サイト内
ウェブ

「食の安全」 詳細解説

読み:
しょくのあんぜん
英名:
Food Safety

食の安全についてこれほど多くの消費者が関心をもち、担い手に徹底した取り組みが求められている時代はかつてなかっただろう。食の「安全」と「安心」は違う、とよく言われる。安全とは一般に危険のないことや無事なことを意味し、客観的な状態を表現した用語だ。一方、安心とは文字通り、心が安らかな状態であり、人の心や気持ちの安堵を表す主観的な言葉だ。これを食の分野にあてはめると、事業者などが徹底した安全管理の下で加工・製造した食品を、責任をもって提供することで消費者は安心してそれを口にすることができる。半面、いくら安全面を強調しても、消費者の食に対する不安が取り除かれなければ、提供する側のひとりよがりな取り組みに終わる危険性もある。食の安全を消費者の安心につなげていくには、その確保に向けた仕組みをつくってきちんと運用するとともに、食の安全に関する情報が、生産、加工、梱包、流通、調理、廃棄に至るすべての過程で、消費者にわかりやすい形で公開されることが必要だ。

わが国初の食の安全を確保するための制度として、1947年に制定されたのが食品衛生法だ。当初は食中毒の防止などが主な目的だったが、食の安全・安心に対する消費者の要望が強くなるにつれて何度も改正された。保存料、甘味料、着色料、香料などを食品添加物と定め、厚生労働大臣が定めたもの以外の製造、輸入、使用、販売などを原則禁止している。2006年からは、食品中に残留基準が設定されていない農薬などが残留する食品の製造、加工、販売を原則禁止するポジティブリスト制度が始まった。海外で使用されていても、同制度で許可されていない食品添加物は国内で使ってはならず、販売もしてはならない。

また、1950年制定のJAS法は、食品の原産地や原材料に関する情報を消費者に提供するための法律だ。飲食料品などが一定の品質や生産方法でつくられたことを保証する「JAS規格制度」と、原材料や原産地など品質面での表示を義務づける「品質表示基準制度」からなる。同法もたびたび改正され、今では販売される全食品について表示が義務づけられ、産地偽装に対する直罰規定もある。2000年には厚生省(現厚生労働省)が「食の安全推進プラン」を策定し、食品衛生対策の推進と消費者へのわかりやすい情報提供を行う姿勢を示した。そして2003年、食の安全確保に関する基本理念を定めるとともに、リスク管理・評価の手法を導入した食品安全基本法が制定され、内閣府に食品安全委員会が設置された。同年には、牛肉の産地などを流通から生産までさかのぼって調べることのできる「牛肉トレーサビリティ法」もできた。

国際的な流れを見ると、米国で開発された衛生管理システムの「HACCP」は、化学物質や微生物など食の安全確保を阻害する要因を見極め、食中毒の発生などを予防する仕組みだ。FAO/WHO合同食品規格委員会(Codex)はHACCPガイドラインの普及を促進しており、日本でも食品衛生法にHACCPに基づく承認制度が採用されている。一方、食の安全に関するISOマネジメント規格が、2005年に発行した「ISO22000」。HACCPやISO9001などをもとに、食品チェーンに携わる全組織を対象として、食品安全マネジメントシステム確立のための要求事項を定めている。また、農業生産現場で食の安全を確保するため、生産適正化の管理ポイントを整理し、実践・記録する「GAP」という手法もある。

食の安全確保を求める国内外の動きを受けて、政府は食の安全・安心などの消費者行政を一元的に所管する「消費者庁(仮称)」を、2009年9月に発足させる。消費者目線に立った施策の展開が期待されている。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。