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「生物多様性国家戦略」 詳細解説

読み:
せいぶつたようせいこっかせんりゃく
英名:
National Strategy for the Conservation and Sustainable Use of Biological Diversity

生物は、たとえ同じ種でも、住んでいる地域や環境によって違いが生じ、大気や水などの環境に適応して多様な生物種が存在し、海洋、森林、湖沼などいろいろな生態系を形成している。また、一見同じように見える個体の間でも微妙な違いがある。こうした生物の多様さを総称して生物多様性という。1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択された生物多様性条約では、生物多様性を、「すべての生物(陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系その他生息又は生育の場のいかんを問わない。)の間の変異性をいうもの」とし、1)種内の多様性、2)種間の多様性、3)生態系の多様性を含む、と定義している。

同条約では、生物多様性の保全、持続可能な利用の奨励、普及啓発に関する措置、研究の推進、悪影響の最小化、国際協力など多岐にわたる施策・計画が定められ、締約国には、関連する部門での生物多様性保全、持続可能な利用への取り組みなどが求められた。これを受けて日本は1995年10月、「地球環境保全に関する関係閣僚会議」で第1次生物多様性国家戦略を決定した。この第1次国家戦略は、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本方針と国の施策の方向を定めたもので、施策の実施状況について毎年点検を行うとともに、約5年を目途に見直しを行うことが定められた。

第1次国家戦略は2002年3月に全面改定され、第2次国家戦略が策定された。改定にあたっては、社会経済の安定化と環境意識の向上、各省の環境・自然の内部化、地球環境の視点からの国際的責務の増大といったことが考慮された。第2次国家戦略は、「自然と共生する社会」実現のための政府の中長期的なトータルプランであり、また、新たに着手する具体施策を盛り込んだ実践的な行動計画と位置付けられた。土地の広がりのみでなく、地下から空中、海水、また、微生物から動物までを国土としてとらえ、その将来像を提示した。大きな柱は、1)保護地域制度の強化、保護管理の充実や移入種問題への対応など、危機の態様に応じた「保全の強化」、2)自然の再生プロセスに人間が関与することで自然の再生、修復を進める「自然再生」、3)身近な里山などの保全管理と「持続可能な利用」の3点だった。

そして、2007年11月に第3次国家戦略が閣議決定された。第3次国家戦略は、「戦略」と「行動計画」の2部構成になっている。戦略部分では、暮らしを支える生物多様性の重要性を解説し、また、顕在化しつつある地球温暖化の影響について記述している。この中では、地球温暖化や開発などにより脅かされている生物多様性を保全し、持続可能な利用を目指すという基本理念を掲げ、その実現に向け、取り組むべき施策を示した。さらに、生物多様性の観点から見た国土の望ましい姿のイメージを、破壊してきた国土の生態系を回復する「100年計画」として示し、今後5年程度の間に取り組むべき施策の方向性(生物多様性の社会浸透、地域における人と自然の関係の再構築、森・里・川・海のつながり、地球規模の視野を持って行動する)を、次の4つの「基本戦略」としてまとめている。1) 生物多様性を社会に浸透させる、2) 地域における人と自然の関係を再構築する、3) 森・里・川・海のつながりを確保する、4)地球規模の視野を持って行動する。

一方の行動計画部分では、生態系ネットワークの形成や自然再生、野生生物の保護・管理といった分野における具体的施策を示した上、「生物多様性」という言葉の認知度を50%以上に上げる、ラムサール条約湿地を10カ所増やすなどの数値目標を設定した。環境省では、今後、地方自治体、企業、NGO/NPO、国民などと連携して、第3次国家戦略で示した施策を具体化していく方針だ。

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