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「泡瀬干潟」 詳細解説

読み:
あわせひがた
英名:
Awase Tideland

沖縄本島中南部の東岸、中城湾(なかぐすくわん)の泡瀬地区にある「泡瀬干潟」は、面積約266ヘクタールに及ぶ大きな干潟だ。河川などを経て運ばれた砂や泥が海の前浜部分にたまってできる「前浜干潟」で、絶滅危惧1類のクビレミドロなど珍しい海草が生育する藻場を形成している。また、絶滅危惧種のトカゲハゼや地域個体群のシオマネキ、シギ・チドリをはじめとする鳥類、希少貝類や底生動物など、さまざまな生き物がすむ豊かな自然環境となっている。

1980年代に入り、国と沖縄県が泡瀬地先の約240ヘクタール以上の海を埋め立てる東部海浜開発事業を計画した。この事業は、特別自由貿易地域に指定された中城湾港新港地区の整備に伴い発生する浚渫土砂を泡瀬地先で埋め立てて、その用地をリゾートやレクリエーションなどさまざまな活動の拠点となる「マリンシティ泡瀬」として活用しようという経済振興策だった。しかし、美しい泡瀬干潟を埋め立てる計画に対して県の内外から強い反対の声が上がり、沿岸干潟域の保全に配慮した人工島の形状に計画が変更され、埋立面積も約187ヘクタールに縮小された。

国と県は環境アセスメント終了後、2000年に埋立免許を取得して一部の工事に着手した。しかし、事業中止を求める声は強く、反対派の住民らが事業への公金支出差し止めを求めて提訴。2008年11月に那覇地裁が沖縄県知事と沖縄市長に対して、「埋立事業に経済的な合理性が認められない」との理由で支出差し止めを命じる判決を出した。県と市は控訴したが、2009年10月に福岡高裁那覇支部がその控訴を棄却し、事業費の支出を差し止める判決を下した。

同年に政権与党となった民主党はマニフェストで、「1期工事については中断、2期工事については中止」という方針を示していた。前原沖縄・北方担当大臣もその考え方を踏襲すると発言していたため、泡瀬干潟の埋立計画は見直しの方向へと舵を切ったかに見えた。しかし、前原大臣は2010年8月、沖縄市長との会談の場で1期工事を約96ヘクタールに縮小した上で再開すると明言。その後の会見でも「特別自由貿易地域の復興のために国策としてあの地域を選定し、浚渫工事を行う」と強調した。これに対し、地元住民の一部や日本自然保護協会などの自然保護団体が強く抗議し、議論が再燃している。

このように泡瀬干潟の埋め立て・浚渫事業をめぐる国の方針は二転三転してきたが、環境面から見た干潟の価値ではなく、経済効果ばかりが判断材料とされてきた感は否めない。泡瀬干潟が豊かな自然に恵まれていることは、環境省が2010年9月に同干潟を含む中城湾を「ラムサール条約湿地潜在候補地」に選定したことからも明らかだ。泡瀬干潟の埋立計画は、干潟の貴重な自然を守るという観点から再度検討されるべきであろう。

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