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「衣食住から考えるSDGsアクション〜大人と子どもが作る未来〜」第33回 エコ×エネカフェ(後編)

  • 2020年3月6日
  • 緑のgoo編集部

体験授業 「衣食住から考えるSDGsアクション」

さて質問です。今日みなさんが着ている服は誰がつくりましたか?その原材料はどこの国でとれて、誰によって作られているのでしょう?わかる人はいますか?調べきれないですよね。でも、僕が今日着ているこの服については、分かるんです。このシャツとデニムはインドのグジャラート州というところのオーガニック・コットンで、この工場で働くこの方が作ってくれています。

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これはPeople Treeという会社の商品で、環境や人権に配慮した製品づくりに取り組んでいます。企業によってはこういう情報もきちんとわかるようになっているんですね。10YCというアパレル企業では、生地の値段や生産コストもみんな公表しています。生産者と二次加工する人を直接つないでいる。無駄はつくらないし、適正な値段をちゃんとつけていることをちゃんと発信しています。僕はいつもこういう服を着ているわけではないですが、講演会や、こういう分野の授業をするときは、選んで着ています。こういうことを知っていると、買う時に考えるようになりますよね。

そこで授業では、クラスのみんなでどうやったらサステナブルで環境や人にやさしいものを選べるのか考えてみたところ、こんなにたくさんのサステナブル・ラベルがあるということがわかりました。実際にスーパーに行って見つかるか探してみて、この話はSDGsのどの目標に関係があるのだろうと、みんなで考えていくんですね。

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例えばスーパーやコンビニに行って牛乳を買う時、つい賞味期限の長いものに手を伸ばしていないですか?もしも本当に今飲むことがわかっているなら、手前にある賞味期限の短いものから買うこともできるよね、とか。いろいろなことを考えていけますよね。

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では、次のテーマで行きます。
みなさんにはこれから二種類のチョコレートを食べ比べてもらいます。チョコEとチョコSE、みなさんはどっちが気に入りましたか?使われている油が違います。チョコを固める油が、片方はカカオバター、もう片方はパーム油。

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このチョコレートは不二製油さんという会社が提供くださったものなのですが、これらのチョコレートは、同じ労働条件でつくると、値段に差が生じます。どちらかが圧倒的に美味しくなかったら、みなさんも予想しやすかったと思いますが、どちらとても美味しくできていますから、味だけでみるとほとんどわからないかもしれないですね。そうなると、皆さんはチョコレートを、何を基準に選ぶのでしょうか?児童労働などがなく人権が大切にされているか、環境は守られているか、野生動物が保護できているか。もしもそういう情報を知っていたら、何を選ぶかもきっと変わってきますよね。そんなことを学ぶボルネオに渡航するスタディツアーをNPOと一緒に企画してつくりました。

ボルネオはチョコレートやいろいろな食料の原料にもなっているパーム油の産地で、オランウータンやボルネオゾウ、昆虫などいろいろな生き物のいる自然が豊かなところです。パーム油は生産力が高く効果的に栽培できますし、味がほとんどないから食用として使いやすく重宝されています。生徒たちには、身近にあるパーム油が使われている商品をみつけ、学校に持ってきてもらっていますが、本当にたくさんあるということに気づくわけです。

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このパーム油がどうやってつくられているか知っていますか?
野生動物のいる熱帯雨林を切り開いて、プランテーション農場をたくさんつくっている。すると、もともとあった生物多様性が損なわれ、CO2吸収量も圧倒的に落ちるのです。森が破壊され食べ物がなくてこまったボルネオゾウが、人の暮らすところにまでやってきてしまうため、毒殺されている現状もあります。ボルネオにはそうやって置き去りにされたボルネオゾウを保護して預かっている施設もあります。

