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2018年度は、日本自然保護協会へ寄付させていただきます。
日本自然保護協会(NACS-J)の活動や自然環境保護に関する情報をお届けします。

なぜ、シカはここまで増えたのか?

  • 2018年12月6日
  • NACS-J

今、日本各地でニホンジカが急増しています。
生態系の攪乱、私たちの暮らしに重要な水源である森の破壊、農林業への被害、などさまざまな影響を及ぼすため、日本の森にとってシカの急増は大きな問題となっています。

前回記事:ニホンジカってどんな生きもの? 

ニホンジカは、そもそもは人よりも古くから日本列島に息づいてきた在来の野生動物です。シカがここ20-30年で爆発的に急増した理由として考えられている主な要因を紹介します。
シカコラム2-1

生物としての増えやすさ

シカコラム2-2
増えても減らない!?
多くの動物は、数が増えると餌やすみかが足りなくなって自然と数が減っていくものです。ところがシカは、1000種以上もの植物を餌にできること、広範囲を移動すること、大きな群れをつくることなどによって、どんどん数を増やしていくことができます。
シカコラム2-3
高い繁殖率
健康な雌ジカは満1歳で繁殖に加わり、2歳の春には出産します。若い世代が繁殖に加われるため、生息環境が良くなったり死亡率が下がると急激に個体数が増えていきます。

個体数を減らす人為的圧力の減少

シカコラム2-4
狩猟者の減少
シカにとって、人間による捕獲が最も大きい個体数減少要因でした。高齢化や山村地域の過疎化にともない、20世紀の終わりにかけて狩猟者数は減少の一途をたどりました。その後も低いレベルでの推移が続き、狩猟によるシカ個体数の抑制は効きづらい状況となっています。
シカコラム2-5
保護政策
戦中・戦後の混乱期に密猟を含めた乱獲がシカを激減させました。それ以前にも各地でいくつかの保護策はとられていましたが、1948年になると全国的に雌ジカが狩猟獣から外される保護政策が始まりました。1978年には雄ジカの捕獲数も1日1頭に制限されるなど保護管理が行われシカの数はV字回復を遂げました。回復後も保護政策は1990年ごろまで続きました。

増えやすい環境の拡大

シカコラム2-6
拡大造林
1950年代半ば以降のエネルギー革命により、薪炭を生産する薪炭林の需要が低下するとともに、高度経済成長の下、建材用として成長の早いスギやヒノキの需要が増しました。結果、天然林や薪炭林を人工林へと変えていく「拡大造林」政策が取られました。政策は1996年まで続き、天然林などの伐採でできた当時の草地は、シカの好ましい環境となりました。
シカコラム2-7
過疎化
現在は農村・山村から人がいなくなることで耕作放棄地が増え、そこが拡大造林時代の草地の代わりにシカにとって格好の生息場所となっています。耕作放棄地は、森の林床を食べ尽くす勢いのシカの、新天地となったのです。

個体数を減らす自然環境的圧力の減少

シカコラム2-8
温暖化
日本の平均気温は100年あたり約1.1℃の割合で上昇しており、各地の積雪量が減る傾向にあります。それに伴い雪に弱いシカが生息できる範囲が増え、新たな餌場を求めて尾瀬などの豪雪地帯や南アルプスなど3000mを超す高山にまで分布域を広げています。
シカコラム2-9
捕食者の絶滅
かつて日本中の森林に生息していたオオカミは、シカの主要な捕食者でした。ところが明治時代における駆除政策をはじめとする各地での乱獲により、北海道のエゾオオカミは19世紀末に、本州のニホンオオカミは1905年を最後に、姿を確認できなくなりました。

出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.565(2018年9・10月号)

シカと人の未来のためのプロジェクト2018

ニホンジカの増加は、日本の森における最大の課題です。
いま各地で対策が行なわれていますが、農林業の被害や生態系の破壊など、被害が確認できるほど数が増えてしまっては、捕獲はもちろん、傷ついた森林管理に膨大なコストが必要となります。そのため、森林が長く健全であるためには、シカが増える前の “低密度” の状態で管理することが、不可欠ではないかと考えます。

そこで、日本自然保護協会では、群馬県の赤谷の森をフィールドに、2017年度に引き続き、“低密度管理”のための捕獲試験を行います。野生動物と共存する新しい技術として、この取り組みへのみなさまのご支援をお願いします。

詳しくはhttps://www.nacsj.or.jp/2018/09/12715/をご覧ください。

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