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2万4800円の工場見学!? “常陸野ネストビール”の木内酒造がビール・ウイスキー・日本酒全部載せのバスツアーで提供する贅沢体験の数々

  • 2024年5月2日
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日本におけるクラフトビールの黎明期からトップレベルの人気を博し、いまやウイスキーなども手掛けるビッグネームが「常陸野ネストビール」の木内酒造。その姿勢は、“大和魂”を重視しながら、実は海外交流にも超積極的。大胆な“攻め”の社風も特徴です。

 

そのポリシーが、個性派ビールやウイスキー事業の原動力にもなっているのですが、今度は“バー付きバスツアー”というユニークな事業を開始。お酒好きにはたまらない、贅沢体験の数々をいち早く体験してきました。

↑「BAR BUS HITACHINO(バーバス常陸野)」の車内。バータイムでは、同社の様々なお酒(炭酸水もあり)を自由に楽しめる。

 

ウイスキー、ビール、日本酒のつくり方を1日でチェック

「バーバス常陸野」は朝10時に東京駅を出発し、木内酒造が誇るビール、日本酒、ウイスキーの製造拠点を中心に見学し、19時半を目安につくば駅に到着するという日帰りのツアー。

↑この日のドリンクは、「常陸野ネストビール」の「ホワイトエール」「ラガー1823」や、「日の丸ウイスキー KOME」「日の丸ジン 蔵風土」など。「BAR BUS HITACHINO」と描かれたタンブラーは、オリジナルのミニエコバッグとともに持ち帰れる。

 

車内バータイムでのふるまい酒のほか、直営店でのランチとディナーも含み、大人1名2万4800円(税込)。移動はお任せで、多ジャンルの酒について学ぶことができ、ときに里山など大自然の景観に癒され、グルメ三昧! しかもオリジナルのお土産付きと、けっして高くないツアーだといえるでしょう。

↑最初に到着したのは、ウイスキーなどをつくる八郷(やさと)蒸溜所。敷地の畑には「金子ゴールデン」(木内酒造が積極栽培している、日本原産のビール用大麦)が植えられ、6月上〜中旬ごろには収穫を迎える。

 

茨城県石岡市の八郷は良質な水に恵まれ、また盆地のため昼夜の寒暖差が大きく、熟成地としても理想的。また八郷地区は日本の里山100選に選ばれるなど日本の原風景が残る地域で、蒸溜所からは東の富士と呼ばれる筑波山の凛々しい眺望を望みます。

↑売店が併設された、一般開放もしているビジターセンター。ここでは木内酒造の歴史のほか、ウイスキーの素材や製造工程を展示パネルとともに学べる。

 

【ウイスキー】この蒸溜所だけの独自仕様がもりだくさん

ウイスキーは概して、製麦→糖化→ろ過→発酵→蒸溜→熟成→ブレンド(ヴァッテド)→瓶詰といった工程でつくられますが、それぞれ順に追ってスタッフが案内。特に木内酒造ならではのポイントというと、まず仕込み用タンクの独自性が挙げられます。

↑手前が「ろ過器」で奥が「糖化槽」。ウイスキーとしては珍しく、大麦麦芽以外に小麦、米、そばなど多様な原料の使用を想定しており、その糖化温度を管理しやすくするために、分けて導入している。

 

また、「培養タンク」や「発酵タンク」も特徴的。前者は自社培養酵母を造るための設備で、菌によってはバニラやココナッツのような風味が生まれるのだとか。そして後者は、ステンレス製のほかに木製も使用し、なおかつ材質を変えることで、より多彩な原酒をつくれるようになっています。

↑左がスロベニア産とフランス産のミックスオーク材、右がフランス産のアカシア材を用いた発酵タンク。イタリアのガロベット社製だ。

 

蒸溜所のシンボルともいえる「ポットスチル」(単式蒸溜器)は、スコットランドの名門・フォーサイス社製で、ストレートヘッド(ボディとネックが直線)の形状。ラインアームはやや下向きで、濃厚で香り高い酒質を狙っていることがわかります。

