森:とにかくデータ量が多いという印象ですが、ここでLCAが実際に使われた事例を紹介したいと思います。
田原:カーボンフットプリントという制度があります。食品から工業製品までさまざまな製品がカーボンフットプリントを取っていて、製品に付いているラベルに温室効果ガスの排出量が表示されています。試行プロジェクトで行われたビールの場合、295gという表示があり、内訳は原料調達で半分くらい、商品販売で1/4くらい、商品生産で1/4くらいとなっています。この温室効果ガスの排出量はLCAで計算されています。
森:ここでみなさん、テーブルのお菓子「ポリッピー」の袋を見てみてください。カーボンフットプリントの表示があります。140gと書いてあるので、これをつくるのに140gのCO2が排出されるということになります。ほかにはどんな商品がありますか?
田原:残念ながら、私が確認する限りはこのポリッピーだけです。
森:とても良いことなのに、なぜやらなくなってしまったのでしょうか。
田原:企業にとっては、ネガティブな情報を出すのは難しいのかもしれません。逆に言うと、消費者がこの情報を見て選択をしているとわかれば、状況は変わってくると思います。海外ではかなり進んでいますが、日本はまだその段階ではないのかもしれません。
森:カーボンフットプリントは、国をあげての取り組みですよね。
田原:2006年くらいから3年間のナショナルプロジェクトで、現在は1,500くらいの製品がカーボンフットプリントを取っています。公開しているのは700件くらいですが、販売されているかというと、そうではないんですね。