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「国内排出量取引制度」 詳細解説

読み:
こくないはいしゅつりょうとりひきせいど
英名:
Domestic Emissions Trading System

二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減目標を達成するため、排出枠を市場で取引する排出量取引(排出権取引ともいう)は、地球温暖化を防止するための補完的な手法として注目されている。海外では、EUが2005年にCO2排出の国際的な取引システムであるEU域内排出量取引制度(EU-ETS)を開始した。このような仕組みを国内で実施する上で重要なのが、キャップ・アンド・トレードだ。公平で透明なルールの下、個々の企業に対して排出量の限度である排出枠(キャップ)を設定して、削減の取り組みを担保する。また、排出枠の取引(トレード)を認めることで、柔軟性のある義務履行を可能にする。

中央環境審議会地球環境部会の国内排出量取引制度小委員会は、2008年5月に国内排出量取引制度のあり方についての中間整理を発表した。そして同年10月に、排出量取引の国内統合市場の試行運用が始まった。エネルギーに由来するCO2を対象とし、企業が削減目標を設定して他の参加者の目標超過達成分(排出枠)や、クレジットの取引を活用して目標を達成できる仕組みだ。これを「試行排出量取引スキーム」という。2011年度における同スキームの目標達成状況を見ると、57者(741万t-CO2)が達成している。

環境省はこれに先立ち、自主参加型の国内排出量取引制度(JVETS)を2005年度に開始した。企業や国が、CO2の削減目標に対する超過分や不足分を「排出枠」として市場で取引する仕組みだ。温室効果ガスの排出削減に自主的に取り組む事業者に対して、一定量の排出削減約束を条件に補助を行う。ひとつの国や企業の排出量を減らすだけではなく、排出削減にかかる費用を経済社会全体で最小化していくねらいがある。CO2に取引価格を付けることで市場メカニズムを活用し、企業などによる技術開発や削減努力を促す効果もある。

JVETSに参加する事業者には、排出削減の約束を達成するため排出枠の取引が認められる。参加者は、省エネ設備などにより一定量のCO2排出削減を約束するタイプAと、補助金なしで排出削減を約束するタイプB及びタイプCとに分けられる。タイプAには2013年1月までに、のべ389事業者が参加した。このほかに取引を仲介する取引参加者がいる。参加は工場または事業場単位で行い、グループ単位でも参加できる。また、コンビナートのように同じ区画で複数の法人が事業を行っている場合は、エネルギー管理が一体として行われている範囲を1工場としてとらえる。

取引は随時可能で、排出枠の移転による決済が行われる。また、信頼性を確保するため、基準年度及び削減対策実施年度の排出量に関して第三者検証が実施される。さらに、登録簿及び排出量管理システムや取引マッチングなどの電子インフラも整備されている。これらの仕組みが適正に運用されるため、モニタリング・報告ガイドラインや排出量検証のためのガイドライン、標準契約書などが定められている。JVETSについては、2013年5月の時点で2011年度採択の第7期が運用されているが、第8期の募集は行われていない。

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