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第15回 「再生可能エネルギーで日本が変わる!?」松本 真由美 氏

  • 2014年3月13日
  • 緑のgoo編集部
J-POWER エコ×エネ・カフェ

<ソーラーシェアリング>

松本:欧米や中国等の海外では、メガソーラーという1メガワット以上の大規模な太陽光発電所が多く作られており、農地を利用した再生可能エネルギー発電所も増えています。日本では農業以外の目的で利用する農地転用はこれまで認められなかったのですが、農林水産省は昨年4月1日に「ソーラーシェアリング(農電併業)」という方法で農地に太陽光パネルの設置を認めました。これは農地に支柱をたてて太陽光パネルを設置し、その下で農作物を育てるという取り組みです。周辺の営農に影響を与えず、農作物の収穫の影響が2割程度の減少に収まるのならばよいという条件で、3年間の一時転用許可が下りることになりました。

森:パネルの下で農作物をつくる、だから「シェアリング(共有すること)」なのですね。

松本:海外はこのような背の高い支柱を建てなくても農地に直接太陽光パネルを設置できますので、日本のユニークなスタイルと言って良いかもしれません。福島県の南相馬市では、農家の所得の確保という意味からも、農家と自治体、NPOらが連携して、「再エネの里」でソーラーシェアリングを実施しています。現在はビニールハウスへのパネル設置はまだ認可されていませんが、今後実現できると良いですね。

エネルギー基本計画について

森:太陽光発電にも、メガソーラーから、このような小規模で展開しているものまで、いろいろなものがあるのですね。

<地熱発電>

森:注目を集めている地熱発電ですが、実際はなかなか進んでいないんですよね。

松本:日本は世界3番目の地熱資源保有国です。地熱は24時間発電可能ですので、原子力発電の代替エネルギーとして考えるならば安定供給の面から最も可能性が高い再生可能エネルギーですが、適正地が国立公園内に多くあることや、温泉事業者と共存していくことが必要で、新たな開発が厳しいという側面がありました。

ゼロエミッション
ゼロエネルギー

松本:太陽光、中小水力、風力は「新エネルギー」と位置づけられ、補助金等の政府の支援を受けましたが、地熱は「新エネ」から外れてしまったため、研究や開発が停滞し「失われた15年」と呼ばれた時期が続いていました。しかし、2012年7月1日から始まった再生可能エネルギー全量買取制度により地熱発電の状況は一変し、追い風に風向きが変わっています。

<バイナリーサイクル発電>

松本:バイナリーサイクル発電は、蒸気で発電するには熱水が低温過ぎる場合、低温でも沸騰する媒体を利用することにより、この媒体の蒸気でタービンを回転させる発電方式です。新潟県十日町市の松之山温泉では、浴用には温度が高過ぎ川に捨てていた温泉の熱水に、アンモニア水混合媒体を利用し発電の実証実験が行われています。

バイナリーサイクル発電
会場

森:これを使うと、温泉のお湯をつかって、50戸ほどの集落を賄えるような小規模な発電ができるということですね。

松本:松之山温泉では日本三大薬湯のひとつですが、温泉事業者が、バイナリー発電をまちおこしにつなげようという視点から地熱発電の実証事業に賛同し、プロジェクトのメンバーに入っていることが注目されます。バイナリー地熱発電で作られた電気をどこに供給し利用していくかは現在検討中です。

森:どのみち捨てられてしまうものが、有効活用されるというのはいいですね。

松本:大型の地熱発電についても現在調査が進められ、十数件の候補案件が出ていますので、今後10年、15年のうちには地熱発電も進んでいくと思われます。

<中小水力発電>

松本:河川だけではなく、農業用水や上下水道などさまざまな場所で中小規模の流量・段差を使って発電するのが、マイクロ水力発電です。水利権などの規制などの課題はありますが、市民ファンドによるマイクロ水力発電も進められていて注目を集めています。

中小水力発電
マイクロ水力発電

松本:河川だけではなく、農業用水や上下水道などさまざまな場所で中小規模の流量・段差を使って発電するのが、マイクロ水力発電です。水利権などの規制などの課題はありますが、市民ファンドによるマイクロ水力発電も進められていて注目を集めています。

松本: 山梨県都留市に設置された「元気くん1号」は、新エネ100選にも選ばれました。町の中に川が流れていて、20キロワットと小規模ですが市役所にも電力を供給していて、まちおこしや環境活動など、まちのシンボルとなっています。

森:市民からお金を集めて作るというのはすごいですね。

松本:募集に対し、4倍くらいの申込があったそうです。木造の水車で見た目もエコですし、まちのイメージアップにもつながっていると思います。

水力発電の構造
フルサポートモデル

松本:水量と落差を使うというところは同じですが、中小水力発電がなかなか進まない理由のひとつに、土木工事にお金がかかるという面があります。落差を活用した発電という点に目を付け、土木工事を行わずに設備に機械工事を行うだけで発電できるしくみをつくり、成功をおさめているのが、東京電力グループの東京発電株式会社というマイクロ水力の発電事業者です。既に埼玉県さいたま市水道局や神奈川県川崎市などに導入されています。この他にも、農水路を利用したマイクロ水力発電などが各地で普及されつつありますね。


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