↑釜から上部に伸びる部分(ここはストレートヘッド)と、折れ曲がって伸びるパイプ(ラインアーム)の角度などが酒質を決めるひとつの要素に。写真手前が「初溜釜」、奥が「再溜釜」。

 

また、こちらは連続式蒸溜機を付設したハイブリッドスチルとなっていて、蒸溜室の奥にはその連続式も設置されています。一般的に、連続式蒸溜機はグレーン原酒用の設備となりますが、八郷蒸溜所では個性的なグレーン原酒をつくるために、ポットスチルでもグレーン原酒を蒸溜。この点もかなり独特です。

↑この連続式蒸溜機はジンのほか、グレーンウイスキーも蒸溜する予定だという。

 

そして熟成樽の材質にもこだわりが随所に。ジャパニーズウイスキーは日本原産の木材を珍重しますが、同社ではその定番であるミズナラ樽はあえて使いません。一方で重宝されているのはサクラ樽。サクラの熟成樽が特別珍しいというわけではありませんが、蒸溜所がある石岡市には県内屈指の桜の名所「常陸風土記の丘」があり、その点もサクラ樽を重用する理由です。

 

 

↑樽材によって異なる風味を、原酒のボトルと材質を並べることで紹介。左端がサクラの鏡板。

 

見学のあとは、ウイスキーをテイスティングしながらのランチ。樽や熟成年月などが異なる3種の原酒を飲み比べ、個性がどう変わるのかを自らの鼻と舌で体験します。

↑左から、2種の自社酵母を使ったバーボン樽の23ヶ月熟成。ジャマイカのラム樽で熟成をかけた32ヶ月もの。国産小麦を51%使用し、ラム樽で30ヶ月熟成したグレーンウイスキー。

 

味わえる料理は、蒸溜所内に2023年に開業した「常陸野ハム BARREL SMOKE」で製造する自家製シャルキュトリ(ハムやソーセージなどの加工肉)の盛り合わせと、自家製フォカッチャです。同社では近隣の養豚農家と提携し、飼料の一部に麦芽の搾りかすなどを使用し育てた特別かつ高品質な「常陸野ポーク」を一頭丸ごと購入。そのうえで自社加工し、燻製にもウイスキー熟成で使用した樽のチップでスモークしています。

↑シャルキュトリはポルケッタ、ビアシンケン、ピスタチオ入りハムなど様々。地元ブランド「常陸秋そば」のそば粉と天然酵母による自家製フォカッチャも美味!

 

なお木内酒造では「石岡の蔵」という、国内の蒸溜所でも珍しい製麦施設をもっており、ここではスコットランドの伝統製法であるフロアモルティング(いまや現地でも希少な、ハンドメイドの製麦)も行っているとか。このツアーにその見学は含まれていませんが、いつか見てみたいものです。

 

【ビール】海外で最も有名なクラフト“フクロウビール”の総本山

次にバスが向かったのは、「常陸野ネストビール」と「常陸野ハイボール」がつくられている、那珂(なか)市の額田(ぬかだ)醸造所。ウイスキーもビールも麦のお酒ではあるものの、製造は途中から大きく異なることが見学によって深く理解できます。

↑まずは、麦の種類や副原料の説明からスタート。

 

ウイスキーは、麦汁を発酵させたもろみを蒸溜するお酒。蒸溜によって濃度の高いクリアな酒質へ磨き、長期の樽熟成で風味付けを行いますが、ビールは麦汁にホップを添加して発酵、短期熟成という手順を踏むフレッシュな(なかには長期熟成ビールもあります)醸造酒であるため、より麦汁の方向性が味わいを大きく左右します。

↑“ビールの魂”と呼ばれるホップを、乾燥させペレット状にしたもの。防腐や香り付けに必要な、ある種最も味を左右する主原料だ。

 

それはつまり、ビールはウイスキー以上に麦の品種や焙煎度合い、副原料などが重要ということ。そのため額田醸造所では、まず原料の紹介に始まり、次に設備や各工程の解説へ進みます。

