自動車が原因となって起きる公害のこと。自動車による公害の中でも、国が対策に力を入れているのが大気汚染だ。わが国は世界最大の自動車生産・輸出国のひとつである半面、自動車の排気ガスに含まれる物質による大気の汚染が社会問題を引き起こした歴史をもつ。大気汚染を低減するため、国は環境基本法に基づき、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準である環境基準を設定している。環境基準が設定されている大気汚染物質は、一酸化炭素(CO)・二酸化硫黄(SO2)・二酸化窒素(NO2)・浮遊粒子状物質(SPM)・光化学オキシダント(Ox)だ。都道府県知事などは環境基準の達成・維持に関する状況を常時監視(モニタリング)して、その結果を環境大臣に毎年報告する。
自動車1台ごとの対策としては、大気汚染防止法に基づき、PM・NOx・非メタン炭化水素(NMHC)・COについて自動車排出ガス量の許容限度が定められている。また、自動車燃料の性状と、燃料に含まれる鉛・硫黄・ベンゼン・MTBEなどの許容限度も定められている。さらに、道路運送車両法に基づく保安基準により排出ガス基準が設定されており、この基準を満たさなければ新規登録を受けて公道を走行することはできない。このほかに、自動車NOX・PM法による規制を実施している地域もある。近年は、粒径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質(PM2.5)や、ベンゼンなどの有害大気汚染物質による健康への影響、二酸化炭素(CO2)による地球温暖化への影響などが問題となっている。
一方、自動車から発生する騒音については、環境基本法により道路に面する地域の環境基準が定められている。また、自動車単体から発生する騒音の大きさの限度値を環境大臣が定めている。さらに、多くの地方自治体が、騒音規制法と振動規制法に基づき、騒音と振動に関する指定地域と基準値を設定している。このほかの自動車による公害として、自動車の増加に伴う交通渋滞や、駐車場不足による路上駐車、廃車の不法投棄などがある。