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「除染」 詳細解説

読み:
じょせん
英名:
Decontamination

2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う津波によって、福島県の東京電力福島第1原子力発電所は大きな被害を受けた。事故により放出された放射性物質は、同県や近隣の県にとどまらず、東北・関東地方をはじめとする広い範囲へと拡散した。その拡散状況は単純なものではなく、雨や風などの気象条件により、原発から遠く離れた場所にも多くの放射性物質が降下した。その結果、地面や植物、建物、道路などの表面に付いたり、側溝に集まったりした放射性物質が発する放射線によって、一般環境や農作物への被害が生じている。このように拡散した放射性物質による被ばく量を低減する対策のことを、除染と呼ぶ。

具体的には、放射性物質を取り除く、さえぎる、遠ざけるという3つの方法がある。「取り除く」すなわち除去は、放射性物質が付いた表面の土を削り取ることや、草木の枝葉や落ち葉の除去、建物など構造物の表面洗浄などによって、放射性物質を身のまわりから取り除く作業だ。「さえぎる」すなわち遮蔽は、放射性物質の付いた表土と下層の土を入れ替えたり、コンクリートや土で覆ったりして放射線をさえぎる。最後の「遠ざける」は、離れるほど放射線の強さが弱くなるという放射性物質の性質を利用して、放射性物質の周囲を立入禁止にするなどして人の被ばく量を下げる方法だ。

これらの作業を効率的に進めるため、同年8月に放射性物質汚染対処特別措置法が成立し、2012年1月に全面施行した。福島第1原発の事故で拡散した放射性物質で汚染された土壌や廃棄物の処理を、国の責任で行うことなどを定めている。環境大臣は、国が作業を実施する地域を「除染特別地域」として指定し、地方自治体の意見を聞いて実施計画を立てた上で作業を行う。また、放射性物質による環境汚染の状況について、重点的に調査測定をすることが必要な地域を「汚染状況重点調査地域」として指定する。さらに、国ががれきなど汚染された廃棄物の収集・運搬・保管・処分を実施する地域を「汚染廃棄物対策地域」として指定する。

汚染状況重点調査地域に指定された市町村は、長期的な年間追加被ばく量の目標値である年間1ミリシーベルト以下を目指して、子どもの生活環境を優先しながら、地域ごとに除染を進める。実際には、放射線量の高さや人口密度などを勘案して、区域や対象物に優先順位を付けて行う。環境省は、放射性物質汚染対処特措法に基づく除染の内容を具体的に示すとともに、推奨する内容を加えた「除染関係ガイドライン」を公表している。ガイドラインは全4編から成り、汚染状況重点調査地域内における汚染状況の調査測定方法、除染など措置、除去した土壌の収集・運搬、除去した土壌の保管のあり方を示している。

同省はまた、2012年10月に「除染推進パッケージ」をまとめた。作業の加速化と住民の不安解消を図ることが目的で、福島環境再生事務所への権限委譲や、同意取得業務の民間委託の拡充、人材確保、地元と連携した農地での作業、関係府省間の連携強化、補助金の概算払いなどについて定めている。

一方、除染に対しては、その効果自体を疑う声や、地表など目に見えるところから下水などへ流したりほかの場所へ移したりするだけではないのかという指摘が、一部の研究者や市民などから上がっている。

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