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第21回 「電力自由化ってなに?~日本のエネルギー未来を見通す~」竹内純子 氏

  • 2016年3月17日
  • 緑のgoo編集部
J-POWER エコ×エネ・カフェ

素朴な疑問

森:いろいろな疑問があります。例えば、契約した会社が倒産したら、停電になってしまうのですか?

竹内:自分の家だけ止まってしまうということはありません。送配電の事業者は公的な部分を担いますので、これまでの電力会社が担っていた安定供給の責務は、引き続き彼らが担うことになりますので心配はありません。

森:発電方法を選んで、買うことはできるのでしょうか?

竹内:エコでグリーンな電気を選びたいという方が多いですが、実際に使う電気は電線で混ざって届きます。でも、再生可能エネルギーを応援したい、だから、そのコストの部分を応援している、と思って選択していただければと思います。

森:すると、小売の会社は、再生可能エネルギーを使っています、と宣伝することができるけれど、事業者に電源構成の開示義務は課せられなかったんですよね?

竹内:はい。電源構成によって購入する会社を選びたい人が多いと思いますが、今回の自由化では義務ではありません。理由は、内訳のパーセンテージの計算が非常に手間暇かかるということ、そしてコストにも掛かってくるという現実的問題です。ただ、再生可能エネルギーが多いポートフォリオを組み、それを売りにする事業者は、積極的に宣伝すればいいわけです。消費者から表示義務を求める声があがってくれば、今後法律も変わる可能性があるでしょう。

J-POWER藤木さん

森:テレビで、例えばドイツでは再生可能エネルギーを選んで買うことができるというのを見たことがあります。

竹内:そうですね。海外の話が出ましたが、では、先行している諸外国で、自由化によって電力価格が低下したかを見てみましょう。結論だけいうと、最初は低下したけれど上昇に転じた国が実は多いです。

自由化による電気料金の引き下げ効果
自由化による電気料金の引き下げ効果

竹内:例えばドイツの家庭用電力で、上昇の要因を分析すると、燃料費の影響はあまり大きくないことはわかっています。自由化によって料金が上がったかどうかはわからないけれども、自由化によって電気料金が引き下げられたことが明確に証明できている国はないというのも事実です。短期的には、抱き合わせ価格での販売などが起こり、電気料金が安くなることもあるかもしれませんが、長期的にみてどうなるかは、わからない状況です。

電力自由化のメリット・デメリット

森:竹内さんからみた、自由化のメリットはなんでしょう?

竹内:選択肢ができたこと、そして競争が起こることで、例えば電力会社とガス会社が一緒に燃料を仕入れるといった、さまざまな工夫が起こる可能性が生まれることです。ただし、デメリットもあります。

自由化のメリット/デメリットのまとめ
自由化のメリット/デメリットのまとめ

竹内:一番大きいデメリットは、中長期的な供給力の不足でしょう。何故なら、電気のインフラは作るのに膨大な投資が必要ですし、時間もかかりますが、この先市場がどうなるかわからないものに対して、事業者は投資をしたがらないと考えられるからです。特に、大きな投資を必要とする原子力発電は、もし今後日本が国としてそれを必要としたとしても、新規建設は難しいでしょう。

もう一つは、他のエネルギー政策との矛盾です。例えば今までは3段階料金制度という制度がありました。これまでは、電気の消費量が少ないほうが安い単価で電気を使えるような価格設定になっていました。低所得世帯保護と省エネの促進という目的からです。けれども、新規参入の電気会社は、たくさん使ってもらう方が、儲かるという考えから、たくさん使う人が得をするという価格設定のサービスを提供されようとしています。これは、温暖化政策に明らかにバッティングします。

会場

藤木:先日、パリで行われた気候変動の会議(COP21)でCO2削減に向けた合意がされましたが、今のお話ですと、現在の電力自由化の政策は、省エネにも逆行しているように感じますね。

竹内:エネルギー政策には3E(安定供給、経済性、環境適合性)のバランスが大事と言われますが、自由化は経済性にだけ注目した政策ですから、気候変動に対応するには他の政策を打つしかありません。先日の気候変動の国際会議では、日本も2013年と比べて2030年には26%のCO2を削減するという高い目標を掲げました。これは、相当の省エネが必要になりますが、それなのに「電気をたくさん使った方がお得」なメニューがたくさんできるという、矛盾が生じているのです。

森:竹内さんは電力自由化には、反対ということですか?

竹内:反対という訳ではないですが、今やるのはどうだろうかと感じますね。

森:電力について、いつ、どんな選択をしていけばいいのか。とても難しい問題ですね。

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