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第44回エコ×エネ・カフェ『「持続可能な社会をつくる森とのつきあい方」~建築の民主化が拓く新たな世界~』

  • 2023年12月25日
  • 緑のgoo編集部

楽しくなければ続かない

森:
ありがとうございます。それではここで本日のゲスト、井上さんにご登場いただきましょう。

井上:
大学で林業を学び、もう20年以上も林業に関わっています。2009年に岡山県西粟倉村へ移住して、生活の全てを森に費やしています。

活動する上で大切にしているのは「正しいより、楽しい」。楽しくなければ何だって続きませんし、持続可能性を考えた時に楽しいということはとても重要だと思います。

SDGsの時代、森林は持続可能性の象徴のように扱われていますが、森林に対して何ができるのか分からず一歩を踏み出せない人、あるいは森林に関する活動をしていても課題が山積で悩んでいる人は多いのではないでしょうか?そうなると、活動モチベーションも下がってしまいます。
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井上:
今日のエコ×エネ・カフェのテーマは『「持続可能な社会をつくる森林とのつきあい方は?」ですが、ここでは「持続可能性な森をつくるための活動モチベーションの持続可能性」を考えてみたいと思います。

まずは「課題を面白がる」ことです。以前つくった、課題から生まれた商品を紹介します。使いにくく商品にならない間伐材にどうやって付加価値をつけて商品にするかと考えた時に、小さく切ればよいというシンプルな発想で木のタイル型床材「ユカハリ」ができました。

そして「ユカハリ」の端材をレーザーカッターで切って、プラモデルのように自分で 仕上げてもらうカトラリーをつくり、これもヒットしました。

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井上:
そして、やりたいことをやる。課題を面白がる中でやりたいことを実行することを徹底しています。

最近ハマっているのが「ちょうどいい材木ラジオ」というポッドキャストです。コロナ禍に趣味で始めたのですが、もう4年続いています。続けていると人気コンテンツになってきて、企業とコラボレーションして公開収録などのイベントも行いました。

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井上:
植林ではなく、「植人」するということも意識しています。ポッドキャストの公開収録で「どうする、愛知の森?」 というイベントを竹中工務店とコラボした時のことです。

最初はトークイベントという依頼でしたが、どうしても企業の皆さんを林業の現場を体験してもらいたくなって、半ば無理やり連れて行ってしまいました。他にも企業研修という形で、実際に森へ行き木を伐り、VUILDが販売するShopBotを使って木製品をプロトタイピングしてもらったりしました。

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未来を変えるVUILDのテクノロジー

井上:
そして、未来は、変えられると信じること。まさにVUILDはこのように考えてできた会社です。CEO秋吉浩気が建築家兼メタアーキテクトで、僕は林業や木材の流通を担当しています。

VUILDは『「いきる」と「つくる」がめぐる社会へ』というビジョンを掲げています。つくることは人間にとって本質的な活動であって、つくることで主体性を獲得し、生きる活力になると考えています。

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井上:
VUILDはデジタルテクノロジーを活用してものづくりを提供している会社ですが、5分野あるサービスのモノづくりの基盤になっているのがShopBotです。ミリ単位の正確な加工は人の手では難しいですが、ShopBotがあれば個別のオーダーに応じたものづくりができます。

切られたものをプラモデルのように組み立てると、これまで見たことのないようなものが出来上がります。うねうねした波状の木材加工は今まで難しくてできませんでしたが、新しいテクノロジーを使ったものづくりに木材の新しい可能性を感じました。

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井上:
VUILDはつくるを取り戻すことを大事にしています。VUILDの提供するものは大量生産ではなく、個人のアイディアを形にすることに長けています。分散型の個別生産を通じて、自分の暮らしを取り戻していくことに挑戦しています。

その象徴的な家が富山県南砺市にあります。地元の杉を使った「まれびとの家」はグッドデザイン賞 金賞を受賞しました。半径15キロ圏内の中で全てが完結しました。御神木を切るところから始まり、地元で住宅をつくっている土建屋さんが導入してくれたShopBotで部材を加工し、みんなでプラモデルみたいにパチパチはめながらつくりました。まさに建築を民主化できたと実感した瞬間でした。

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井上:
つくることを遊びにすることもやっています。東京ミッドタウンで「Picnic Lab」というイベントを開催しました。

イベントで使うための家具をつくった余りの材料を展示したり、ShopBotを使ってその場で加工したりして削ってつくって展示しました。遊びに来た子どもたち自身が場をつくっていく企画です。

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井上:
現在、ShopBotの導入台数は200台ぐらいで、売って終わりではなく、VUILDやオーナーさんの間で、ものづくりのネットワークを構築しています。

基本は自律分散ですが、必要に応じて協調します。何かをつくる時は、それぞれの会社や個人の暗黙知になってしまいがちですが、ShopBotを導入していただいたオーナーさんにはVUILDのノウハウも提供し、よりよいものがつくれるようにゆるく協調しています。

