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「排水」 詳細解説

読み:
はいすい
英名:
Drainage

公共用水域に排出される不用な水を排水という。工場などで使用した後に廃棄する水を指して、「廃水」と呼ぶ場合もある。水質汚濁防止法では、規制対象とする施設を定めた上で、それら施設を設置する工場や事業場などを「特定事業場」と定め、そこから出される水を排出水と定義。施設設置者に届出義務を課している。また、湖沼水質保全特別措置法やダイオキシン類対策特別措置法などの法律でも排水を規制している。さらに、地方自治体が条例などで上乗せ規制や横出し規制を行うこともある。

排水規制の対象となる特定事業場の数は、環境省の2005年度調査によると、全体で約29万1000事業所あり、最も多い業種は旅館業の約7万1000で、全体の約24%を占めている。また、特定事業場に対する立入検査は約4万7000件、行政指導は約7000件あり、改善命令は44件、一時停止命令は4件、排水基準違反は14件だった。一方、生活排水は、炊事や洗濯、し尿など日常生活にともなって家庭から出される排水のことで、このうちし尿を除いたものを雑排水と呼ぶ。また、下水道法は、排水を敷地外に排出するための排水管や排水渠(きょ)などの施設を排水設備と定義している。

排水の多くは不純物や有害物質を含み、20世紀に工場からの排水による公害事件が頻発したこともあって、国は水質汚濁防止法に基づく排水基準を省令で定めている。公共用水域に排出水を排出する者は、排水基準を遵守しなければならない。具体的には、人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質を有害物質として定め、それらの有害物質ごとに、全国一律に適用する一律排水基準を設定している。また、一律排水基準を達成することが困難な工場や事業場向けには物質ごとに暫定排水基準を設定している。たとえば、ガラスの着色などに使われるセレンの一律排水基準は0.1mg/lだが、セレン化合物製造業に属する工場・事業場については、2009年1月31日まで0.3mg/lの暫定基準が定められている。

近年の水環境行政における排水規制に関する大きな動きに、亜鉛の排水基準値強化がある。水生生物やその餌となる生物、それらの生息環境を保全するため、国は、行政上の目標値として2003年に亜鉛の環境基準を設定。これを受けて、2006年11月に排水基準を定める省令を改正し、亜鉛の一律排水基準値を2mg/lとするとともに、一部の業種について5mg/lの暫定基準値を定めた。また、2007年6月末で暫定排水基準が切れるほう素・ふっ素・硝酸性窒素に関する基準強化、延長が議論された時、環境省は、温泉旅館などへの規制強化を検討したが、処理施設が高額であるなどの理由から関係業界が規制強化に反対し、現行の暫定排水基準値を延長する方針を示して話題になった。

排水処理技術の向上を目指す取り組みとして、環境省は、環境技術実証モデル事業検討会で非金属元素排水処理技術ワーキンググループ会合を非公開で行っている。同会合では、企業などによる実証試験の結果をもとに、ほう素やふっ素などの非金属元素を含む試験に関する議論を行い、環境省は2技術を承認した。また、2006年度には、同事業の小規模事業場向け有機性排水処理技術分野で、大阪府が実証対象技術を2技術選定している。一方、日本の高い処理技術を、発展途上国など国外における排水処理に活かすため、国立環境研究所などによる調査研究が行われている。

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