Point 3:自然から学び、人に伝える
町独自の調査研究やガイド育成を推進
調査研究や人材育成の活動拠点となっているのは、町営の只見町ブナセンター。豊かな只見の自然や、自然を利用してきた文化や歴史を明らかにするため、自然環境基礎調査を只見町として進めるとともに、大学などの研究グループを支援する学術調査助成制度を設け、その成果を只見町ブナセンターの紀要などにまとめている。只見の自然や文化の博物館「ただみ・ブナと川のミュージアム」を併設し、企画展やセミナー・観察会なども開催。地域の魅力を住民や訪問者に常に発信するとともに、自然と人間活動の共生関係を科学的に明らかにし、それにかかわる人を育てるという、ユネスコエコパークの大事な役割を果たしている。
▲只見町ブナセンターで発行・販売されている紀要(左)や解説ガイド(右)。
▲只見の自然を案内する「只見町公認自然ガイド」も育成中。現在の登録者は16名ほど。訪れる際はぜひ公認ガイドを頼みたい。只見町ブナセンターの観察会に参加するのもオススメ!
▲ネイチャーツアーや農業体験、郷土食づくりもできる体験型の宿泊施設「森林の分校(もりのぶんこう)ふざわ」。地元布沢地区の住民により運営されていて、只見ならではの自然や生活文化を楽しめるおすすめ施設。
▲アケビなどでつくられたカゴ。編む技術は今も地区ごとに保存会などを通じて伝承されている。
▲只見の伝統や天然資源を活用した商品を認定した「自然首都・只見」ブランドのあめとジャム。
只見のあめは、厳冬期に各家庭でもち米と大麦もやしの麦芽だけでつくられる液体状のゆるいあめで、温めて茶碗で飲む。冬の楽しみ。
▲旅館で味わう自然の恵み。只見の水で育ったイワナや、裏山で採ったササの葉でくるみスゲで結んだチマキ、地元野菜の家庭料理など、豊かな自然と伝統文化が詰まっている。(料理:民宿只見荘)
(取材:編集室・増沢有葉)
NACS-Jユネスコエコパーク担当のワンポイント
朱宮丈晴 NACS-Jエコシステムマネジメント室
日本有数の豪雪地帯、過疎高齢化が進む厳しい地域の中で、地域振興だけに偏るのではなくユネスコエコパークのしくみを土台として自然に配慮した町づくりを実践しようとしています。
ただみ・ブナと川のミュージアムを中心に、自然科学や人文社会学的調査研究を大学などと連携して情報を蓄積し、町づくりに活用しています。例えば、只見町の野生生物を保護する条例を制定し、町民と一体となった自然環境や野生動植物の保護保全を進めていますし、道路工事、河川改修、田んぼの整備などが行われる際に、モニタリング調査などで得られた知見を活かして配慮しています。
~只見ユネスコエコパーク基本情報~
●含まれる自治体
福島県:只見町、檜枝岐村
●拠点/問い合わせ
只見町ブナセンター
住所:福島県南会津郡只見町大字只見字町下2590
TEL:0241-72-8355
ウェブサイト:http://www.tadami-buna.jp/sisetu.html
アクセス:JR只見駅より徒歩25分 ※只見町内には一般の方が利用できるバスなどの公共交通がありませんので、車でのお越しがおすすめです!
出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.553より