、つまり温度上昇に伴って、自律的に移動をしていることになるので、人為的移送とは見なされません。しかし、温暖化という環境変化は人間活動による温暖化ガスの過剰な放出が原因とされることから、人為的な環境改変と定義され、それに伴う生物の移動も究極的には「人為的」と考えるべきだと言う科学者の意見もあります。現時点で日本国内では、温暖化による分布変化については外来種に含めないとする考え方が主流と思われます。
 一方、温暖化による分布変化とされる現象でも、ほかの原因で分布が変わっていると考えられるものもあり、温暖化の影響評価は難しい問題です。例えば、近年日本ではクマゼミが北方に分布を拡大して、その原因が温暖化だと指摘されていますが、一方で、都市部の緑化によって鳥類が増えて、鳥からの捕捉回避行動が鈍いアブラゼミが先に捕食され、ライバルが減ったところにクマゼミが進出しているという報告もあるのです。また、ナガサキアゲハという南方産のチョウも、近年温暖化で北上していると言われていますが、これは人為的な放蝶によるものという指摘もあります。なんでも温暖化のせいにして、原因究明をほったらかすようなことは避けなくてはいけません。

【Q:駆除活動で生きものを殺すことについて、子どもたちにどう伝えたらいいですか?】
 A:命をいただくことに、私たち人間は、常に反省を込めなければいけないのだと思います。アライグマだってアメリカザリガニだって本来の生息地があって、日本に来たくて来たわけではないのに、ここにいたから殺されなくてはならない。その状況をつくったのは人間だということを、これは悲劇なんだということを、私たちは滔々と語っていかなくてはなりません。
 大切なのは、「必要性があっての活動だ」ということをきちんと伝えること。その必要性が社会的にも科学的にもしっかりコンセンサスを得られるようにしなくてはいけないのです。それをとばして、「法律で決まっているから」と、杓子定規で外来種を悪者扱いして駆除するというのでは、みんなの理解は得られません。それは絶対に良くない。自分たちの描いた地域の未来のために、痛みを伴っても駆除しなくてはいけないということを伝えた上で、手を合わせながらやる、という姿勢を、大人たち自身が持ち続けなくてはならないと思います。

外来種Q&A 3
▲中学生25名によるオオキンケイギクの駆除(厚木市)
地域の自治会、厚木市、中学校すべてが新たな取り組みに積極的だったため実現しました。当日は、参加した中学生や取材に来たマスコミ(7社)に、オオキンケイギクが悪いわけではなく、人間が持ちこんだために在来の生態系を壊していることを、守りたい地域の自然環境とともに説明しました。また、地域の大人たちの新たな課題に積極的に挑戦する姿勢と、その大切さも紹介しました(写真・コメント:髙田 浩氏)


出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.542より

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