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「食品衛生法」 詳細解説

読み:
しょくひんえいせいほう
英名:
Food Sanitation Law

食品衛生法は、終戦直後の1947年12月に制定された法律だ。その目的は、食品の安全性確保のために、公衆衛生の見地から必要な規制などの措置を講ずることで、飲食に由来する衛生上の危害の発生を防ぎ、国民の健康の保護を図ることである。具体的には、食品衛生に関する国、地方自治体、食品事業者の責務や、販売が禁止される食品、添加物の指定、検査、表示や広告などの規格・基準などについて定めている。医薬品・医薬部外品以外のすべての飲食物を対象とし、食品添加物(食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物)や、器具及び容器包装、おもちゃ(乳幼児が接触するおもちゃ)、洗浄剤(野菜、果実又は飲食器の洗浄用)なども法の対象に含まれる。

今日、カロリーベースで約40%を輸入に頼る日本の「食の安全」を確保するため、食品衛生法では、食品の輸入者に対し、「販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、そのつど厚生労働大臣に届け出なければならない。」と定め、輸入届出を行わない食品などについては販売などに用いることはできないとしている。また、輸入時の検査や輸入者の監視指導などを重点的、効果的かつ効率的に実施することを推進し、輸入食品などの一層の安全性確保を図ることを目的として、輸入食品などについて国が行う監視指導の実施に関する計画(輸入食品監視指導計画)を定めることとしている。2007年11月に公表された輸入食品監視指導計画監視結果(2007年4〜9月までの速報値)によると、輸入届出件数は約91万件、輸入重量は約1200万t、検査件数は約10万1000件であり、そのうち違反件数は619件であった。

法律制定当時は、衛生水準がきわめて低く、頻発する食中毒などから健康を守ることに主眼が置かれ、最低限の衛生を確保する性格が強い規制であった。しかし、衛生水準が向上し、健康についての知識が広まった現代においては、食中毒の発生・防止にとどまらず、食の安全や安心を消費者が強く求めるようになった。また、近年、牛海綿状脳症(BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)の発生や、食品表示の偽装、無登録農薬の使用や残留農薬の問題、外国産ダイエット食品による健康被害など、食品の安全性や安心感を大きく揺るがせる事件がたびたび起きた。こうした社会状況を受けて、2003年に食品衛生法の大改正が行われた。

この改正で導入されたのが、「ポジティブリスト制度」だ。食品中に残留基準が設定されていない農薬や、動物用医薬品、飼料添加物などが残留する食品の製造、加工、販売を原則禁止する。従来は、残留基準のない農薬などが食品から見つかっても、それが抗菌性物質以外の物質であれば、食品衛生法による販売規制などはできなかった。しかし、ポジティブリスト制度の導入により、残留基準がない農薬などが食品から見つかった場合、その販売などが禁止される。2005年5月29日から導入された。そのほかの主な改正点は、1) 法の目的に「国民の健康の保護を図る」ことを明記、2) 安全性に問題のある既存添加物の禁止、3) 輸入業者に対する営業禁停止処分規定の創設など監視・検査体制の強化、4) 大規模・広域な食中毒事件などへの調査や報告の制度化、5) 表示義務違反を含む罰則の強化、6) 消費者とのリスクコミュニケーションの導入、7) 総合衛生管理製造過程(HACCP)の更新制の導入、などである。

なお、この改正とほぼ同時期に、食品安全基本法が新たに制定されている。同法は、食品の安全性の確保に関する基本理念を定め、関係者の責務及び役割を明らかにしている。また、基本方針の策定により、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進することなどを目的としている。一方、2008年に入ってからも、中国産冷凍ギョウザが原因とされる健康被害事例が発生するなど、各地で食品に関連した健康被害が相次いでいる。こうした状況を受けて、政府は、新たに「消費者庁」(仮称)を設立して、食品や製品などの安全・安心に関連した行政を一元化する方針を打ち出している。

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