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井上:
小豆島で、オリーブを使った化粧品を製造販売している会社の店舗をつくるプロジェクトでは、施主さん自らが小豆島のヒノキの皮をむいて、地域の中にある製材所で加工して、オリーブ畑で働いてる農園の従業員の方にShopBotの使い方をレクチャーして、施主さんが塗装してという具合に、みんなでつくりました。

最初から自分たちでつくりたかったわけではなかったようですが、いつものノリで「まあ一緒にやりましょう!」と言ってやっていくうちどんどん楽しくなっていったようです。

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井上:
技術がどんどん進化することで仕事が奪われてしまうのではという議論もありますが、逆に職能がアップデートされることでポジティブな変化が起こると考えています。 ものづくりや林業と聞くと作業着の男性を思い浮かべる方も多いと思いますが、ワンピースをきた女性が一人でものづくりをする未来がくるのでは?と思っています。 昔は一人の人が幅広い職域を担っていました。それが経済成長とともに細分化されて、それぞれの領域で生産性や効率性を高めていった歴史があります。

デジタルによる職能の統合で分断が取り戻され、林業と製材をセットでやるのが当たり前になり、将来的には林業をやる人が家までつくるような未来が訪れると思っています。

EMARFというサービスではデータを送るだけで必要な木材のパーツが必要なところに届くので、専門知識がなくても木材のデザインや加工ができます。さらには、接合部が自動で生成されるツールや強度計算もできるように開発を進めています。最近はAIが発達したので、ChatGPTを使うことにより文章や音声で入力するだけで操作ができるツールの開発もしています。

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「いきる」と「つくる」がめぐる社会

井上:
みんなで、つくるを当たり前にしたいという考えから、NESTINGというデジタル家づくりプラットフォームを開発しています。どんな家や部屋にしたいか、ウェブ上で間取りを設計できます。

実際にみんなで家をつくったチャレンジャーな施主さんが直島にいて、施主さんとお友達とVUILDの社員で、2日間で屋根まで仕上げました。もちろん皆さん未経験でしたが「結婚式みたいで楽しかった」と言ってもらえました。

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井上:
このような仕事をしていると、今の林業やものづくりのあり方は正しいのか?と疑問を感じることが多々あります。今の林業は木を切って終わり。平均所得は300万円で100人に1人が死亡する。これは紛争地の傭兵よりも高い死亡率です。政府は、大量生産をすることで生産性を高め、所得を上げることを考えています。しかし僕たちは、大量生産に巻き込まれずに、自分たちの森を守りながら所得も上げられる方法はないかと逆説的に考えています。

林業の人たちに足りないノウハウはデジタルで補って、自分たちで生産して生産性を高める。実証実験を行い、ShopBotなどを使えば少ない投資で所得が倍増できるという試算がでました。

また曲がった丸太等の低質材をバリューアップするために、スマホで撮影するとアウトラインのデータが一瞬でデータ化されるシステムを開発しました。こうすることで、数値化してカタログには掲載できないような不揃いな材料を流通させることができるようになり、ShopBotと組み合わせるて低質材に付加価値を付け商品化ができるようになります。

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井上:
テクノロジーの進化で、林業や森づくりにかかわっていること自体が価値になる時代が到来すると思っています。ですから、地域教育や企業研修で、伐採するところから始めて製材もして、ShopBotを使って自分の好きなものをつくる体験を提供しています。

そして、「まちをつくる」ことから、「森をつくる」こともできないかと考えています。フルーツ栽培が盛んな長野県松川町の廃校の中にShopBotを入れていただいたのですが、地域おこし協力隊の青年がShopBotを使って地域の木材で椅子をつくったことがありました。仲のよいおばちゃんが「足腰が痛い」と言っていたのを聞いて、座ったまま作業ができるように座面が回転する椅子をプレゼントしました。すると、お礼にパンジーの150株がもらえる、物物交換の経済が生まれました。

また、地元の中学校では「デジタル工芸部」を立ち上げ、部活動としてShopBotを使っています。部活動では、地元の図書館にキッズコーナーをつくることにも挑戦しました。中学生がつくっていると司書さんやお役所の人も参加し始めて、結局みんなでつくることになりました。

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井上:
町としては予算を削減できますし、地元の木材を地元の子どもたちが当たり前に使う文化は、自分たちの地域は自分たちでつくる主体性につながります。そして、暮らしをつくることが地域や森をつくることにもつながっていくと思っています。

つくること自体を楽しんでいくことが自分の豊かさになると信じています。「どうすれば儲かるか」より「どうすれば楽しいか」、課題を面白がる、遠慮ぜずにとにかくやる、単にPRをするより現場に連れて行く、そして未来を変えられることを信じる。そんなことを考えていって巻き込むと、自分のマインドやモチベーションが持続するのではないかと思っています。

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