↑手前から糖化用のマッシュタン(タンク)と、煮沸用のケトル。ほかに濾過用のロイタータン、凝集物の除去用のワールプール。これらを使って麦汁を移動し、発酵工程へ。

 

澄んだ麦汁は、ワールプールから発酵タンクへ移動させます。この時点では、まだお酒になっていない麦ジュースの状態。酵母を加えて発酵させることにより炭酸ガスを含んだビールとなり、その後ラガー(下面発酵ビール)の場合は約1ヶ月間低温熟成させます。

↑発酵タンクがズラリ。1本6000リットルですが、クラフトビールのマイクロブルワリーとしてはかなり巨大(醸造所の生産量は1年約3000klで、330mlボトル900万本分)。

 

ちなみに「常陸野ネストビール」は、世界におけるジャパニーズクラフトビールとしては日本屈指の知名度を誇るブランドです。それは、他社に先駆けて海外展開を進めてきたから。いまや生産量の約半分が海を渡り、輸出先は40ヶ国以上。NYのマンハッタンではフクロウマークのトラックが走る姿を見られます。

↑見学後は、もちろん試飲もあり。写真のボトルはサンプルで、この日はタップから注いだ「ヒストリー1602」という限定のエール(上面発酵)ビールをいただいた。

 

テイスティング時には、ホップ品種の違いを、ペレットを比較しながら確認できます。個性が魅力のクラフトビールは、よりホップの使い方が重要。その違いを学ぶチャンスもここでは得られます。

↑右端のビールが「ヒストリー1602」。こちらは秋田県横手市産のホップ(生のチヌークホップなどを使用)と、地元那珂市産の「金子ゴールデン」を一部使用した、フローラルな香りが特徴だ。

 

【日本酒】蔵でも貫かれるバリエ―ション豊かな酒造り

そしてバスは、木内酒造の祖業である日本酒の蔵へ。醸造酒であるため製法の概要はビールと似ていますが、麦芽でなく蒸した米で仕込むなど、素材の種類や加工法には大きな違いがあります。

↑ブルワリーの額田醸造所と同じ那珂市にある「鴻巣の蔵」。木内酒造は江戸時代の1823(文政6)年に木内儀兵衛がこの地で酒造りを始め、「菊盛」などの銘酒を生み出してきた。

 

特に日本酒の場合、味の方向性を大きく左右するのが精米歩合(米を削る度合い)であり、食用米のコシヒカリと、酒米で有名な山田錦は何が違うのか(あえてコシヒカリで醸す日本酒もあります)、そして精米歩合が酒質をどう変えるのか、など実物を見ながら学べます。

↑山田錦と、その山田錦と日本最古の原生酒米・雄町(おまち)をルーツに持つ愛山を、精米歩合別に展示。削るぶんだけ小さくなる、粒の大きさに注目したい。

 

ほかにも、日本酒とビールの違いに挙げられるのが麹(こうじ)の有無(なかには、麴を使うビールもあります)。麹とは穀物に種麹(麹菌や、もやしともいいます)を付着させた日本ならではの発酵原料のことで、日本酒ではこの麹を作る「製麹」が最も重要な工程ともいわれます。

↑製麹したあとの米麹。左が、伝統的に日本酒や醤油、味噌などに用いられる「黄麹」で、右が焼酎に頻用される「白麹」(木内酒造の「淡雫(あわしずく)」など、白麹で醸す日本酒もある)。

 

この酒蔵でも、木内酒造ならではの製法が見られます。わかりやすい点を挙げるとすれば、発泡性をもたせる日本酒の貯蔵槽にビール用のステンレスタンクを使っていること。

↑右に見える「ビアサーマルタンク」が、発泡性日本酒用の貯蔵タンク。ビールを手掛ける木内酒造ならではといえるだろう。

 

その一方、仕込み蔵には木桶で仕込まれた米焼酎なども。自由な発想から、ときに伝統的に、そして革新的な製法で、バリエ―ション豊かな酒造りを行っていることがわかります。

