地球温暖化などの環境問題を解決するためには、社会経済システムを、企業や市民、行政などすべての主体が環境に配慮した行動をとるような姿に変えていくことが必要だ。環境問題の解決に金融機能を使い、役立てていく取り組みがグリーン金融だ。環境金融とも呼ばれる。グリーン金融には、銀行などの金融機関によるグリーン金融商品の開発や、環境配慮経営に対する金利の優遇など、いろいろなかたちがある。
グリーン金融の考え方や取り組みが広がった背景には、欧米でのSRI(社会的責任投資)の普及がある。収益などの財務的観点だけでなく、環境、人権、労働をはじめとする社会問題に取り組むなど、CSR(企業の社会的責任)に熱心な企業に対して投資する。日本でも1999年に初めてエコファンドができて以来、金融機関がグリーン金融に取り組むようになり、地銀や大手行がグリーン金融商品を発売した。しかし、日本のSRI市場の規模は1兆円に満たず、欧米に比べると小さい。しかも、その大半が個人投資家向けで、欧米で主力の年金基金の割合は少ない。こうした状況を好転させるため、グリーン金融の拡大に向けて政府や地方自治体が支援に力を入れている。
環境省が設置した「環境と金融に関する懇談会」は、2005年に「環境等に配慮した『お金』の流れの拡大に向けて」を公表した。その中で、企業、金融機関、機関投資家、個人投資家・預金者、行政の各主体に期待される役割を提言した。また、政府は2008年7月に閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」で、グリーン金融の範囲と種類を明らかにするとともに、金融機関による環境関連融資やエコファンドなどの先進取組事例集をつくる方針を示した。
その後、環境省が設置した日本版環境金融行動原則起草委員会(起草委員会)は、2011年10月に「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(日本版環境金融行動原則)」を策定した。持続可能な社会を形成するために、銀行や保険・証券会社などが果たすべき責任や役割のあり方と方向性を、行動指針としてまとめている。
一方、地方自治体も、グリーン金融を支援する独自の取り組みに力を入れている。東京都は、企業と市民の環境配慮行動を促進する環境金融プロジェクトを2005年に開始し、2009年から「エコ金融プロジェクト」として本格的な取り扱いを始めている。また、大阪府は「グリーン・ファイナンス」というホームページを開設し、金融機関によるグリーン金融商品や、府による融資・補助金を紹介している。
グリーン金融はSRIだけでなく、地域社会や環境保全、福祉などの活動を行う市民団体や、社会起業家への融資を目的とする非営利バンク、コミュニティファンドも多い。コミュニティファンドは、市民出資などにより民間資金を集めて、環境保全などの社会的事業に投融資する受け皿だ。まちづくりを軸とした、市民の手によるグリーン金融の流れが本格化することが期待されている。