そういったこと踏まえて見ていただきたいのが、夏に実施された国民的議論のために、6月29日に政府のエネルギー・環境会議が用意した「2030年における3つのシナリオ」です。
参考:エネルギー・環境会議
話そう“エネルギーと環境のみらい”「3つのシナリオ」
森さんから会場への呼びかけです。「国民的議論を行ってきますという話があったこと、全国から300人の人が集まって集中した議論を行ったことなど知っていましたか?」
こちらが討論型世論調査の結果になります。
事前アンケート(T1)、中間(T2)、最終(T3)という3つの時点で各シナリオへの支持を質問した時の結果が示されていますが、後半で「原子力発電ゼロ」という選択肢を支持するたちが増えているのがわかり。実際に私が討論に参加して感じたのは、参加者の選択は、事前にどのような情報や意見を聞いたかということによって左右されうるということです。私は一日目の終わったタイミングでパネリストとして参加し、「様々な選択は可能であるが、万能の選択肢はない。再生可能エネルギーに全面的に頼ることは困難で、燃料代も高くなる」という話をしました。翌日には「そういったことは乗り越えられる」という論調の方の話がありました。そのようなやり取りの結果、最終的に原発ゼロという選択肢の支持者が少し高くなりました。
将来のエネルギーシステムについて、具体的に考える上での課題についてお話をします。たとえば太陽光発電は、天候に左右されるため供給が不安定です。極端なケースから考えますと、天気がよくて太陽光発電がフルに使える日と、天気が悪くてあまり使えない日では一億kW以上も発電量が変化することになります。こういった大きなそして不確実な変化を調整出来るシステムをつくることは非常に難しく時間がかかり、電力システムにおける需給調整の問題は太陽光発電や風力発電の導入を進める上で最終的な最大の課題といえます。この問題が難しくなるのは、再生可能エネルギーの比率が増えれば増えるほど変動が大きくなることに加え、調整可能な発電の割合が減ってくることを忘れてはなりません。これはエネルギーの安定供給を考える上での大きな課題であり、再生可能エネルギーの導入を増やすという場合、この課題を正面から解いていかなくてはなりません。これは世界共通の課題ですから、この解決策を確立できれば、日本が世界に大きく貢献できるという可能性もあるとも言えます。
藤木: 「これまでは、電気はためておけないので、変動する需要を予想して発電するという考えでした。荻本さんのお話では、太陽光発電の導入等が進むとこれからは供給側も動くという前提で、両方が動く世界として捉えていかなくてはならないという、難しさがあるということですね」
荻本:
「そうですね」
藤木:
「発送電分離という議論もありますが、電力会社が分社化して発電と供給をバラバラに行うようになると、こういった調整はもっと難しくなってくるということも言えますか」
荻本:
「そうですね。実際には組織が変わると人間関係も変わるし、ビジネスなので儲けようという気持ちも働いてくるでしょうから、目に見える以外にも複雑な要件はありますね」