地球温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減は、すべての国にとって喫緊の課題だ。気候変動枠組条約などの国際的な取り決めに従い、世界中の国々が排出削減の努力をしているが、直接的な取り組みには限界がある。このため、排出分を植林などに投資して相殺するカーボン・オフセットの仕組みが構築されている。その算定や獲得に用いられる排出削減量(クレジット)のことをオフセット・クレジットといい、日本が推進しているのが二国間オフセット・クレジット制度だ。「JCM/BOCM」と略される。
JCM/BOCMは、日本が途上国に対して温室効果ガス削減に関する技術や製品、システム、サービス、インフラなどの普及や対策を行い、それにより実現した排出削減や吸収が日本にもたらす貢献度を定量的に評価して、わが国の削減目標達成に活かす仕組みだ。2011年に南アフリカのダーバンで開かれた国連の気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)にあたり、日本は世界低炭素成長ビジョンを公表した。その中で、途上国対策としての新たな市場メカニズムを実現する仕組みとして盛り込まれた。
日本は、延長された京都議定書の第2約束期間には参加していない。排出量取引やクリーン開発メカニズム(CDM)などの京都メカニズムは活用できるが、参加国と比べれば制限はある。それだけに、JCM/BOCMはCDMを補う枠組みとして期待される。政府は、JCM/BOCMの検討に役立つ知見や経験を集積するために、MRVモデル実証調査・実現可能性調査を行っている。MRVとは、測定・報告・第三者検証という一連の流れにより、排出削減行動の透明性と公平性、正確性を確保する仕組みだ。
2012年度には合計で25件の調査案件が採択された。主な調査対象国としては、インドネシア、カンボジア、スリランカ、タイ、ベトナム、メキシコ、ラオスなどがある。そして2013年1月に、第1号案件としてモンゴルとの間でJCM/BOCMを進めていくための文書を交わした。また、インドネシアやベトナムとの間でも実質的な協議を進めている。
また、新メカニズム情報プラットフォームの開設など情報提供や、人材育成支援、排出削減・吸収量の記録及び管理に必要な新たな登録簿の開発なども進められている。