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「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」 詳細解説

読み:
ぜつめつのおそれのあるやせいせいぶつしゅのほぜんせんりゃく
英名:
Strategy for Conservation of Endangered Species of Wild Fauna and Flora

日本ですでに絶滅したと考えられる野生生物の種や、絶滅寸前に追いやられている種のことを「絶滅危惧種」という。絶滅の危機にひんする野生生物を守るために、国際的にはワシントン条約が、国内法としては種の保存法が制定され、販売や輸出入、捕獲、採取、殺傷、損傷などが厳しく規制されている。また、生物多様性基本法にも絶滅危惧種の生息環境や生育環境の保全に関する規定がある。2012年に政府が策定した「生物多様性国家戦略2012-2020」では、保全すべき種の優先順位などを定めた戦略を策定するとしている。

同戦略に基づき、環境省は2014年4月に「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」(以下「保全戦略」という。)を策定した。保全戦略は、中央環境審議会による答申「絶滅のおそれのある野生生物の保全につき今後講ずるべき措置について」と、種の保存法改正に伴う衆参両議院による附帯決議も踏まえて策定された。生物多様性国家戦略の国別目標C-2(絶滅危惧種の個体数の減少防止等)の達成に向けて、日本に生息する絶滅危惧種の保全を全国的に推進するための基本的な考え方と、すぐに取り組むべき施策の展開などを示している。

保全戦略は、第1章から第3章にかけて、策定の目的及び背景、そして日本の絶滅危惧種が直面する現状と課題を解説。それを踏まえて、第4章で保全の基本的な考え方を提示している。まず、対策の立案にあたっては、種の存続の困難さと、対策効果の大きさという2つの視点から評価し、取り組む種の優先度を決める。前者はレッドリストのカテゴリー(ランク)を基本とし、後者は生態学的な重要性や認知度などを基準として決める。また、同省が主導して取り組む場合には、全国レベルでの保全の必要性も考慮する。

保全対策の考え方としては、種の特性や減少要因などを踏まえて対策を選定する。たとえば、生息・生育地の減少や劣化が著しい種については、自然再生による環境改善など生態系の維持・改善を図る施策が有効だ。また、外来種による生態系への被害を防ぐため、優先的な防除を行うことも重要となる。場合によっては、緊急避難や飼育、栽培、増殖などの生息域外保全や、野生復帰などの手法も有効となる。このほかに、環境省が行う計画的な保全対策の考え方も示している。

第5章では、具体的に展開する施策をあげている。絶滅危惧種に関する情報及び知見の充実、保全対策の推進、各主体の連携及び社会的な理解の促進などだ。とくに保全対策については、衆参両議院による附帯決議の求めに応じた、2020年までに300種を種の保存法に基づく希少野生動植物種に新規指定することをはじめとする、複数の措置を講じる方針を掲げている。また、「絶滅危惧種保全カルテ」を作成して、保全の基礎情報や知見の集積を図る方針だ。

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