飲料などの販売に用いられるガラスびんには、1度限りの利用を前提とするワンウェイびんと、使用後に回収して洗浄し、再び飲料などを充填することでくり返し利用できるリターナブルびん(「リユースびん」ともいう)とがある。この、何度も利用できるリターナブルびんの製造、販売、購入、使用、回収、洗浄、再充填、運搬など一連の流れと仕組みが、びんリユースシステムだ。びんのリユースは、日本ではビールなどの飲料分野で古くから行われ、一般廃棄物の減量につながる仕組みとして親しまれてきた。
近年、食や嗜好品に関する消費者のライフスタイルが大きく変わり、ペットボトルや缶が飲料容器の主流となった。また、飲料メーカーにとっても、ガラスでできたびんは割れやすく重いなどの短所があるため、コストや手間を減らす観点から、飲料容器の主流はガラスびんから他の素材でできたものへと変わっていった。これにリターナブルびんやびんリユースに関する広報不足があいまって、リターナブルびんの回収率は伸び悩み、びんのリユースは年々下火になっていった。
しかし、21世紀になって、官民さまざまな主体がびんのリユースに再び力を入れ始めている。環境省は、びんのリユースについて回収や再使用に関するシステムの維持と、新たなリユースシステムを構築していくことなどを目的として、2011年に検討会を設置した。翌2012年4月には、関係者へのヒアリングなどをもとに、びんの回収方法や洗浄、再充填の仕組み、システム構築にあたっての苦労談などをまとめた「びんリユースシステムの成功事例集」を公表した。また、びんのリユースを促進していくための実証事業も行っている。
地方自治体では、京都市が酒販店や商業施設などの拠点回収協力店と連携して、びんの回収に取り組んでいる。市が拠点回収ボックスを設置し、集まったびんを地元のガラスびん問屋の組合が定期的に回収する。びんは洗浄後に検査されて、リユースされる仕組みだ。また、酒販協力店でも店頭回収してびん商やボトラーに戻す流れを構築している。同じような活動は、山梨県などでも行われている。
もっとも取り組みが盛んなのが、酒造メーカーなどの関連事業者だ。九州の大口酒造は、焼酎びんを卸経由で回収し、自社で洗浄して再利用している。その数は年間で約150万本に及ぶ。関西の宝酒造も、焼酎などの独自びんを年間で200〜300万本もリユースしている。このほかに、全国清涼飲料工業会では、地サイダーなど地域に密着したびんリユースシステムを構築している。東北びん商連合会のように、回収用の専用箱を作成して、地域ぐるみでびんのリユースに取り組んでいるところもある。