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第45回エコ×エネ・カフェ 『「ダイバーシティから考える環境とエネルギーの共生」~無意識の偏見:アンコンシャス・バイアスを越えて~』

  • 2024年3月19日
  • 緑のgoo編集部

ダイバーシティからインクルージョンへ

三輪:
では逆に、多様性がないと、どうなってしまうのでしょうか?

多様性がないと「集団浅慮(せんりょ)」を生むリスクが高くなります。これは組織の構成員が集団維持にエネルギーを注力するあまり、意思決定の質が低下することで、自分たちの大義を優先して意思決定を正当化したり、その場の大勢の意見や雰囲気に流されたりするようなことです。

例えば1986年冬に起きたチャレンジャー号の爆発事故では、ロケット推進機を作ったサイオコール社が低温発射の爆発リスクを再三警告していたにもかかわらずNASAが強行した結果、72秒後に爆発し飛行士7人全員が亡くなりました。

一般人が初めて宇宙に行くということで注目されていたという大義のために、NASAが反対意見を封じ、功を急いだために起きた悲劇です。太平洋戦争時の日本陸軍で、空気を支配することに長けたリーダーがイエスマンを巻き込んで暴走したのも集団浅慮の代表事例です。

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三輪:
職場や組織におけるダイバーシティについて考えてみましょう。今のあなたの職場や学校は多様性を尊重しあえていますか?あなたやあなたの部下・後輩は会議で自由闊達(かったつ)に意見が言えていますか?

リーダーが目指すダイバーシティとは、ただ多様性があるというだけではなく、それを尊重しあえる文化をつくりあげる事です。多様なものは、受け容れてはじめて力になります。集団浅慮が残っていれば、いくら多様性があってもそれを活かすことはできません。

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三輪:
また、多様性にも様々な種類があります。性別や国籍などのわかりやすいものだけでなく、働く環境(育児や介護、闘病をしながら働く)、や宗教などの深層的な多様性もあります。一人ひとりの感じ方は違うので、これからのリーダーには多様な人財を活かすマネジメント力が必要となります。

ダイバーシティには4つのステップがあります。最初は違いに対して抵抗し、次はせっかく違いがあるのにそれを同化させようとします。

1980年代の男女雇用機会均等法の時、女性を男性に同化させようとするような動きがありました。その次は違う人たちだけを分離しながら活かす、その次にようやく、違いに価値を置き、互いに違いを受け容れながら活かすインクルージョンにたどり着きます。

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三輪:
多様性を考えるにあたって生じるのが、境界線(フォルトライン)問題です。多様性を一面的にとらえるのではなく、複数次元の多様性を取り入れることで強靭な組織ができあがります。目指すのは、多様な属性や特質を持つ人々が、組織内で活かされ、その能力を十分に発揮しながら、一体となって相乗効果を発揮できている状態。つまりインクルージョンです。

例えるなら、ダイバーシティはフルーツバスケット。それぞれの良さは出せていますが、混じり合っていないので相乗効果は不十分です。それに対してインクルージョンはミックスジュース、個々の良さが他者の良さを引き立てています。

どのフルーツをどのくらい混ぜるかで無限の可能性が生まれ、混ぜることでパフォーマンスが最大化するのです。私たちはダイバーシティの先にあるインクルージョンを目指さなければいけないと思っています。

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ダイバーシティを阻むアンコンシャス・バイアス

三輪:
インクルージョンに必要なのは、リーダーはメンバー、一人ひとりの異なる特性を尊重し、その能力が十分に発揮できるような職場文化をつくることです。

そのためには偏りのない視点でメンバーの多様性を尊重できることや、メンバーが安心して自由闊達に意見が言えるようにすること、そしてアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への対応が必要です。制度だけが整っていても、人の心の中にアンコンシャス・バイアスがあっては多様性を活かせません。

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三輪:
誰もが持っているアンコンシャス・バイアスにはどのように対処すれば良いのでしょうか。まずはこのアンコンシャス・バイアスチェックをしてみてください。

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三輪:
アンコンシャス・バイアスは無意識のうちに生じることなので、気づくのは難しいです。人間が意識できる部分は6%しかないので、無意識に判断してしまうのは仕方ありません。私たちの脳は1秒に1100万件の情報を受け取りそのうち40件を瞬時に処理しますが、これは無意識が判断しているからできることです。また、心理的に自分を守ろうとする防衛心が働いたり、今までの経験や環境の影響を受けたりすることもあります。

まずは自分の中にアンコンシャス・バイアスがあるということを認識してもらいたいと思います。そこで今から簡単なワークをします。今から読み上げることをよく聞いて、その後の質問に答えてください。

“田中さんの実家はりんご農家で、仕送りがありました。田中さんはりんごを50個持っています。そこで田中さんはBさんにりんごを10個あげました。次にCさんに10個あげました。するとCさんはお礼に、みかんを10個くれました。田中さんは嬉しくなり、残りのりんご 10個でジャムをつくり、Cさんへプレゼントしました。”

今読み上げた中に「田中さん」は何回出てきましたか?ほとんどの人はりんごの個数は気にしていても「田中さん」の回数は気にしませんよね。問題文を聞いて「この問題は個数の問題だ」と無意識に思ってしまうことがバイアスなのです。また、次のようなワークもあります。

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参加者:
外科医は女医さんではないでしょうか?

三輪:
そうなんです。しかし私は最初に読んだ時、無意識に外科医は男性だと思っていたので「どういうことだろう?」と思ってしまいました。また、あるスポーツチームの「北海道は開拓者の大地だ」というキャッチコピーが問題になったこともあります。先住者からすれば、北海道は先住民族の大地ですよね。感じ方は立場によっても個人の考え方によっても違います。

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三輪:
アンコンシャス・バイアスはさまざまな問題をもたらします。諦めやストレスが増え、そういった組織はパフォーマンスが落ち、離職者が増えます。無意識のことなので気づきにくいですが、気づくには一旦立ち止まることが有効です。相手の様子に敏感になったり、自分を客観視することで気づきを得たりすることにもつながります。

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三輪:
「普通こうだろう」「そんなの当たり前」「どうせできっこない」私たちはこんな言葉をよく使ってしまいます。無意識のうちに価値観や能力を決めつけ、「いいからやれ」「◯◯ならできて当然」と押し付けてしまうのですよね。アンコンシャス・バイアスは、このように決めつけや押し付けとして表れます。

アンコンシャス・バイアスに対処するには、瞬時の判断を、一旦止めて「本当にそう?」「そもそも何が目的?」と立ち止まって考えることです。そして何より大切なのは、相手と対話をすることです。

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