田井中さん「僕はコミュニケーションデザインが仕事ですので、『コミュニケーションの起こる環境って何だろう』という視点からものごとを考えています。2050年といっても、先の話過ぎてちょっとイメージしづらいですよね。僕は今30代の後半ですので、2050年には80歳くらいになっています。その時の世界人口が90億人くらいとすると、そのうち日本はおそらく9千万人ぐらい。そうすると日本の人口は世界の1%ということ。先ほどの岩口さんのお話から、日本の電力需要の1%程度がNTTグループだとすると、世界の0.01%がNTTグループによって消費されている・・・もちろん時代が変われば環境は変わりますが、例えばそうやって考えることで、イメージが具体的に湧きますよね」
田井中さん「先ほど、僕は『食の安全・安心』に関わる仕事をしているとお話しました。安全と安心は一見似ているように思うかもしれませんが、実は違う。安全は取り組みで解決することができますが、安心はコミュニケーションによって成立するものです。先ほどの話と結び付けてお話しますと、人間が一人一日あたり必要なカロリーは2,000kcalといわれています。つまり、2,000kcalかける日本の人口分を確保することが、日本の食の安全を守るということになる。一日2,000kcal分をどのように確保するのか、という問いが成立します。けれども、エネルギーの場合は違う。先ほどの円グラフにもありましたが、2005年と1975年を比べると2.5倍に増えている。これは、エネルギー消費量は単純に人口の増減に合せて変化するのではなく、一人当たりが必要とする使用量が変わっているということを示しています。2050年のエネルギー需要を考える際にも、こういった視点が必要です」
田井中さん「食で考えると、1975年も2005年も一人当たりのカロリー摂取量はほぼ横ばい。けれども、1kcalあたりにかける金額は増加しています。ここには原料の価格が高騰しているという理由の他に、実は『情報コストが上がっていること』が原因にあると言われています。つまり、不安を解消するためのコミュニケーションに必要なコストがアップしているということです。そのコストを負担しているのは、実は消費者なわけです。先ほど、岩口さんからCSRの捉え方についてのお話がありました。CSRのCはCorporate(企業)のCだといわれていますが、『安心』ということを考えた時には、消費者側も責任を持つという視点が重要です。つまり、C にはCitizen(消費者としての市民)のという意味も込められているのではないでしょうか。安心供給とは、企業だけではなく、消費者も一緒に考えていかなくてはならないテーマであることを意味しているのではないかと思います」