サイト内
ウェブ

「ヤンバルクイナ」 詳細解説

読み:
やんばるくいな
英名:
Okinawa Rail

1981年、沖縄県北部で山階鳥類研究所の研究員が不思議な鳥を発見した。体長は約30cm。あざやかな赤色をしたくちばしは太くて短く、やはり赤くて太い足で素早く走る。頭の上から背中にかけては暗い褐色をしており、顔とのどのあたりが黒く、胸から腹にかけてと顔の一部に黒と白の美しい縞模様がある。なにより特異なのはその丸くて短い羽で、他の鳥のように空を飛ぶことができない点だ。その後の研究で、この鳥はクイナという水鳥の一種で、発見された「やんばるの森」にしか生息していないことがわかり、日本で唯一の飛べない新種の鳥、「ヤンバルクイナ」として発表された。

ヤンバルクイナは正式に発見される前から地元の人に目撃され、「ヤマドウイ」と呼ばれていた。主に樹上をねぐらとし、とても大きな声で鳴き、森林や草地などでカタツムリや昆虫、両生類などを食べて生活する。オスとメスの見た目は大差なく、初夏に繁殖期を迎え、地上に巣を作って1度に4、5個の卵を産む。また、生まれたヒナは真っ黒い色をしている。ヤンバルクイナは発見直後の1982年に天然記念物として国の指定を受けた。しかし、生息数は2005年時点で約700羽ときわめて少なく、交通事故や外来生物による捕食などにより年々減少している。このため、2006年に公表された環境省レッドリストでは絶滅のおそれが高い「絶滅危惧IA類」に指定された。また、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種でもある。

ヤンバルクイナが発見されたやんばるの森は、山岳地帯で森が多く残る「やんばる」にある。イタジイというブナ科の常緑広葉樹に覆われたその豊かな自然は、野生生物の宝庫と呼ばれている。やんばるの森でゆっくりと蓄えられた雨水は、小さな水の流れとなって河口部分にあるマングローブの森へ注ぎ込まれ、サンゴ礁がある海へと流れていく。このように、やんばるの森は山間部や森林だけでなく、沖縄に生きるすべての生物の命を育んでいる。ヤンバルクイナと同じようにやんばるにしか生息していない鳥にノグチゲラが、昆虫にヤンバルテナガコガネなどがいる。

ヤンバルクイナを守るため、環境省は2007年度に「ヤンバルクイナの飼育下繁殖に関する基本方針」を策定。これに基づき「ヤンバルクイナ保護増殖事業」を行っている。ヤンバルクイナの保護について、次の調査などを実施する内容だ。1) 生息状況と生態把握調査、2) 交通事故対策、3) 外来生物の防除、4) 自動撮影カメラによるモニタリング、5) その他。また、2008年度からは飼育下繁殖事業が始まり、保護増殖施設の整備も進められている。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。