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「東京都環境確保条例」 詳細解説

読み:
とうきょうとかんきょうかくほじょうれい
英名:
Tokyo Metropolitan Ordinance on Environmental Preservation

「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(東京都環境確保条例)の前身である「東京都公害防止条例」は、大気汚染や水質汚濁などで悪化していた東京都内の環境を改善するため、公害と福祉を施策の方針に掲げていた美濃部亮吉知事(当時)のかけ声で、工場公害防止条例、騒音防止条例、ばい煙防止条例などを統合し、1969年に制定された。同条例は都の環境関連条例の中でも最大の規模と実効性を有し、工場公害に対しては大きな効果を発揮した。しかし、自動車公害や、1980〜90年代に登場した地球温暖化オゾン層破壌、廃棄物、化学物質などの新たな環境問題への対応については遅れていた。

このため、1999年に都知事が東京都環境審議会に「公害防止条例の改正について」の諮問を行い、同年10月の同審議会で改正に関する「中間のまとめ」が審議され、2000年3月の同審議会で答申が行われた。その後、同年の第4回東京都議会定例会に東京都環境確保条例案が提出され、同年12月15日に可決、成立した。同条例の施行は2001年4月1日だが、化学物質の適正管理と、土壌・地下水汚染の防止に関する規定は同年10月1日に、建築物の環境配慮に関する規定は2002年6月1日に、ディーゼル車の運行禁止に関する規定は2003年10月1日に、それぞれ段階的に施行された。また、同条例に基づく施行規則が、旧公害防止条例施行規則の改正により2001年に制定され、条例同様に段階施行された。

東京都環境確保条例の目的は、大きく分けて1)都民の健康を守ること、2)都民の安全な生活環境を確保すること、3)将来世代に良好な環境を継承することの3つだ。また、同条例は、旧条例で規定されていた公害対策規制に加えて、環境負荷の低減に関する規定と、ディーゼル車を中心とする自動車公害対策が新設、強化・充実されたことを大きな特徴としている。このうち、環境負荷の低減に関しては、事業活動に伴って生ずる二酸化炭素(CO2)やフロンなどの排出抑制を求めるとともに、回収されたフロンの分解、法の規制に先立って義務づけた。また、大規模な建築物の建設に伴う環境負荷を提言するため、延床面積1万?を超える建築物の建築主に建築物環境計画書の提出を義務づけ、その状況を公表する規定を置いている。さらに、大規模な新築や増築マンションの販売広告に、建物の断熱性と設備の省エネ性、建物の長寿命化、みどりの4つの環境性能を示すラベルの表示を義務づける「マンション環境性能表示制度」も実施している。

また、自動車公害対策では、軽油を燃料とするディーゼル自動車対策に重点が置かれ、その排出ガスに含まれる粒子状物質の排出を削減するための規制を定めるとともに、使用燃料も規制し、基準を満たさないトラックやバスなどの車両の通行を禁止した。「ディーゼル車NO作戦」などの東京都のディーゼル車規制は、同条例に基づいて実施されている。また、「自動車環境管理計画書」制度を導入し、低公害車の導入や自動車の使用合理化を事業者に求めたほか、客待ち・荷待ち時のアイドリング・ストップの義務づけや、自動車の販売者への都内で新車を購入する人への環境情報の説明義務などを定めた。
一方、工場公害対策では、規制対象の拡大や基準強化に加えて、化学物質を適正管理するための制度を創設。国のPRTR法が指定する第1種指定化学物質に上乗せした57物質の化学物質について、同法が求める排出量と移動量だけでなく、使用・製造量や製品としての出荷量の届出を求めている。また、土壌や地下水の有害物質汚染を防止する規制や、小規模焼却炉による焼却や野外焼却を禁止する規制を、国に先がけて定めた。

同条例は施行後たびたび改正され、2005年には地球温暖化とヒートアイランド現象の進行に対応するため、「地球温暖化対策計画書制度」を導入。都では1000以上の大規模事業所から5年間の温室効果ガスの削減計画などの提出を受け、その評価結果とともに、温室効果ガス排出量などの集計による統計データが公表されている。また、電気事業者のCO2排出係数の削減を進めるための「エネルギー環境計画書制度」や、「省エネラベリング制度」が創設されたほか、自動車環境管理計画書制度も改正された。さらに、2006年3月にアスベスト関連規制を強化するための改正が行われ、大気汚染防止法と同条例の届出窓口の一本化や、アスベストの飛散防止方法等計画の届出などに関する規定が追加された。

このように制定、発展してきた同条例は、都が制定している最大の環境・公害関連規制であり、その広範・詳細な内容と先進的な規制手法は、他の自治体の規制に大きな影響を与えた。なお、同条例の改正、制定時の注目される動きとして、都が市民の意見を広く聴き、多く採り入れた点がある。同条例案については都環境審議会で議論が行われ、1999年10月に「中間のまとめ」が、2000年3月に最終まとめが公表され、答申が行われたが、都はこれらの過程でNGO/NPOなど市民からの意見を広く募り、その多くを反映するとともに、意見や要望のどこを採用したかについても公表した。たとえば、最終まとめにあたっては、中間まとめを受けて市民が提案した、温暖化対策の充実や自治体版PRTRなどの化学物質管理の強化、循環型社会構築などに関する意見が採用された。また、審議会委員が市民の意見を聴く会が開催されるなど、市民参加に関する配慮がなされ、環境政策形成過程への市民参加の好例として注目された。

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