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第15回 「再生可能エネルギーで日本が変わる!?」松本 真由美 氏

  • 2014年3月13日
  • 緑のgoo編集部
J-POWER エコ×エネ・カフェ

全体セッション

ワールドカフェを受けて、全体セッションの時間です。2回の話し合いを経て感じたことや、松本さんへの質問や意見が交換されました。

参加者
松本氏

参加者:エネルギーを学ぶ研究先を見つける上でのアドバイスはありますか?

松本:各分野に詳しい専門家の先生がたくさんいらっしゃいますので、シンポジウム等に参加して、面白い研究をしている先生にアプローチしてみるとよいと思います。

参加者:火力発電や原子力発電についての松本さんのご意見は?

参加者
参加者


松本:
火力発電は基幹発電として非常に重要です。
現在、原子力発電が稼働していない分を、化石燃料を追加で購入し補っていますが、追加の燃料費として一日100億円ものお金が国外に流れています。温室効果ガスの排出が増えているという状況でもあります。化石燃料は有限ですから、大事に、高効率に使っていくことが非常に重要です。原子力発電については世論的に今直ぐに止めるべきいう方もたくさんいらっしゃいます。
NPO法人・国際環境経済研究所では、2年間にわたって、震災後のエネルギー戦略について産業界の方にインタビューする企画をおこないました。鉄鋼や化学、自動車産業などエネルギー多消費産業では、原子力発電を再稼働していない状況で電気料金が値上がりし、生産拠点を海外に移す話が進められているそうです。
そうなると国内のものづくりを守ることができず、失業問題が生じてきます。生きていく上では、失業も重要な問題として考える必要があります。
日本のエネルギー自給率はわずか4%で、安全保障の観点からもリスクを考えなくてはなりません。そういう意味では、今すぐに原子力発電を止めてすべて廃炉、ゼロにすることはリスクが高いと思っています。私も今後、再生可能エネルギーの最大限の普及を進めていきたいと切に願っていますが、現時点ではまだ、大型水力発電を除くと再生可能エネルギー電源は全体のまだ1.6%であり、基幹電源になっていくには時間がかかります。各エネルギーにはメリット・デメリットがあり、すべての選択肢はリスクを伴っています。現実的にリスクをどう捉えて選択していけばいいのか。再生可能エネルギーを増やしながら、長い目でベストミックスを考えていくことが大切だと思っています。

参加者:東京に相応しい再生可能エネルギーは何でしょうか?

松本:東京は土地に制約がありますので、再生可能エネルギーだけで発電するというより、再生可能エネルギーとコジェネレーションとを組み合わせて供給する開発が適しているように思います。例えば、田町駅東口は、病院や港区の設備等を移転整備する再開発が進められていますが、ICT(情報通信技術)を使った需給最適化システムであるセネムス(SENEMS)を核としたスマートエネルギーネットワークを活用して、複数の建物とエネルギーセンター双方のエネルギーの最適化を図る計画です。太陽熱、太陽光など再生可能エネルギーを積極的に導入し、分散型エネルギーシステムから出る電気と熱をオンサイトで高効率に利用するというものです。それから、ビルやマンションなどの屋上を太陽光発電で有効利用できると良いですね。

参加者
参加者

参加者:海外と比べて、日本は再生可能エネルギーについて国民の理解度が低いと思います。メディアの伝え方も問題があると思いますが、そこをどう考えますか。

松本:同じニュースでも、各メディアの伝え方が違っています。各メディアの報道姿勢を見比べみるのも面白いと思います。

森:コミュニケーションは、エネルギーとは直接関係なさそうに思えますけれど・・・

松本:エネルギー問題とコミュニケーションは両輪の関係にあるものだと思っています。例えば、原子力発電の再稼働についても、住民の理解を得るプロセスにおいてはコミュニケーションが重要になります。

参加者
参加者

その他、会場からは以下のような声が上げられました。

「自分が暮らしている地域の資源について知り、それを活用してできることを考えていけば、どの地域でも再生可能エネルギーを進めることができるのではないかと思いました」、「自分たちの住んでいる地域の再生可能エネルギーのポテンシャルを知ることができるといいと思います。例えば、和歌山の場合は森林資源が豊富なので、バイオマス発電が進むとよいと考えています」、「技術やコストの問題があるけれど、最終的にコミュニケーションが大事だという松本さんの話がぐっときました。例えば、洋上風力発電の試験事業でどんなにいい結果が出ても、地域の漁師さんからの承認が得られなければ、そこでは運用することができなくなります。また、地熱発電の場合も、国立公園の敷地にあるものを活用し、温泉組合の賛同を得る上でも、最終的にはコミュニケーションが重要だという話を松本さんからお伺いすることができて、とても参考になりました」

全体共有と振り返りの後に、ゲストの松本さんからメッセージをいただきました。

松本氏

「こんなにフランクに皆さんと意見交換をさせていただけるワークショップに参加したのは実は今回が初めてで、とても印象に残りました。学生さんから社会人の方までいろいろな方が参加されている素敵な場で、ファシリテーターの森さんと掛け合いながらの進行もとても楽しませていただきました。質問もたくさんいただき、ありがとうございました」

松本さんによると、エネルギー問題の講演の聴講者の比率は男性が圧倒的に高い傾向にあるそうです。一方で、最近は主婦の方や女子大生に限定したセミナーや、各地の青年会議所主催のセミナーに招かれることも多く、女性たちや地域の若手リーダーたちのエネルギー問題への関心の高まりを感じているとのことでした。

緑のgoo東さん

緑のgooプロデューサーの東さんからは「現場を見ていらっしゃる松本さんの話には説得力があり、とても惹き込まれました」と感想がありました。

J-POWERの小林さん

また、J-POWERの小林さんからは、「国が洋上風力発電の導入に向けて何百億も投資していたり、温泉組合がバイナリー事業に参加しようとしていたり、といった松本さんのお話から、エネルギーを推進する上での『覚悟』ということについて考えさせられました。今回は東北や四国から来られた方もいますし、皆さんも、このカフェに参加するためにちょっとした覚悟をなさったのではないかと思います。また、『覚悟』を決めるためにもコミュニケーションが大切、というお話にはとても感じ入りました。私たちも、来年度もこのエコ×エネ・カフェを続けていく覚悟をしたいと思っています。ここにいる皆さんと一緒にいい未来を作っていける可能性を感じています」との言葉がありました。

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