↑こちらは、伝統的な杉の木桶。

 

製麹を行う麹室(こうじむろ)など、いくつか立ち入りできない場所もありますが、一連の醸造工程を見学したあとは、バーとショップが併設された「ききさけ処」に移動して試飲を体験。

↑左がフルーティーな「菊姫 純米大吟醸」で、右がきめ細かい発泡が楽しめる「菊盛 純米吟醸にごり酒 春一輪」

 

「ききさけ処」では多彩な日本酒のほかに「常陸野ネストビール」や焼酎などもラインナップしており、銘柄によっては試飲も可能。一般開放しているので、今回のバスツアーでなくても足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

ディナーで社長が語ったモノづくりの流儀

見学の全行程を終えたラストには、「鴻巣の蔵」内にあるレストラン「蔵+蕎麦な嘉屋」でのディナーが待っていました。建物は、1924(大正15)年に建てられた蔵をリノベーションした空間。メニューは蕎麦のほか、使われる野菜や肉はすべて茨城県産の素材を厳選し、常陸野の美食と自慢の日本酒とのペアリングを楽しめます。

↑ツアーで提供される料理はおまかせの特別コースとなり、こちらはそのメインとなる「常陸野ポーク」のロースト。発酵玉ネギのソース、赤からし水菜、かぼちゃのピューレで味わう。

 

コースの料理は一皿ひと皿が、木内酒造の日本酒とのペアリングを考えて構成され、ラストには名物の蕎麦が登場。この蕎麦ももちろん「常陸秋そば」で、同社では「金子ゴールデン」の裏作期間を有効的に活用する意味で栽培しています。

↑「木内家秘伝のつけけんちん蕎麦」

 

「蔵+蕎麦な嘉屋」が提供するそばの割合は、外一(そば粉とつなぎの割合が10:1となる、九割そばの一種)。今回味わったメニューは、木内家に伝わるけんちん汁をつけ汁にしたもので、酒粕と味噌の風味、野菜の旨みがとけこんだコクのある味が、香り高い蕎麦にマッチします。

 

このディナーには木内酒造代表の木内敏之社長も加わり、バスツアーの狙いや今後の展望、使命感などを聞かせてくれました。

↑木内家九代目当主の敏之社長。日本のクラフトビール黎明期の1995年に「常陸野ネストビール」を立ち上げ、1996年より醸造開始。2016年にはウイスキーづくりも始めるなど、チャレンジングな同社をけん引する存在。

 

「よそが真似できないことをやるというのが、うちの理念のひとつにあり、このバスツアーもそうです。風土の景観や恵みを楽しんでいただきながら、私たちのモノづくりを知っていただきたいと思いました。

 

ただ、いろいろな冒険をしてきたなかで、私が次に注力したいのは日本酒なんです。理由は、自分自身が還暦を迎えたことで、あらためて祖業に向き合いたいと思ったから。また、蔵元の数が年々減少しているなど、市場が縮小しているから。であれば、うちならではのユニークな取り組みで業界を盛り上げたいと思ったんです。

 

ですから、このツアーでは最後に皆さんを『蔵+蕎麦な嘉屋』でお迎えし、ここではウイスキーやビールではなく日本酒を存分に味わっていただきたい。これからの木内酒造は、日本酒にもより注目ください!」(木内社長)

 

「バーバス常陸野」は運行開始を記念して5月末までは平日限定割引が適用となり、不定期で国内外のトップシェフによるプレミアムな料理を味わえるガストロノミーツアーが開催されたり、美術館でのアート鑑賞などを組み合わせた見学工程が行われたりと、特別な企画も。お酒好きはもちろん、旅好きの人も要チェックです!

 

「BAR BUS HITACHINO」
運行予定:木・土・祝(9:30受付)10:00発〜19:30着予定
料金:大人1名 2万4800円(税込)※運行開始記念により平日限定で大人1名2万1800円(税込)を2024年5月末まで実施
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