アゲハチョウの世界: その進化と多様性が、明日25日配本になります。この本はぼくが読みたくて、分子生物学会の元会長も務められた吉川寛先生に書いていただいた本で、ぼくの写真とのコラボになっています。
読んでみると、知っているつもりで知らないことだらけで、難しい分子生物学の話が、アゲハチョウが大好きな吉川先生によってロマンを持ってやさしく語られていて、ぼくにもとても勉強になりました。
ゲノム解析によって、ギフチョウは、ギフチョウ属の祖先種から最初に生まれ、500万年前くらいに大陸で種分化していることなどもわかるそうです。身近なキアゲハも、3000万年ぐらい前に祖先種からナミアゲハとキアゲハの仲間に分化したことが、北米のキアゲハの仲間などとのミトコンドリアDNAの比較解析からわかったそうです。
なぜミトコンドリアDNAの塩基配列を調べて進化の歴史や、その種が分化した年代をかなり正確に知ることができるのかということですら、ぼくは正確には知らなかったことに気がつきました。生物は発生していく過程で、遺伝子を複製していくのですが、その時に多少の間違いが生じ、これが種分化に重要な役割を演じるのですが、間違いを修復する機能もあるそうです。ところがミトコンドリア粒子の中では修復機能が働いていないらしく、DNAの変化率が核ゲノムに比べて5-10倍高いそうです。今世紀に入り、比較的安価にミトコンドリアの遺伝子解析ができるようになり、変異率が大きいミトコンドリア遺伝子の塩基配列を比較することで、数百万年の間に起こった変化を正確に測定することができるようになったのだというのです。
難しい話が中学生や高校生にも理解できる語りぐちで書かれていて、これから分子生物学をやってみたいという学生の入門書としても、役立つのではないかと思います。とくにチョウが好きな人なら、大人も、子供も、あるいは知っているつもりの生物の先生や学者の人も、楽しめて、かつ役立つ本になったと思います。科学は楽しくなければと、再認識しました。
ぼくの写真の方は日本のアゲハは全種、世界のアゲハの1/4ぐらいの種類の生態写真を載せてあります。世界や日本のアゲハチョウの多様性を、写真からも読み取っていただけると嬉しいです。
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