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雪と氷の性質を知る

  • 2019年1月15日
  • NACS-J

2種類ある「雪」と「氷」

『広辞苑』(第4版)をひもとくと、「雪」は「水蒸気が空中で昇華し結晶となって降る白いもの」と書かれています。 しかし、地上に落ちて積もった雪(=積雪)もまた通常は雪と呼ばれますから、雪には「降雪」と「積雪」の2種類があることになります。 さらに「氷」の項を見ると、「水が氷点下の温度で固体状態(→凍結)になったもの」とあります。 しかし、積雪は圧縮(→圧密)すると氷になります。従って、氷には「凍結氷」と「圧密氷」の2種類があります。

水の分子が規則正しく並んでできる雪の結晶

037A_代表的な扇状六花の雪結晶
写真A 代表的な扇状六花の雪結晶

雪と氷の化学式は、いずれもH2Oでできていて、物質としては全く同じ「水」です。雪は、降雪であれ積雪であれ、雲の中で水蒸気状態の水(H2O)がくっついた氷の結晶が出発点となります。マイナス気温の雲の中で大変小さな氷の結晶となって現れ、次第にきれいな雪結晶に成長するのです。

では、雪の結晶はなぜ美しい六角形をしているのでしょうか? その秘密は、氷の結晶を構成している水分子の配列にあります。1つの水分子に注目すると、酸素原子(O)と、2つの水素原子(H)で形成されています。隣には4つの水分子があり、水素原子を介してつながります。これを直線で結ぶと正四面体になります(写真B)。

037B_水分子の結合で現れる正四面体
写真B 水分子の結合で現れる正四面体

こうして、たくさんの水分子が規則的に連結したもの(写真C)を真上から見ると、六角形の亀甲模様が現れます(写真D)。
 水分子(H2O)が空中でバラバラの状態が水蒸気(気体)で、規則的につながった状態が氷(固体)、ある程度の数が不規則につながったものが水(液体)と考えるといいでしょう。

037C_正四面体がつながって六角形
写真C  正四面体がつながって六角形がつくられる。写真は雪結晶の原子模型の一部をクローズアップしたもの。水分子は、1つの酸素原子(大きな玉)と2つの水素原子(小さい玉)で構成される。水素原子を介して、互いに約104°の角度をなす4方向にある4個の水分子と連結とする。

037D_雪結晶の原子模型
写真D 雪結晶の原子模型(4方向から撮影)。雪博士と呼ばれた中谷宇吉郎先生の「中谷宇吉郎 雪の科学館」(石川県加賀市)から依頼を受けて、松田氏が製作。

粉雪→湿雪→ボタン雪→みぞれ→最後は雨に

雪の結晶は、雲の中で成長し、重くなると雪片となり落下し始めます。通常、地上に近い大気ほど温度は高いので、雪片の温度は落下しながら上昇します。0℃以上の気温となった大気中を落下すれば、雪片は大気との接触部から解け始め、湿った雪に変わります。水を含んだ雪片は水の表面張力で互いにくっつきやすいので、落下途中で集合するとボタン雪になります。ボタン雪がさらに落下し続けるとみぞれに変わり、やがて雪片全部が解けてしまえば、もちろん雨になってしまいます。南極のような厳寒の地では、地上付近で大変小さな氷の結晶が生成されてダイヤモンド・ダストが降ります。

日本の場合は、冬の間、マイナス気温が続く北海道や本州の山岳地帯で水を含まない粉雪が降ります。0℃に近いプラス気温が多い北陸地方で降る雪は、水を含んだ重い湿雪やボタン雪。さらに気温の高い太平洋岸では、みぞれやそれが解けた冷たい雨が降ることが多いのです。しかし、雪片の形や降り方は気温のほか、湿度や風の影響も受けるので、各地域でさまざまな種類の雪が降ります。

この冬、雪が降りだしたら、虫眼鏡を持って外に出て、舞い降りた新鮮な雪片を袖に受けて覗いてみてください。その際、息がかかるとすぐに解けてしまうので、吐く息がかからないように注意しましょう。東京ですら、さまざまなきれいな雪の結晶を観察することができます。

文:松田益義(株式会社MTS雪氷研究所)/写真:A:古川義純、B・C・D:松田益義

出典:日本自然保護協会会報『自然保護』

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