2024年2月28日(水)に、第45回エコ×エネ・カフェ『「ダイバーシティから考える環境とエネルギーの共生」~無意識の偏見:アンコンシャス・バイアスを越えて~』をオンラインで開催しました。
第45回目の開催となる今回は、株式会社J-POWERビジネスサービス総務部・人財開発センター、国家資格キャリアコンサルタントの三輪 秀弘さんをゲストに迎え、ファシリテーターのBe-Nature School代表 森雅浩さんと共に、ダイバーシティについて考えました。
(上)
森 雅浩(もり まさひろ)氏
有限会社ビーネイチャー 代表取締役
Be-Nature School 代表
(下)
三輪 秀弘(みわ ひでひろ)氏
株式会社J-POWER ビジネスサービス総務部・人財開発センター、国家資格キャリアコンサルタント
【目次】
①:エコロジーとエネルギーの両立する社会をめざして
②:ダイバーシティからインクルージョンへ
③:ぺちゃくちゃタイム
④:クロージング
坂田さん(以下、坂田):
J-POWER(電源開発株式会社)では、1998年に策定した企業理念のひとつである「わたしたちは人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する」の下、「環境との調和をはかり、地域の信頼に生きる」の信条に基づいて「エコ×エネ・カフェ」を開催しています。
当社は、環境・社会・地域への配慮と企業価値の向上を同時に実現し、日本と世界の持続的な発展に貢献することを目指し、「サステナビリティ基本方針」を定め、その推進を図る観点からも社会貢献活動の取り組みを進めております。
その中で、エコロジーとエネルギー双方のバランスがとれた社会の実現には、エネルギーと自然環境を相反する存在ではなく“つながり” として捉え、どちらも大切にする心と技術を育てることが必要だと考えており、様々なバックグラウンドを持った人々が関わり、多様な価値観を尊重し、一緒に考え行動していくことを大切にしています。
そこで今回は、「ダイバーシティ」という観点から、エコとエネについて一緒に考えていきます。今日はぜひ、リラックスして対話に参加していただきたいと思います。
J-POWER(電源開発株式会社)広報部
坂田 奈寧子(さかた ななこ)氏
森さんから、参加しているみなさんに簡単な意識調査の呼びかけがありました。
問1:ダイバーシティというと何を連想しますか?(複数選択)
1: お台場の商業施設
2: 国際的な会社の職場
3: 少数派・マイノリティーとの共存
4: 活発で自由な雰囲気
5:その他
「少数派・マイノリティーとの共存」が一番多く、8割以上の投票がありました。
問2:インクルージョンという言葉を知っていますか?(単一選択)
1: いま、まさに取り組んでいる
2: 聞いた事はある
3: 初めて聞いた
半数以上が「聞いた事はある」そうで、「いま、まさに取り組んでいる」という方もいらっしゃいました。
森さん(以下、森):
今回のゲスト三輪さんにお話しいただく前に、なぜ電力会社であるJ-POWER がダイバーシティに取り組むのか、J-POWER(電源開発株式会社)人事労務部 人事室 ダイバーシティ推進タスクの向吉あやかさんからのお話です。
J-POWER(電源開発株式会社)人事労務部 人事室
ダイバーシティ推進タスク 向吉あやか(むこよし あやか)氏
向吉さん(以下、向吉):
現在J-POWERでは、ダイバーシティの推進に力を注いでいます。その背景には、社会的要請の高まりがあり、東京証券取引所の「コーポレート・ガバナンスコード」のほか、経済産業省の指針などがあります。
また、SDGsも、「誰一人取り残さない」世界の実現を目指しているものなのですが、そこにはダイバーシティ&インクルージョンの考えが根底に含まれています。持続可能な発展とダイバーシティ推進は切っても切れない関係ですし、社会は様々な意味で多様性の確保を求めています。
向吉:
ダイバーシティに取り組むことは、企業価値を高めることにもつながります。J-POWERでは、コーポレート・ガバナンスコードなどに基づき、ダイバーシティの推進に関する専任の組織を作り、女性・外国人および経験者採用社員の役員登用や、男性の育休取得などについて、具体的な数値目標を掲げ、目標達成に向けて取り組んでいます。
向吉:
具体的には、ライフイベントとの両立支援として男性社員の育休取得促進のための勉強会、女性社員の就労支援として社員同士のネットワークづくりや相談会開催の他、障がいのある方の採用やLGBTQに関する課題についても取り組んでいます。
森:
ありがとうございます。この後ゲストの三輪さんにご登場いただきますが、ダイバーシティの観点から見て向吉さんが入社した頃と今とで会社が変わったと感じる点はありますか?