一方でプランテーションの農民は、パーム油をつくる仕事ができて、こんなに助かることはないと喜んでいます。パーム油は日本人の消費も影響しています。自然環境やそこに暮らすいのちが奪われている一方で、それによって経済的に豊かになって子どもたちを学校に通わせることができている人たちがいる。じゃあどうすればいいのだろうか?こんな風に両面性をみてもらうことが大事なんです。

現地に行って新たな視点でみると、SDGsの目標のいろいろなものとつながっていることがみえてきます。

例えば生徒たちは、農園で働いているのは女性が多いと気づきました。給料が母国の仕事よりいいのでほとんどが出稼ぎ労働者なのですが、この状況について、農園のオーナーに質問してみると、女性の方が男性よりも真面目だからだというんです。途上国は女性の仕事がないという事情もあります。子どもをつれた若い女性もきますが、現地の学校にはその子どもたちが通えるだけのスペースがなくその子たちは教育が受けられません。これに関わるSDGsは何番でしょうか?

プランテーションで働くある農民がいいました。プランテーションのお陰で子どもたちに母国で認められた教育を与えることができて、息子はパイロットになった。この農園は夢を叶える農園なんだって。こういうのを聞くと、複雑な気分になってきますよね。

そして、私たちは消費という行為が企業を動かす最大の社会的インパクトであることも理解する必要があります。「RSPOというサステナブルなパーム油を推奨する認証制度を知っていますか」と農園で働く人に聞いてみたことがあります。すると彼らは、オフコース(もちろん)と言う。それをやらないのかと尋ねるとNOなんです。RSPOにしたら値段があがるけれど、日本の人は買ってくれるの?と。RSPOは日本人にはほとんど知られていません。いくら環境や人権によくても、買ってくれないならつくらないよと、そういうことなんですね。

このように、ひとつの事例にSDGsのたくさんの目標が関係していることがわかります。こういうことを学んだ子どもたちが、消費世代は親なので、親に訴え、親の意識を変えようと「Parents Education(親の教育)」を呼びかけました。

ここで考えて欲しいんです。皆さんが取り組めるターゲットはどれでしょうか?各自で考えて、テーブルごとにシェアしてみてください。

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OECD(経済協力開発機構)が各国のSDGs達成度を4段階評価で出しています。北欧の国の達成度が高いですが、すべてを達成している国はなく、どこも苦戦しています。日本は目標5(ジェンダー)、12(消費と生産)、13(気候変動)、14(陸の生物多様性)、17(パートナーシップ)がレッド(低評価)をもらっています。目標4(教育)や9(産業・技術)は高く評価されていますが、不登校をこれだけたくさんうんでいる教育を持つ日本が、本当に教育が達成できていると言っていいのかとも思いますよね。

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新渡戸文化小中学校・高等学校では、今年度から教科横断型のTT(Team Teaching)をやっています。

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教科を超えてTTする時間で、学校で菜園を始めて、保護者の世代にこういうことの大切さを伝えるコミュニケーションカフェを、さまざまなステークホルダーとつながってつくりたい。とういうアイデアが生徒たちから生まれました。再生可能エネルギーを導入するはどうしたらいいかを知るためにある企業に取材にいって、契約を変えればすぐにできるということも知りました。こうした計画を生徒たちが大人に発表していく。これが未来型の教育なんです。こういった活動を通じて、「自分で考えたことを発言できる力」「挑戦できることがあったら行動してみる力」などを伸ばすことができたと生徒たちも実感しています。

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これまでの教育界は教員が指導する役割というのが前提でした。僕たちは完全に生徒と一緒にディスカッションして、プロジェクトを進めています。教員がずっと牽引っていうのではなく、対等な立場で一緒に作業する。いずれ教員は外に出て、生徒たちは自立していって本当に必要な力を身につけていく。

僕はSDGsのTransforming Our World(私たちの世界を変革する)という言葉が大好きで、社会を本当に抜本的に変えなきゃいけないと感じています。だからこそ教育を変えていく必要があるし、今日発表したことが皆さんのお役にたてたら嬉しいです。

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