佐々木:森林のことは、一般の人たちにあまり知られていないのではないかと思います。食品では生産者と消費者の「顔の見える関係」が生まれつつありますが、木材にはこれが全く無いのです。森を大事にするには、森を壊さないで丁寧に伐り、残すための取り組みが必要です。そういった背景や、誰がそのような林業を行なっているかという情報を知れば、消費者はそれを応援するために、選択することができるのです。ですから私は、森の入り口から出口までをつなげる仕組みをつくる必要があると考え、それを「Treesm(ツリーズム)」と名付けて広げていきたいと思っています。
佐々木:森林は建物、紙、家具、ペレット、そして薪など、本来は捨てるところなく活用できる資源です。けれども現在は機械化が進み、本来は日本にある急勾配の多い森にはふさわしくない大型の機械を使うことによって、森を傷つけたり、高い値段の付かない木は捨てられてしまうようなことが起こっています。昔の人たちは木を伐るために森を傷つけることがないように、「馬搬」という、馬を使った手法を使って、自然と共生する方法で森林と接してました。このような方法があることを是非多くの人たちに知って欲しいと、最近はくりこま高原の自然学校でも馬搬の馬を育てて、皆さんに見ていただく機会を提供しようとしています。森林と事業者、そして消費者がつながることで、これからもっと、森林と暮らしていくための商品やサービスを作っていきたいと思っています。
ここで、J-POWER藤木さんからのコメントです。
藤木:バイオマスの木材やチップは、供給が不安定で使いにくいことはないですか?
佐々木:はい。日本では今、林業従事者が激減しています。また林業を業(なりわい)として成り立たせる難しさがあるのも事実です。いきなり大量安定供給を目指すことは難しいですが、小規模でスタートし、循環する仕組みを作ることはできると思います。例えば、平日は企業に勤めながら、週末には林業の仕事をする「週末キコリ」を養成することで、林業の再生に結びつく動きを少しずつでも育てていけたらと思っています。
藤木:まさに地産地消ということですね。
現在日本の森の多くは手が入っていない状態ですから、そこから木材を運び出すことに課題もあるかもしれませんね。効率を重視して、皆伐(かいばつ)を進めることで森林が傷つく問題もあると聞きました。
佐々木:問題は、循環する仕組みをどうやって作るかだと思います。林業では生活が成り立たないと考えられているところが多いですが、自伐林業に取り組み、年収1,000万円以上の収入を得ている人も存在します。時間はかかると思いますが、これからもっと、そういった人たちが生まれていくと良いですね。
さて、佐々木さんからの話題提供を受けて、これからはワールドカフェでの対話の時間です。「意味を追究する会話、対話(ダイアログ)」を。議論ではなく、対話ですよ。他の人たちの意見を聞くことを大切にしてくださいね」と森さんの言葉を受け、テーブルごとに、与えられた問いについて話し合っていきます。