向吉:
私が入社した15年くらい前は、ダイバーシティという概念も一般的でなく、女性社員も本当に少なかったです。今は女性社員が活躍しやすくなる取り組みや相談、 研修の場などが増えてきており、当時と比較するとだいぶ変わってきているとと実感しています。
森:
三輪さんの時代はどうでしたか?
三輪さん(以下、三輪):
私が入社したのは40年以上前です。その頃入社した社員は「電発マン」と呼ばれていました。このことからもわかるように、電力業界は圧倒的に男性が多かったです。
今、ダイバーシティ推進といえば女性に対する取り組みが増えているように感じられますが、できるだけ多様な人財を取り込んでいこうという時代になってきたと感じています。そういった観点で、ダイバーシティからエコとエネについて考えていこうと思います。
三輪:
エネルギーと環境の共生をめざす活動を行うことは「人を大切にする」ことにつながります。そして、人を大切にするベースには、あらゆる人を受け容れるダイバーシティとインクルージョンがあります。しかし、無意識の偏見があるとダイバーシティを受け容れることはできません。そこで、アンコンシャス・バイアスを自覚し対処できるようになることが大切です。
まずは、みなさんの身近なところで人財の多様化をイメージしながら考えてみてください。
三輪:
なぜダイバーシティが必要なのでしょうか?第一に、ダイバーシティとは企業価値を高めるための経営戦略と言えます。
少子高齢化により労働人口が減り続けている中でも、働き手を確保する必要があります。グローバルな競争の激化によりグローバル人財も確保しなければいけません。また、従来の大量生産型成長モデルには限界があり、不確実性は増しています。
時代の変化により、従来のやり方は通用しなくなりました。性差のことを考えても、働く人が男性ばかりではこの先立ち行かなくなります。
多様な人財の能力を活かし最大限に引き出す事で高いパフォーマンスを生み出すことが、ダイバーシティの目的です。
三輪:
さらにダイバーシティの推進には、イノベーションの促進など様々なメリットがあります。異なる分野の知識や経験、価値観から新しい発想が生まれ、新たなイノベーションを生み出すことができます。
「ジェンダード・イノベーション」の市場規模は10兆円と言われています。例えば、女性特有の健康問題に着目した製品として最近話題になっている「フェムテック」やその男性版「メイルテック」がそれにあたります。
そして、ダイバーシティを促進することで人財獲得力やリスク管理能力が向上します。実際、女性取締役が多い企業の方が株式パフォーマンスは良く、レジリエンスが高い傾向にあります。
三輪:
エネルギーと環境の共生の観点からも、ダイバーシティには大きな意義があります。環境問題の根底にあるのは人を大切にすること、すなわち人間らしく生きる基本的な人権を大切にすることです。環境が悪ければ、憲法で保証されている最低限の人間らしい生活もできません。そして、その権利を守るために人を大切にするという循環です。
エネルギーと環境の共生に向けた企業活動をするためには、一人ひとりの人権を尊重し、多様な個性を認め合うことが必要です。そしてあらゆる人を巻き込んだ企業活動を行うには、ダイバーシティとインクルージョンを推進することが重要となります。