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「コウノトリ」 詳細解説

読み:
こうのとり
英名:
Ibis

コウノトリは、コウノトリ目・コウノトリ科に属し、背までの高さ約1m、翼を広げると約2mにもなる大型の鳥だ。国の特別指定天然記念物で、環境省が2006年に見直して公表したレッドリストでは「絶滅危惧IA類」(ごく近い将来における絶滅の危険性がきわめて高い種)に指定されている。体の羽毛は白く、翼のうち風切り羽根の部分が黒い。また、目のまわりと脚は赤い。体重は約4〜5kgで、オスの方がメスよりも大きくなる。肉食性で、ドジョウやフナなどの魚のほか、カエル、バッタなどの小動物も食べる。ヨーロッパやアジアに分布し、樹上に巣をつくる。かつては日本でも繁殖していたが急激に数を減らし、1964年に福井県でヒナがみられたのを最後に、繁殖個体としては絶滅した。狩猟や、河川や湿地の開発などによる生息地の消失、農薬の使用による採餌条件の悪化などの自然環境の変化などが絶滅の原因だ。そして1971年、兵庫県豊岡盆地を最後に国内の野生コウノトリは姿を消し、大陸からごくわずかな数が冬鳥として渡って来るのみという状況が続いた。

しかし、1950年代頃から、兵庫県を中心として官民一体となったコウノトリ保護運動が展開され、文化庁は、1963年からコウノトリ保護増殖のための補助事業を開始。その後、兵庫県、豊岡市、文化庁などの協同により、コウノトリの野生復帰を目指した人工増殖事業が始まり、兵庫県のコウノトリ保護増殖センターでは、中国やロシアから大陸産のコウノトリを導入するなどして増殖に取り組んだ。1999年に開園した兵庫県豊岡市の「兵庫県立コウノトリの郷公園」は、同センターを付属施設として抱え、コウノトリの保護増殖と野生復帰に向けた取り組みを続けている。同市は、日本でのコウノトリの最後の繁殖地があった場所だ。同公園では「コウノトリ野生復帰計画」を策定し、野生生活に必要な能力を高めるための飼育個体への馴化訓練や、生息地になる周辺環境の整備などを地域住民と連携して行った。具体的には、餌場を確保するための水田のビオトープ化や、常時湛水稲作、減農薬栽培、無農薬栽培、田と排水路を繋ぐ魚道の整備、河川の自然再生、営巣木であるマツを確保するための里山林の整備、野生馴化ケージの改修による飛翔空間の確保、衛星追跡システムによる追跡調査、などだ。

こうした取り組みが功を奏して、合わせて100羽近い数のコウノトリが生息している(2008年2月現在)。世界のコウノトリの総数が2000〜3000羽と推定されていることを考えると、非常に多い数といえる。2005年9月、同公園でコウノトリの試験放鳥が実施された。また、放鳥されたコウノトリにヒナが誕生したことも確認された。2007年に1羽、2008年に3羽の合計4羽で、モニター職員による観察が続けられている。試験放鳥は2009年度までの5年間にわたって行われることになっていて、次のどれかの方法で実施される。1) 適切な場所から複数の個体を一斉に放鳥する、2) 風切り羽根の一部を切ったつがいを放鳥拠点で飼育・繁殖後、巣立った幼鳥を自由にさせる、3) 風切り羽根の一部を切った複数のオスとメスを放鳥拠点で飼育し、拠点を認知後に自由にさせる、4) 風切り羽根の一部を切った複数のメスを放鳥拠点で飼育し、飛翔可能な複数のオスを付近に放鳥して繁殖させる。

コウノトリの保護に向けた取り組みとして、2005年日本国際博覧会(愛知万博)では、会期中にテーマ館グローバル・ハウスで「コウノトリ野生復帰プロジェクト」の展示が行われた。また、豊岡市と兵庫県は「コウノトリ未来・国際かいぎ」を共催。豊岡市などが中心となった「こうのとり感謝祭」も行われている。さらに、兵庫県では、コウノトリ野生復帰プロジェクトの一環として、環境優先型の持続可能な地域づくりをめざした「コウノトリ自然博物館構想」を推進している。一方、国や地方自治体によるもの以外では、NGO/NPOや、一部の企業による保護活動がある。また、一般市民による取り組みとして、兵庫県但馬の自然環境保全・再生を支援し、野生復帰を目指す地域の取り組みを応援する「コウノトリファンクラブ」がある。

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