緑のgooは2007年より、利用していただいて発生した収益の一部を環境保護を目的とする団体へ寄付してまいりました。
2018年度は、日本自然保護協会へ寄付させていただきます。
日本自然保護協会(NACS-J)の活動や自然環境保護に関する情報をお届けします。
「サシバ」という鳥をご存じですか? 里やまで人間の近くに暮らす猛禽類です。身近な場所に暮らすサシバですが、日本にいるのは繁殖期で、冬は東南アジアなどに渡っていきます。日本、そして海を渡った越冬地でどんな暮らしをしているのか? なぜ遠くまで渡るのか? 近年少しずつサシバの生態が明らかになってきています。
渡りをする日本のタカの中で最も人気があるサシバ。世界のサシバの仲間(サシバ属)にはサシバのほかに、アフリカサシバ(アフリカ)、メジロサシバ(南アジア)、チャバネサシバ(東南アジア)が知られています。
いずれも熱帯地方に生息しており、サシバもまた、南西諸島から東南アジアにかけて越冬することから、サシバ属4種は南方起源のグループと考えらます。しかし、サシバだけが温帯~冷温帯地方で繁殖するために大規模な渡りを行います。渡りの中継地では、日本だけでなく、台湾、タイ、マレーシア、フィリピンなどの各国で渡りの観察が行われています。
しかし、今このサシバが減少しています。渡りの際に通過する沖縄県宮古島ではその確認数が減少し(図2)、第6回自然環境保全基礎調査鳥類繁殖分布調査(図3)では、繁殖が確認、または可能性のある3次メッシュが1974-78年の233メッシュから、97-02年には147メッシュに激減しており、06年12月に改定された環境省レッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類として指定されました。
関東地方でソメイヨシノの開花のニュースが聞かれる3月下旬ごろから、半年ぶりに越冬地から日本各地の里やまに舞い戻ってきたサシバの目撃情報が聞かれます。
繁殖地である日本の里やまには一足先に雄が到達し、雄はなわばり防衛をしながら雌を待つようです。雌の到着後、求愛給餌と交尾、そして巣づくりが始められます。巣は、狩場となる水田などの開けた面に接した林の中のアカマツやスギなどの針葉樹や枝ぶりのよいスダジイやコナラなどの広葉樹に架けられます。巣の大きさはカラスの巣よりも少し大きく直径60cmほどです。
4月下旬から5月上旬にかけて通常2~4個の卵が産下されますが多くは3卵です。抱卵・抱雛は雌の役目で、1日のうち雄が短時間の交代を数回行います。産卵から約1カ月後の5月下旬から6月上旬にかけて雛が孵化します。育雛初期までは雄がもっぱら餌運びをしますが、雛が成長するにつれて、雌雄で餌運びに忙しくなります。
孵化から約35日前後が経過した6月下旬から7月上旬にかけて雛は巣立ち始めます。巣立ち直後は、営巣地周辺で親からの給餌を受けます。その後しばらくして、親子ともに営巣地を離れますが、本格的に渡りが始まるまでの生息地やそこでの生態はよく分かっていません。おそらく森林性の小動物を狩りながらほとんど林内から出ない暮らしをしているのでしょう。
9月中旬から10月中旬にかけて、成鳥およびその年生まれの幼鳥が群れをなして南へ渡ります。日本各地の渡りの個体数は「タカの渡り全国ネットワーク」のウェブサイトで知ることができます。