今回のゲストはIIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表の川北秀人さんです。川北さんは社会起業家(課題・理想に挑むNPO・企業)の支援やビジネスと市民生活を通じた環境問題の解決などに精力的に取り組み、年間約40の県・市で行政と市民団体を対象とした協働に関する研修を実施。地域で活動する団体へのマネジメント講座を年間100件も手がけているそうです。今年に入ってからの一ヶ月の間に既に北海道と沖縄両方を訪れるなど、まさに全国各地を飛び回って活動している川北さん。今回はそんな川北さんのトークからスタートします。
さて、これから少し未来のこと、2020年の世界を皆さんと考えていこうと思います。
日本のGDPは2010年に中国に抜かれました。では、2020年になるとこれがどれくらい変わっているでしょう。日本のGDP成長率は毎年約1%、中国では少なくとも7%と予想されています。これが10年続くと、日本を1とすると中国は2。今年は大学生のみなさんが30歳くらいになるころには、世界経済の中での日本の状況は今とはまったく違っているということを、まずわかっておいていただきたいのです。
2020年の日本について、もうひとつの大きな要素は、二つの高齢化です。高齢者を支える現役世代(15歳から64歳)は、2010年に2.7人だったのが、2020年には2.0人まで減ってしまい、高齢者自身が自分たちの暮らしを支える役割がさらに求められる時代に入ります。
そして、インフラの高齢化。道路や橋の法定耐用年数は50年、水道は40年ですが、2010年度の国土交通白書によると、2020年には日本中の行政が管理する15メートル以上の橋の四分の一が、完成から50年以上経過することになります。ところが、これを維持・補修するための予算を、行政は用意できていません。
人間の高齢化が進むと、年金や医療・介護などへの支払いが増え、一方で税収は減る。自治体の財政がますます苦しくなる中で、高齢化したインフラへの対応もしなくてはならない。
だからこそ日本人は、地域や社会・経済を支えていくために、これまでよりももっと高い効率の働き方をしていかなくてはならないのです。
日本のGDPが、世界に占める割合が最大だったのは1994年で17.8%。それがたった15年後の2010年にはシェアが半分になり、2016年には1970年並みの7.2%となると予測されています。つまり今からわずか4年後には、日本がようやく戦後復興を終えて世界市場に打って出ようとした時代と同じ水準になることを意味しています。その年、ブラジルの国民一人あたりのGDPは、一昨年の韓国とほぼ同じ。こんな世界の中で日本は、今までと同じことを続けて行くだけではだめ、変わっていかなくてはならないんです。
変化が求められることの一つとして、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトが挙げられます。
再生可能エネルギーは不安定で課題が多いとも言われますが、その課題は、大規模で使う場合やエネルギーを遠くまで運ばなくてはならない場合に当てはまることです。しかし大規模の電力供給が止まったとした時、地域に小規模の風力や太陽光、その地域を流れる川から引いた水力などを活用した代替エネルギーを用意することで、バックアップの体制を用意することは可能です。携帯電話の基地局は山間地などの僻地にもあり、そういった場所でのバックアップとしての活用も考えられますし、家畜を育てる際に使う暖房用にペレットストーブをたくと同時に火力発電することも、小規模だったら比較的早く導入することができます。
つまり、それぞれの地域の状況に合わせて、その地域でエネルギーをつくり使うことを、日本はもっと進めていいのではないかと思うのです。