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その選択、本当にエコ?
~ライフサイクルアセスメントで自分の行動を見直そう~
-「第27回エコ×エネ・カフェ」(前編)

  • 2018年3月1日
  • 緑のgoo編集部

ライフサイクル全体で考える「エコ」

森:ライフサイクルで考えるということについて、もう少し教えてください。

田原:例えば、世の中の自動車がガソリンから電気に変わっていますが、本当に電気自動車は環境負荷が低いのでしょうか?実は、電気自動車のバッテリーをつくる時の環境負荷はとても高いのです。けれども走っている時の環境負荷は低いので、電気自動車がエコ、というのは、使っていくうちにガソリン自動車よりも負荷が低くなる時が来るということを意味しているのです。

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田原:このように、環境負荷はライフサイクルで考えないとわかりません。製品をつくって使って捨てるまで、使われている資源の採掘にまで遡って、どれくらい地球に影響するのかを考えます。

LCAの計算方法

森:実際、LCAはどのように運用されているんですか?

田原: ISOという国際的な規格に基づいて、何をどういう目的で計算するかを明確にします。次に、そこにどれくらいの資源が導入されるのか、どのくらいの汚染物質が出るのかをすべて計上する「インベントリ分析」を行います。そして、種類の異なる汚染物質がどのくらいの環境負荷があるのか、ひとつの物差しに載せて考える「インパクト評価」を行います。環境負荷の計算だけでは意味がなく、結果を解釈し、どう活用するかが大事なんです。体重計に乗って体重を測っただけでは痩せることにならないのと同じですよね。

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森:インベントリとはどういう意味ですか?

田原:訳すのは難しいですが、日本語だと「目録」と言われています。ひとつの製品をライフサイクル全体で考えて、それに対して資源がインプット(投入)され、CO2などがアウトプット(排出)される。それらを全部並べたものをインベントリと言っています。

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田原:例えば車だと、プラスチックが使われています。プラスチックの種類のひとつにABS樹脂というものがあり、ABS樹脂の素材はブタジエンとスチレンとアクリロニトリル。その中のブタジエンは何からできていて…と。このように、つながりから考えていきます。

森:他の素材に関しても同じように考えていくんですよね?途方もない作業じゃないですか!

田原:本当に途方もないです。樹形図のようにずらーっと広がっていきます。これがインベントリデータの基本になり、これらをつなげて考えます。

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LCAを構成する膨大なデータ

森:素材ごとにインベントリデータがあるということですね。

田原:はい。データを集めたバックグラウンドデータというものがあります。例えば、カレーライスをつくるとき、お米やカレー粉などの材料代はわかりますよね、ガス会社に聞けばガス代もわかる、このように原価の計算ができます。これをと同じように、LCAの計算ができるということです。

森:このデータはどこが管理しているのですか?

田原:良い振りですね(笑)。IDEA(イデア)というところがありまして、私がラボ長をやっています。

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森:例えばお店でサンドイッチを出すとき、パン、バター、チーズというように材料を調べれば、それがどのくらいCO2を出しているのかがわかるんですね。

田原:そうです。データセットは、農業や林業製品などの一次産業から廃棄物処理まで、日本で生産されているものがほぼそろっています。

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田原:有料ですが、1ライセンス26万円で全データが使えるので、たいへんお安くなっています(笑)ヨーロッパはもっと高いんですよ。

環境負荷へのインパクト低減を目指す

森:インベントリデータを計算した後、その影響はどうやって評価するのですか?例えばCO2排出量が1kgの場合と、NOxが1kgの場合のどちらの環境負荷が高いのかということは、単純に比較できませんよね?

田原:例えばCO2は温暖化に寄与します。温暖化はマラリアの問題を引き起こします。オゾン層破壊の場合は、緑内障や皮膚がんなどの健康リスクがありますよね。

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田原:こういった被害から私たちが守るべきものは、人間生活の基礎である健康と資産、生態系を支える生物多様性と一次生産量です。最終的にこの4つを保護対象にして、どのくらいの被害があるのか、全部の因果関係をつなげて評価するLIME(ライム)という手法があります。

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