環境問題を解決するためには、多くの人が環境に関する正しい知識をもつことが重要だ。環境の資格制度にはさまざまなものがあるが、公害防止や森林保全、生物多様性など、専門的な知識を習得するものが多い。しかし、環境問題の種類や内容はとても広く、食と環境、健康と環境など、私たちの生活と密接に関係する問題もたくさんある。「eco検定」(エコ検定)は、環境に関する幅広い知識をもち、社会の中で率先して環境問題に取り組む人づくりと、環境と経済を両立させた「持続可能な社会」を目指す検定試験だ。正式名称を「環境社会検定試験」といい、東京商工会議所の主催により2006年度から実施されている。
eco検定を取得することで、企業は社会的責任(CSR)への対応や環境ビジネスの展開に向けて社員の知識を活用することができる。また、取得した社員が増えれば企業のイメージアップにつながる。さらに、ISO取得後の継続学習の一環として、社員の意識改革や自己啓発にも役立つ。学生にとっては、環境保全に取り組んでいる企業や団体などへの就職活動や、進学時のアピール材料となるほか、知識の幅を広げることなどにつながる。一般の人にとっても、日常生活の中で環境に配慮した生活知識を身につけ、その知識をもとに地域再生や地域振興のために活動するのに役立つ。
eco検定はマークシート方式による選択問題で出題され、100点満点中70点以上で合格となる。出題範囲は、東京商工会議所の公式テキストからの基礎知識と、それを理解した上での応用力が問われる。また、最近の時事問題や環境白書などからも出題される。過去の問題には京都議定書に関する知識を問うものがある一方で、食に関する知識(食育やスローフードなど)も問われるなど、幅広い内容となっている。2006年度に行われた第1回試験では、実際の受験者1万3767人中1万1025人が合格した(合格率80.1%)。2014年度の試験は、合計で2万8971人が受験し、1万3028人が合格した(同50.5%)。
東京商工会議所は、eco検定の公式テキストを2014年2月に全面改訂した。2006年の初版発行以来、おおよそ2年ごとに改訂が行われてきたが、最新の科学的知見や最近の環境政策課題などの動向を踏まえて、改訂4版では構成や執筆者を一新した。大学や高校の授業などでも活用できる環境の基礎知識を網羅的、体系的に学習できる「環境学習の入門書」となっている。また、社会的に関心の高い「地球温暖化」、「エネルギー」、「生物多様性」についての情報が大幅に加筆され、「震災関連・放射性物質」の項が新設された。2015年度の第18回試験からは、改訂5版のテキストに準拠した出題がなされている。
東京商工会議所では、環境問題に対する幅広い知識をもち、そこから生じた問題意識を日々の行動に移そうとする、またはもう活動を起こしている人を「エコピープル」と位置付け、専用サイトも開設している。同サイトでは、eco検定の受検者やこれから受験する人に向けた情報発信を行っている。