荻本: アメリカでスマートグリッドが注目されたもう一つの理由を忘れていはいけません。各家庭のエネルギーの使い方が分かるようになると、それをもとにマーケティング情報を得るなどいろいろなビジネスに使うことができると考えた会社が現れたのです。Google社がその代表ですね。その瞬間、スマートグリッドはそれまでのエネルギーという世界から離れて、ITという新しい世界にはいってしまった。
藤木: そういう意味では、ビジネス的にもいろいろな可能性が出てくるし、新しいマーケットができるかどうか期待もあるということですね。
荻本: アメリカではスマートグリッド普及のためのルールを作る議論の場が設けられています。ICT(Information and Communication Technology)の分野で新しい規格を作りビジネスのチャンスにしたいと思っている人たちも活発に動いていますね。
森: なるほど・・・。ありがとうございます。かなり幅広くいろいろな話がでてきましたね。ここで、もし、質問があればどうぞ。
質問: 各地で実証実験が進んでいるようですが、この先3年くらいでブレークスルーの期待はありますか?
荻本: 実際に使われるようになるためには、システムの全てに装備されるようになることが必要です。今から2年後には第一弾の実証実験の結果が出てきますので、そこで導かれた技術的解に皆が合意したら次の段階に進む、つまり家電の開発がスタートすることになります。これにチャレンジする勇気ある企業が現れるかどうかが一つの大きな鍵になりますね。それから、電力の料金制度の変更も同時に検討が必要でしょう。
質問: 電力の品質についての課題はありますか?
荻本: さまざまなエネルギーが混在すると周波数がぶれやすくなりますので、これをコントロールすることが課題となりますね。
森: うーん、でもまだまだ、スマートグリッドは遠い未来の話のような気がするのですが。
荻本: エネルギーは開発するのに相当な時間がかかります。水力発電所も現在の段階まで約100年かけて開発されています。全国全ての配電線に手を加えるならば20年はかかるといわれています。けれども、とにかく、今時代は変わろうとしている。世界的にも再生可能エネルギーの導入など低炭素化が喫緊の課題となっていますよね。放っておいても世界は変わってしまう。そういう中で、これからどんな社会に変わって行くのかを自ら考えて行くことはとても重要なことだと思います。
森: 確かに、インターネットも、技術が開発された当初は誰も使わなかったけれど、今ではなくてはならないものになりました。
荻本: 20年も経つと世界は結構変わってしまうんです。その頃には、エネルギーの意味も変わってくるかもしれない。そういうさまざまな可能性を予測しながら研究を進めています。
荻本さんからのスマートグリッドの説明の後は、テーブルごと自由に意見を交わす対話の場、「ワールドカフェ」の時間です。森さんの投げる三つのテーマに沿って、カフェの時間がいよいよスタート。