森: ではここで、大規模発電・大規模送電の事業を担うJ-POWERの藤木さんにもご登場いただきお話を伺いましょう。藤木さん、いかがでしょうか。
藤木: 私自身、以前北海道で勤務していたことがあり、冬の雪氷をうまく活用する、あるいは森林資源をバイオマスで活用するとか、それぞれの風土にあった形でエネルギーを活用しようという取り組みをたくさん目にしてきました。そして前回のカフェでは「これからは供給だけではなく需要側も考える時代に入る」というお話を伺いました。私たち(J-POWER)の手がけるような、大規模な、セントラルヒーティングも大切だと思いますが、一方で、自分たちが使うエネルギーを作るという試みも各地の地域で現れてきています。私たちはつい、中央と地方、グローバルとローカル、集中と過疎など対比で見てしまいがちですが、エコロジーとエネルギーの観点からは、地域の持つ特性や可能性をありのままに捉えていくという視点を持ち、どのような組み合わせがよいかを考えていくことも重要なことですね。
川北: 東日本大震災で大きな被害を受けた被災地の一つ、岩手県の大槌町では、人口の1割もの方が死亡または行方不明となられ、もともと高齢者率が32%と高く、コミュニティとしてもともと大変な課題を抱えている地域です。一方で、日本全国1,783の市区町村の人口予測を見ると、そのうちの1,000を超える自治体で、2020年までに高齢者率が30%を超え、15年間の人口減少が1割に達します。
つまり、被災地で起こっている課題に向き合うことは、これから日本の多くの自治体が直面する課題に向き合うことでもあります。そして少子多老化は世界的な課題でもあり、日本でのチャレンジが、世界最先端の事例として各国で活かされることにもつながる可能性があります。地方で起こっていることを末端と考えるのではなく、最先端と考える。そういう視点が必要です。
質問: 最近は一般家庭の貧困も問題になっています。例え補助金などがあっても、高額のエコ製品に切り替えられるのは一部の人に限られるのではないでしょうか。
川北: 必ずしも高額のものを導入するということでなく、地域によっては、
例えば薪ストーブを積極的に導入するなどの方法が効果的な場合もあります。エネルギー消費にかかる負担を下げる方法もありますよね。
森: 「ポイントなのは、お金持ちでないと省エネが出来ない」ということわけではないということですよね。
川北さんからのお話の後は、テーブルごと自由に意見を交わす対話の場、「ワールドカフェ」の時間です。三つのテーマに沿って、カフェでの対話が展開されていきます。