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「低炭素社会」 詳細解説

読み:
ていたんそしゃかい
英名:
Low Carbon Society

地球温暖化は、自然環境や社会環境に大きな影響を及ぼす。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2007年に公表した第4次評価報告書で、100年後の世界全体の平均気温は、最悪の場合で4.0度上昇すると予測している。地球温暖化を防止するためには、その原因とされる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を削減し、自然が吸収できる量以内にとどめる(カーボン・ニュートラル)ことが必要だ。産業界、市民、行政など社会のあらゆる立場にいる人が、行動や意志決定において、低炭素エネルギーの導入や省エネルギー、3Rの推進などにより、CO2の排出を最小化する(カーボン・ミニマム)ための配慮を徹底する社会システムが、低炭素社会だ。低炭素社会の基本的理念としては、1) カーボン・ミニマムに加えて、2) 豊かさを実感できる簡素な暮らしへの志向、3) 自然との共生、があるとされる。

低炭素社会の実現には、移動、居住・就業空間、消費者選択、産業活動、農業、森林、都市など、社会のあらゆる場面でそれを目指して行動することが求められる。地球環境研究総合推進費による戦略的研究「脱温暖化2050プロジェクト」が、2008年5月に「低炭素社会に向けた12の方策」を報告した。同プロジェクトは2007年2月に、「我が国が、2050年までにCO2の排出量を1990年比で70%削減し、豊かで質の高い低炭素社会を構築することは可能である」という結論を示しており、それを実現するための具体的な手段を提案したものだ。前年までの分析結果をもとに、いつ、どのような手順で、どんな技術や社会システム変革を導入すればよく、それを支援する政策にはどのようなものがあるかを、整合性を持つ次の12の方策としてまとめ、対策モデルと合わせて削減効果を定量的に把握している。

1) 快適さを逃さない住まいと事務所、2) トップランナー機器を貸借する暮らし、3) 安心でおいしい旬産旬消型農業、4) 森林と共生できる暮らし、5) 人と地球に責任を持つ産業・事業活動、6) 滑らかで無駄のない物流活動、7) 歩いて暮らせるまちづくり、8) カーボン・ミニマム系統電力、9) 太陽と風の地産地消、10) 次世代エネルギー供給、11) 「見える化」で賢い選択、12)低炭素社会の担い手づくり。また、とくにエネルギー需要側での削減努力が重要であると指摘。削減分担(2000年比)を、産業部門で13%から15%、民生部門で21%から24%、運輸部門で19%から20%、エネルギー転換によって35%から41%と算出している。

福田首相は2008年6月に行った講演「『低炭素社会・日本』をめざして」の中で、日本の2050年までの長期目標として、現状比で60%から80%の削減を掲げ、「世界に誇れるような低炭素社会の実現を目指す」と表明。実現に向けた具体的な政策として、1) 太陽電池やCCS(CO2隔離貯留)技術、次世代原子力発電技術などの革新技術の開発と再生可能エネルギーや省エネなど既存先進技術の普及、2) 排出量取引の導入や税制のグリーン化など国全体を低炭素化へ動かしていくための仕組みづくり、3) 林業の振興をはじめとする地方の活躍、4) 国民主役の低炭素化―の4つの柱をあげた。そして、同年7月に開催される北海道洞爺湖サミット(G8サミット)やその関連会合などの場で、クールアース構想やセクター別アプローチなどの手法とともに、世界に低炭素社会への変革を呼びかけた。また、国として低炭素社会を目指すための行動計画も策定される見込みだ。

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