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第18回 「手づくりの持続可能な暮らし方教えます」加藤 大吾 氏

  • 2015年3月12日
  • 緑のgoo編集部
J-POWER エコ×エネ・カフェ

見知らぬ土地での新しい暮らし

森:調べたところによると、生まれは新宿四谷、山梨の都留に土地を買った時には世田谷区民だったそうで、そもそも「都会っ子」だった加藤さんが、なぜそんなことを始めようと思ったんですか?

加藤:もともとはアウトドア関係の仕事をしていたのですが、独立した後、一年間、山に籠って自然学校づくりに関わることになったんです。その仕事を終えて、世田谷に帰ってきたら、雨の匂いが違うことに気付いたんですね。それから、今日一日土を踏んでいないということに。そしたら、いてもたってもいられなくなってしまって。それが一番大きなきっかけですね。

森:一日一回も土を踏まないのが、嫌になったってこと?

エコエネ会場
エコエネ会場

加藤:そこまではよくわからないですね。ただ、山の中に住んでいた時が、あまりにも良かったんです。その頃ちょうど娘が産まれたのですが、1,000グラムしかない小さな赤ちゃんだったので、転びやすいとか、いろいろ障がいがあったんですね。それで、このまま都会で暮らすことが彼女に最適な刺激を与えられるのか、などと考えた上で、家族で土地探しを始めました。

森:実現するまで、どれくらい時間がかかりましたか?

加藤:1年半程です。いいなと思う山にあたりをつけ、地域に入っていって、1歳の子どもを抱っこして温泉に入っていたりすると、地域のおじいちゃんが「若いもんが何してるんだ」って声をかけてくるんですよ。で、「こういうところに住みたいんです」って言うと、「ここはいいぞ」とか、「こんなところに来ちゃいかん」とか、いろいろなことを教えてくれるんです。そうすると、そこの地域性だとか、住んでいる人の人柄とかがわかる。で、ここなら良いなって思えるところに決めたんです。

お金を中心とした社会から一歩離れて

森:土地は買ったんですか?

加藤:300万円出して買いました。そしたら、お金がなくなっちゃって。困ったなあと思っていたら、愛・地球博に呼ばれて、いらなくなった廃材や建物の材料をもらえることになって。それで、家を建てました。

森:生活は苦しかったんじゃないですか?

加藤:正直、大変でした。クレジットの引き落としはいつだろう、お米はどれくらい残っているだろうと考えるほど、追い詰められたこともありました。けれども、暮らしてみると、山の中の生活って、お金がかからないんですよね。だから、結構生きていけるなって。ものすごくたくさん仕事をしているわけではないし、収入もそんなにはないけれど、豊かに生きていけることに気づきました。例えば不況が起こると、お金が中心でまわっている社会に生きていたら大変だったと思うんですけれど、全然、大変じゃなかったんですね。お米もあるし、イノシシを捕まえれば食べられる。こういう山の中に暮らしていると、金融ショックなんかよりも、気候変動の方が気になるようになったり。でも、そこに気づきがあるんですよね。そうか、気候変動が起こったら、経済にすごく影響がでるんだなとか。

森:東京にいた頃よりも、今のほうが稼いでいると聞いたのですが。

加藤:はい。東京の時の収入があまり高くなかったというのもありますが。本を出して、それが4,000部ぐらい売れてと。そういう積み重ねですね。直接的な収入より、この暮らしをしていることがきっかけで、いろいろな場所や人につながったり、こんな風に話をする仕事ができたりする。そうすると、他にもいろいろなところにつながっていったりする。楽しいことをしながら、それが、それなりの収入を得ることにつながっているという状況です。

ヒツジやニワトリなど
ヒツジやニワトリなど
エコエネ会場

加藤:左上の写真はヒツジです。セーターを編みたいと思って、一昨年から飼い始めました。

森:毛糸を買うんじゃなくて、ヒツジを飼うところから。それが「かとうさん流」!

森:家も、自分でつくったんでしたよね。いくらぐらいかけて?

加藤:一棟目は材料費200万円くらい。2棟目はほぼ廃材だけでつくり、20万円くらいでできました。自分でやろうとすると「衣食住」の「衣」が難しいんです。それで、綿花かヒツジか、どっちがわくわくするかなって考えたら、ヒツジだったんですよ。今年の1月30日に子ヒツジが誕生して。ここでもまた、命の循環が生まれたんです。右上はニワトリの写真ですが、ニワトリが卵を産んで、それを温めて、雛を孵してくれる。オスは食べられ、メスは、卵を産んで生きながらえる。何年かに一度、新しいオスを入れて、DNAをリフレッシュする。

森:右下の写真の部屋は?

加藤:ちょっとおしゃれな感じだと思いませんか?WWOOFといわれるサービスを使って、有機農業を学びたい旅人のような人が家に泊まりにくるんですね。6時間働いてもらう代わりに、食事を提供しています。

森:ゲストハウスにして収入源にはしないのですか?

加藤:僕の暮らしぶりや農法を、もっとたくさんの人に体験して欲しいということを考えて、ゲストハウスとして貸し出すよりも、体験しに来てもらう方がいいだろうと考えました。

森:他には、ワークショップを開催したりもしているのですね。

加藤:ワークショッップは、僕の運営しているNPO法人都留環境フォーラムがやっています。普通NPOというのは、何かの事業をするために目的を持った人が集まってできるのだと思いますが、僕らは、先ず集まって「何やりたい?」と考えるところから始まったんです。例えば「馬を飼って農業をやりたい」と誰かが言ったら、それを事業化するというのが、うちのやり方なのです。今、事業としては、都会の人たちと一緒に農作業をするということをやっています。

森:ということは、今やっているとご紹介されたことも、NPOの活動のひとつの切り口でしかないということですね。他にももっと広がっていく。

自分で作る楽しみと経済性
自分で作る楽しみと経済性
エコエネ会場

森:この数字が意味するのは、田舎の方がリッチに暮らせるということでしょうか。

加藤:家は自分で買った土地に自分でつくったので、家賃ゼロ。電気もソーラー発電しているので2000円もいかないくらい。LPガスは、自分で充填すると、メンテナンス料をガス会社にはらわなくていいから50%ぐらい安くなる。作物はつくっているし、風呂を沸かすのに灯油を使ったりしますが、薪も使っているので、ガス代は50%ぐらいダウン。出版した本(『地球に暮らそう』-生態系の中に生きるという選択肢-)に「かとうさんちの家計簿」として紹介したのですが、一月のランニングコストは9万円ちょっとなんです。僕は子どもが4人いますが、総務省の調査によると、僕の年齢で子どもが4人いると、毎月24万円くらいかかるのだそうです。ここなら10万円あれば生きていけるから、そこそこの収入でも、なんとかなるんですね。

森:いま、仕事は忙しいですか?

加藤:結構忙しいですけれど、楽しいです!

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