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自動運転で何が起きるか?~社会を変える交通革新、その現状と課題~
-「第26回エコ×エネ・カフェ」(前編)

  • 2017年11月8日
  • 緑のgoo編集部

自動運転は公共交通の救世主になるか

森:家の近くを歩くなと言われても…どうすればいいのでしょうか。
川本:自宅のすぐ近くまで来てくれる公共交通「ラストワンマイル」というシステムの必要性が、世界的に言われています。
森:日本ではまだまだですが、世界では進んでいるのですか?
川本: 世界的にもまだまだこれからです。バス並みの運賃で運用しようとすると、ドライバーの人件費がネックになります。そこで自動運転です。海外では実例も生まれていて、自動走行車が公道を走る実験もされています。

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森:自動運転が可能になると、ドライバーの人件費も抑えられて、ラストワンマイルが実現するのではないかということですね。
川本:ドライバーにかかる経費が1年で約700万円で、固定費として毎年かかります。自動運転を導入すれば、導入コストがかかっても回収していけるという考えです。
森:これらの自動運転は今どの程度まで使われているんですか?
川本: 例えばフランス製のEZ10は、安全を確保しながら走るとなると低速になってしまうなど、まだ実験段階のレベルですね。他の車両ですが、街中を走っているものに乗った時、ぶつかってしまったこともありました。全体的にまだまだですね。

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立ちはだかる法規制の壁

森:そして、実は法的な問題もあるんですよね
川本:そうなんです。単に技術が進歩すればできるという問題ではなく、自動運転に関してはジュネーブ道路交通条約という国際法があります。

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川本:端的に言えば「運転者がいないとダメ」です。運転に責任を持つ人がいなくては公道を走れないということが国際法で決められているんですね。しかし、国際法より国内法や州法が優先され、またアメリカでは州によっては連邦法よりも州の法律の方が優先されるので、自動運転が認められている州もあります。そして、いつかは国際法も変えていかなくてはならないということも国連でも話されたりしています。
森:フランスなど、特別に許されているような地域もあるんですか?
川本:同じような内容で欧州だけを対象にしたウィーン条約というのもあります。このような条約があるのは、より狭い地域の法律が優先されるので、そこから始めてEUなどの枠組みを変えていこうという考えだからです。
森:日本は規制緩和が進んでいるのでしょうか?

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川本:日本でも法の改正があり、ハンドルやアクセル、ブレーキペダルがない車でも実証実験として公道を走ることができるようになりました。速度制限や緊急停止ボタンを付けるなどの規制はありますが、ブレーキペダルのように車両の中で操作するものがなくても、自動制御すればいいという考えです。
森:車のデザインにも影響する話ですね。規制緩和がありつつも、無人の公共交通機関が具体的に進むことはまだ難しく、実証実験段階なんですね。

マイカー自動運転の課題

川本:公共交通で自動運転をするのではなくて、自分専用の自動運転車を買えばいいという意見もありますが、すぐの実現は難しいでしょう。
森: どういう部分が難しいのですか?
川本:一般的に道路交通では、「この地域ではこういう風に割り込めばあまり怒られない」という慣習など、「あうんの呼吸」のような明文化されていないルールのようなものがありますが、自動運転はすぐには学習できません。

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川本:例えば、アメリカでは「4Way」という信号のない交差点があります。そこでは先に着いた人が先に出られるというルールがありますが、交差点には先に着いたけれどたまたま歩行者がいて発車できずに次の優先順位の車が発進したとき、自分は次に発進できるのか、それとも最下位の順位になるのかという問題が起こります。この場合は相手の様子を伺いながら、確認のために少しだけ前に出たりして判断するのですが、こういった明確なルールがないようなことは、自動運転には難しいですね。
森: 自動運転車ではAIが判断するようになるのでしょうか?
川本:実際の生活では「運転しているのは怖そうなおじさんだな」とか、そういう部分で判断していますよね。でも、そういうところはAIではなかなかできません。「交通ルールがこうだから」では解決できない問題です。

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川本:合流するために制限速度よりも少し速く走らなければならない場合もあれば、アメリカのスクールゾーンのように取り締まりが厳しく、速度制限を厳格に守るのが当たり前の場所もあります。そういう判断も、少なくとも今の自動運転車にはハードルが高いことです。また、飛び出してきた子どもを避けようとすると反対側にいるおばあさんにぶつかってしまいそうなとき、どちらを優先するのか。そういう判断のプログラミングも難しいですね。

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川本:有名な「トロッコ問題」というのがあります。暴走するトロッコが線路上の5人に衝突しそうな時、5人を助けるために1人を犠牲にするのは許されるのかという問題です。過去の判例では最終的には被害を最小にした方がいいという判断があるそうなのですが、それを判断する力を自動運転車に学習させられるのかという問題があります。現在の、車の運転から学習するタイプの自動運転車ではまだまだそういう判断のハードルが高いなと思います。

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